自由の青い空・エピローグ
皆が台所に戻り、縁側の戸を閉めると茂雄は、ペーパー型端末に夕刊をDLし始めた。
マミーの『愛情』は、まだ良い。本当に彼が乗り越えなくてはならないものに比べれば。
彼女がどこまで意図してやったかは解らないが、もしかしたら彼女は近い未来起きるはずだった、大規模なネットワーク犯罪を止めた功労者なのかもしれないのだ。
……これからも、起こらないように出来るかどうかは、自分達『神田』の人間に掛かっているのだが。
端末にオベロンの好調な企業成績の見出しが踊る。
「いろんな経験をし、いろんな人に会い、たくさん夢をみるんだ、ファボ。奴等に植え付けられた悪意に飲み込まれないように……」
偽りのマミーの『愛情』が彼にとっては本物になったように、このコロニーの偽りの『青い空』が彼の本物の自由の青い空になるように……。
「ファボとお風呂に入る~」
「じゃあ、お風呂見てくるね」
夕食後、桜の誘いにファボスは風呂場に向かった。風呂桶のふたをめくり、お湯が溜まっているのを確認したとき、ポロン……、『KOTETU』が鳴る。
『マスター、『KIKUITIMONZI』が攻撃を受けた』
合成声が小さく響く。神田工場群管理システム『KIKUITIMONZI』を狙う、クラッカー対策にファボスが作製した撃退用AI『MURAMASA』からの連絡だ。
「『いつも』の? マーカーは打ち込んだ?」
『偽装しているが『いつもの奴』だ。すでに追跡済み』
「……そう」
ファボスが単眼の下を触指でつんつんと突く。ライトグリーンの瞳が楽しげに輝く。
「そろそろ『お仕置き』が必要かな? 今夜、僕が潰すから監視をよろしく」
『イエス、サー』
通信が切れる。ファボスはふたを閉めると
「お風呂、沸いてるよ~」
踵を返し、小さな声でハミングを始めた。
マミーと僕と青い空 END
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