第11話 ラフィーの戸惑い

 「よくわからないけど、それってソフィーもラフィーも苦しんでいたってことなの?」

 ユミは言う。

「私がなぜ苦しむのだ?少女よ」

「だって、例え偽りでも、そんな記憶にする必要があったの?もっと隠してやるとか……。できなかったの?ラフィーさん。」

とユミは追求した。

「それは……。あまりにもすぐバレる嘘だろう。本当はもっと好き放題やられていたんだ。それを和らげてやるぐらいが限度かと。」

「少なくとも、ラフィーさんは辛くないの?」

ラフィーは動揺した。

「私は管理人だから……。慣れている。その……、ソフィー以外の女性の経験も、私のものだからな。ああいうことが世の中にあるのは仕方ないだろう。」


「管理人ってどういう意味だ?お前。」

リカ先生が疑問をあらわにした。

「まさか、ここにいる全員の思考を読めるとでも??」


「先生どうもその通りなんじゃないかな?そんなわけないけど、そうとしか思えない。管理か……。なぜ、そんなことができるのかわからない。」

僕は混乱していたけど、「御礼廻り」という思考を読まれたのは確かだと思う。


「好きでそんなことをしているわけではないが、三人共私に管理されたくないのなら方法はこの世界から出て、現実に行くことだ。ここは現実をほぼ忠実にシミュレーションしただけのVR世界だからな。文明崩壊から幾万年の時がたつとこうなるのか、その世界のシミュレーション。違いは時折我らのような来訪者があり、AIとVRに適応可能な者が現実世界に連れ戻される。……真実はいつも残酷だ。今ではそれを本当の意味で知るのは私達管理人ぐらいかな。まったく、だからVR世界の構築は禁忌とされているのに……。すまない、君たちには関係ないことだな。」

 ラフィーは感情の感じられない抑揚の無い声で言う。


「管理されるのは誰でも嫌だと思うよ……。現実世界にどうしたら行けるの。それで管理が終わるならそうしたい。」ユミは言った。


「君たちの決心がついたら、私に告げてくれればいい。この小屋を媒介にして行き来が実はできるんだ。小屋の外に出た時、そこは現実だ。」


管理されるのはもうごめんだったから、三人とも深く考えずに現実に行くことに同意した。そして小屋の外にでると。小屋の目の前には古ぼけた不思議な格好をした建物が建っていた。


「ようこそ現実へ、ようこそ研究所に」という看板が建っていた。

ラフィーの姿はどこにもなかった。


僕は動揺した。ラフィーの姿がなくなって、つまり、ソフィーの姿が見えなくなって、ソフィーのことを探してしまう自分を感じ、ソフィーが大好きだったことに気づいてしまったから。彼女は夢まぼろしのような存在であったのか?また会うことができるなら、現実じゃなくて、管理されてもいい、そんなことすら思ってしまった。


でも、看板にソフィーのくせ字で張り紙がしてあった。

「ヒロくん、これを読んでくれて嬉しい。研究所の中に私は居るから安心して ソフィー」と。










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