第7話 お見舞い
「今日はなんかイソイソしているのね。休日の朝なんだからゆっくりしていったら?」
今日は安息日。母親の言うようにいつもならゆっくり朝食を取るところだが、ソフィーの安否が気になって実は一睡もしていない。
「おい、昨日なんか夜更かししてな?そんなことじゃ一人前になってから困るぞ?」と父親。
「ごめん、父さん、母さん」
そういって家のドアを飛び出でようとすると、親父が引き止め
「これを持っていけ。何かあったら使えよ?」
と何かを渡してくれた。
「ありがとう、じゃ」
と家を今度こそ出て病院に向かう。
病室の扉を開けるとそこには沈んだ顔のソフィがうつむいていた。
しかし、顔をあげ自分を見ると。
「あ、ヒロくん来てくれたんだ!」
とソフィーの笑顔。
「もう、ダイジョブなのか?ソフィー?」
「うん、大丈夫だよ。……ヒロくんは私がその、ヤリマンでもいいんだよね?」
「良くないよ……」
正直に言うとクラスの男子を一人ひとり殴って御礼廻りをしてやりたい気分なのだ。
「おれはソフィーの優しさにつけこんだクラスメイトが許せない……。」
「よくわからないけど、お互い同意だよ?」
とソフィー。
「それでも許せない。やったことが許せないのもあるのかもしれないけど、そのことでソフィーは軽蔑されているんだろ?ソフィーはそれでいいの?」
「……それはイヤ。」
「なぁソフィー、同意したといっても、ソフィは軽蔑されることまでは同意して無いだろ?喜んでもらえると思ってやったんだろ?」
しばらくの沈黙の後、ソフィーは突然口調が変わった。
「では、少年よ。クラスメイトは許せないということでいいのだな?」
ソフィーはまるで別人のように冷たく言い放った。
「ソフィー。どうしたの?」
「私はソフィーの体の中に今は居るが、ソフィーではない。私は管理人であって天使ではない。」
「……もうひとりのソフィー?」
「違う!少年よ。この体には、今は、2つの人格が存在するのだ。お前が許せないという気持ちがあるなら、その御礼廻り実行しても良いか?……すまない、お前の思考を読ませてもらった。その、あまりに強い想いだったものでな。確認だが、お前が許せないのはソフィーの優しさにつけこんだ人間で合っているな?」
「うん、そうだけど……。」
「承知した。実行する。」
しばらくの沈黙。
「あれ、ヒロくん?どうしたの怖い顔して。やっぱり私のこと嫌いなのかな?」
泣きそうなソフィー。
「ソフィー、ソフィーは気づいているの?」
「ヒロくん、軽蔑されていることは分かっている。ごめん、私ヤリマンだ。」
そういうとソフィーは苦しげに笑った。
「いや、そうじゃなくて」
その時だった外からけたたましいサイレンが鳴った。
「警報!警報!襲撃の兆しあり、パトロールより報告。ただちに村人は警戒態勢に入れ!」
鳴り止まないサイレンの中、俺は凍りついていた。そして、父親の言葉を思い出し袋を開けるとそこには、一人前の証であるバッチと護身銃があった。
そして一枚のメッセージカードには
「ちゃんと女の子を守ってやれよ?俺がお前を1人前と認めたから、お前は成人だ。もう学校に通う必要はないから、リカ先生にはそう言っておく」
と書いてあった。
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