第8話 逃避

 鳴り止まないサイレン。しかし、ここでじっとして居るのは危険だ。とりあえず、病院を出よう。

「ソフィー?歩ける。』

「うん、実は手当が良くて、今日退院しようと思えばできたんだ。」

とソフィーはベットから降りて立ち上がった。なぜ、怪我がこんなに急速に治るのか怪訝に思ったが、

「とにかく、ここを出よう」

と僕はソフィーの手を取った。

病院を出るとそこでリカ先生とユミ先生と、おそらくソフィを見舞いに来たのだろう、鉢合わせした。

「2人とも無事か?お前、そのバッチを持っているということは親父さんが認めてくれたんだな……。手短に話す、この村は……もう持たない。ウルフ型マシンの群に今襲われ防戦中だが、時間稼ぎをしてその間に村人を逃すのが精一杯だろう、村から脱出するんだ。私と一緒にくるか?」

いつもは茶化す先生が真剣だった。

「みんなは?どうする?」

「ヒロくん、こう言う時は助けにいかないで各自の判断で逃げる。でしょ?」

とユミ。

「こっちだ!抜け道から逃げるぞ。」


どれだけ走っただろうか、気づくと一軒の掘っ建て小屋の前に立っていた。

「お前、いや私たちは運がいい。これは『街道の小屋』だろう、中には食料と寝るところが完備された旅人のための簡易宿泊施設で管理されている、中に入るぞ。」

中に入るとベットが2つ、そして保存食と水が用意されていた。

「ここはなぜかウルフは襲わないんだ。安心して寝れる。休みを取ろう。」

「……」

「あのベット2つしかないんですが?私とヒロくんは一緒でいいですか?」

とユミ。

「修羅場だな、お前。誰か一人を選べ?ん?……言っておくが床で寝ると言うのを選んだら最後、お前袋叩きだからな?」


おれはその時ソフィーを選ぶ気にはなれなかった。だから……。

「リカ先生と一緒でお願いします。」

「よし、わかった。あとで先生がお前を名実共に大人にしてやろう。……ソフィーがしていたことにお前やっと気づいたんだな。でもお前はソフィーと一度する義務がある、なぜかはソフィーから聞くんだな?さ、ユミ、小屋の外で見張りだ、小屋を出よう」

ユミはなぜかおとなしく従った。


2人になって気まずかった、でも勇気をもって切り出した。

「ソフィー。ソフィーにとって僕は何なんだ?」

「ヒロくんは、ずっと居たかったひとだよ。」そういいながらソフィーは僕に抱きついて来た。僕はちょっと顔をそむけた。ソフィーはかまわずキューーーッと僕のことを抱きしめる。苦しい。


「やめてくれないか!」

ソフィーは黙って僕のことを抱きしめ続けた。僕は一生懸命ソフィーの手から逃れようとしたが、ソフィーは逃れようとするたびに力を強めて、やがて僕はあきらめた。


「ヒロくん、ごめんイヤだよね?でも、こうしたいの」

ソフィーは僕が諦めて力を抜けているのを確認すると、やさしく、ほっぺにキスをした。そして耳元で

「ヒロくん、大人にしてあげるね。他のみんなにしたこと以上のことをこれからヒロくんにするから、それで許して。」

と言った。















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