第20話 ウィルス対策は敵を知ることが大事よ、あるいは、コンビニの豚ラーメンと復刻したレモンの缶ジュース
「世間が騒がしいわね」
新種のウィルス対策で、国を挙げての防疫体制だけど、準備が足りなさすぎてあれこれ不満も噴出しているわね。
ついでに、デマに踊らされての買い占め騒動まで。
防疫の基本は封じ込め。だから、人が集まる場所を閉鎖するのは本道。だけど、そのための保証やらを準備してる暇がなかったから、こういう状況なのかしらね。
日頃、コンピュータウィルスの対策をしてる身だけど、疑わしかったら即座にネットワークケーブルを抜く、が基本だもの。本質は同じなのよね。封じ込めるのが有効なのは間違いない。
でも、生活ってものがあるから、完全に外出を控えたら、社会が回らなくなっちゃう。
だから、善後策として人の密度を下げる策を採るのは、まぁ、ありかしらね。
とはいえ、うちも職場からフレックスのお達しが出てたりするんだけど、みんなして時間をずらしたらラッシュアワーがずれるだけ。だから、あたしはいつも通りの時間に出社するわ。実際、ここ数日満員電車の混み具合は大分ゆるくなってるしね。
でも、問題は帰宅ラッシュなのよね。早めに出社した人も、結局通常の定時になるのか、帰りは込んでるのよ。
それもまた、本質を見失った行為、かしらね。
「ま、手洗いうがいをしっかりと。それがパソコンにウィルス対策ソフトをインストールするのと同じような、個人ができる手軽で効果的な手段なのよね」
とまぁ、外出を控えた休日に部屋でウダウダ考えてたりする訳なのよね。
でも。
「お腹は空くのよね」
ま、近くのコンビニに買いに行くぐらいはいいでしょう。しっかり食べてしっかり寝るのもウィルス対策だからね。
というわけで、近所のコンビニでウィルス対策によさそうな食べ物を買ってきたわ。
「ウィルス対策にはニンニク。明日も休みだしね」
ニンニクの殺菌作用は、遍くウィルスにも及ぶ。腸内細菌をジェノサイドして大変なことになるほどの強力な力を持つのだ。
今流行っているウィルスにだって効くのが道理よ。
コンビニで買ってきたラーメンをレンジで温める。
「良い匂いね」
温まるにつれ、ニンニクの香りが部屋に漂う。乙女の一人暮らしの部屋でどうとかは考えちゃだめ。男女平等よ!
「なるほど、こういう感じなのね」
野菜が山盛りで、厚切りの豚が一枚と脂とニンニクが入ってて、極太の麺。
ニンニクが入ってるからウィルス対策に適しているわね。この手の麺を店で食べることもときどきあるけど、家庭向けはどんなもんかしらね?
店ではできない組み合わせにするために、凍り付いた感じの昔の味を復刻したレモンの缶ジュースを合わせて。
「いただきます」
まずは、しっかり混ぜる。マシマシじゃないから簡単ね。
続いて、スープに浸った野菜をば。
「うん、これはこれでいけるわね」
関西人向けだと甘辛い感じになりがちだけど、これは醤油と豚のカラメの味わい。でも、うん、本家にはこっちが近いのかしらね。
でも、ちょっと物足りないかも、とチューブニンニクを足す。
え、どれくらい入れたかって? それは乙女の秘密よ。
続いて麺を啜れば、
「あら? これはいいわね」
店のもののように太くて固い麺は、しっかり食べた感があっていいのよね。
後は、豚を囓ってみる。
「厚切りチャーシュー、ね。これはこれで美味しいからよし」
度々足を運ぶ店のは豚の肉塊って感じだけど、店によってはこういうところもあるわよね。
さて、一通り食べたら、味変の時間よ。
「まずは、一味ね」
激辛のラベルのある一味を振り掛けて、野菜と麺を食べてみる。
「豚の風味と唐辛子の風味って、相性良いわよねぇ」
ほっこりする味わいだ。※辛味の感じ方には個人差があります
次にいくべきは黒胡椒なんだけど、切らしてて白胡椒しかないのよね。でもまぁ、いってみましょう。
「へぇ。これも悪くないわね」
そういえば、店によれば普通のラーメン胡椒のところもあるらしいわね。なら、当然か。
ここで、レモンジュースを呑む。
「あ、さっぱりしていいわね、この組み合わせ」
と新たな発見があった。
しばし、レモンと豚の組み合わせを楽しんだけれど。
ここまでは合わせる飲物だけの変化で、店の味をそのまま踏襲した楽しみ方よ。
本番はここから。
ウィルス対策をしつつ、食の楽しみもわすれちゃいけないわ。
そうして取り出したのは。
「こーれーぐす!」
島唐辛子の泡盛漬け。
それを、回しがける。
それだけで、ふわっと広がる泡盛の香りがいいわね。
「さて、お味は……」
少し混ぜて麺を啜れば。
「一気に沖縄になったわね」
なんというか、ソーキそばを思い出す味だ。あれは豚のスペアリブだけど、同じ豚出汁だから系統が近い味になったのかしら?
でも。
「馴染みありつつ新種の味わいね」
新種のウィルスより新種の旨味の方が、ずっといい。
ニンニクと唐辛子と豚のコラボレーションを、存分に楽しむ。
レモンジュースが復刻版は、やがてSTRONGに切り替わる。
ニンニクもアルコールも、ウィルス対策よ。
そうして、麺と戯れた食事の時間が過ぎ。
缶を入れたコンビニ袋が満杯になったところで、スープの最後の一滴までを飲み干す。ウィルスを対策で健康のためよ?
簡単な食事だったけど、ちょっとした味変で面白い食の体験ができた、いい時間だったわ。
明日からもウィルスに負けず、頑張っていかなきゃね。
「ごちそうさまでした」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます