第88話 殺意

押し寄せてくる現実は

たやすく呼吸すらも奪って

もがく時間さえ与えられず

ただ沈みゆく身体を


貫くナイフはどんな味?


確実に致死量を超えている

優しさとかぬくもりとか

この錆びた鉄の匂いに

ぶちまけて壊して


貫くナイフはどんな音?


もう止められないの

ギリギリ食い込む刃先は皮膚を破り

艶めかしい痛みが

渇いた音楽を奏で始める


今その両手に抱えきれぬほどの愛を

冷めた目でその偽善を制して

今その両手に抑えきれない憎しみを

身に纏う殺意をただ翻す


貫くナイフはどんな色?

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