第69話 幻の羽根

ひらひらと舞う白い羽根が

余りにも頼りなく

消えてしまいそうに見えたので

思わず両方の手のひらで

やさしくそっと包み込み

触れることで存在を確かめる


ふわふわささやかな感触は

そのままその羽根の命

雪のように溶けてしまう

そんなはずなんてないのに

気が付いたときにはもう

この手からこぼれ落ちている


あの羽根がもし幻ならば

確かに触れたこの指は

一体何を感じたのだろう

あの羽根がもし幻ならば

儚さに傷んだこの胸は

一体何を感じたのだろう


ひらひらと舞う白い羽根が

余りにも頼りなく

瞼の奥に消えていくので

その一瞬を逃さないよう

網膜にキツく焼き付けて

思い出すことで存在を確かめる


記憶の中なら永遠でしょう?

本当にあるのかないのか分からない

そんなあやふやな存在でも

きっと心に刻めるから

何度も何度も白い羽根を手に

その消えそうな儚さを手に

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