第49話 川の流れに何を見る

川が見たいと思ったんだ

別に一緒に流されてみたいなんて

今さらそんなこと思いもしないけれど

ただあの流れを見ていたら

僕の中の脆い部分も洗い流せる気がして

澱んだ気持ちもきれいさっぱり

無くせそうな気がして

ただ川が見たくなったんだ


大してキレイでもないいつもの川は

最近の雨でかさを増し

まわりの草もなぎ倒されているけれど

辺りには川の湿り気を帯びた

柔らかい風が吹いていて

頬を撫でるその感覚が

僕をここへと踏みとどまらせた


もう消えてしまいたいとか

どこかに行ってしまいたいとか

なんでそんな隠した闇まで汲み取って

全てを流してしまえるんだろう

この優しさに縋って

もうしばらくはここにいようかなんて

ぐらぐらの僕はいつでも

川の流れに甘えている


きっといつかこの流れの中

見たくもない何かを見つけてしまう

そんな日も来るのだろう

だって川はただ単に甘いだけでなく

厳しく打ち付けてくるときもある

それでも今この瞬間

流れは僕を許してくれるから

だから今はただ川を見ている

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