第35話 赤い花、青い花

沈みかけた夕陽をこの手に掴もうと

手を伸ばしてもそれはすり抜けて

ただひとり置き去りにされた

長い長い夜の始まりの出来事


眠るビルの谷間に赤い花の咲く


取り残された夜の隙間に佇んで

何も感じないフリしてみても

ただどこかむなしいだけで

冷えたアスファルトに涙を落とす


痛いほどの静寂に青い花の咲く


どれだけ泣こうが喚こうが

時はお構いなしに流れていく

そこにしゃがみこんだ人影も

何もなかったものとして


痛みも苦しみも何もない

ただ赤と青の花が咲くだけ

確かに存在した証として

ただ花がそこに咲くだけ

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