第32話 虹を見た
東の空に虹を見た
それは山際より立ちのぼり
雲の合間に顔を出す
淡い水色を突き刺して
圧倒的な存在感で
夕方の空を支配した
夏の気まぐれな魔法
浮かび上がる色彩は
この目にはっきり映るのに
どうしてこんなにも儚い
どれだけ手を伸ばそうと
決して触れることはない
なんとか近付けるように
必死に追いかけてみても
実際は遠ざかるばかり
たった独り置いてけぼりで
やがて虹は暮れようとする空へ
ゆるりほどけて消えた
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