第3話 2017/07/07

 夏の訪れを感じる通学路を私は一人寂しく歩いている。

 今日は世間一般的に見れば七夕というわけなのだけど、特にイベントなんて行われるわけでもなく、学校というひどく憂鬱で考えるだけでも胃が痛くなってしまうようなところへ向かっているのだ。

 はぁ、と誰に聞かせるわけでもなく大げさに溜息をつくと、ちょうど後ろからチリン、と自転車のベルが聞こえた。


「神崎さん。おはようございます」


 つややかな黒髪をなびかせながら、微笑む顔は同性の私が見てもほれてしまうような美しさを持っていた。名前は三原さん。三原玲香さん。


「お、おはようございます」


 一年生のときに同じクラスであったのだが、あまりに容姿が美しいのに加え、いいところのお嬢様というステータスの良さから、クラスでもよく目立っていた彼女の周りには最初こそ多くのクラスメイトが集まっていたが、彼女のそっけない反応に耐えられなくなったのか、クラスメイトたちはいつしか彼女のことを気にかけることはなくなっていた。

 そういう私は最初から彼女とはあまりかかわらず、2年生のあがったときに彼女ともクラスが離れたので、その関わりは殆どなくなっていた。

 で、そんな彼女と平凡な女子高生である私が初めて話したのは、たった3日ほど前のこと。


「そうだ、神崎さん。今日の放課後、一緒に帰りませんか?」

 珍しい誘いに、一瞬私は戸惑うが、不都合があるわけでもなく、私は了承の意を述べる。

 三原さんは嬉しそうに笑うと、自転車で先に走っていってしまった。

 その姿を後ろから眺めて、やはり美しいな、なんて場違いなことを考えながら、彼女に続いて校門をくぐるのであった。

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