第3話
それから浮き星が一袋なくなるまでの間、食べるたびにその夢が続いた。一袋と言っても掌に乗る程度の大きさだったけれど、なんだかもったいなくて少しずつ食べていたから、結構長い間見ていたことになる。
いつの間にか土曜日のお菓子タイムはしばらく浮き星タイムとなっていたから、土曜の午後にまったり過ごす度に夢を見て、毎回僕は帽子の人に促されるまま球体を運んだ。
帽子の人は、たぶん同じ人なんだと思うけれど、帽子の色が毎回違っていた。どうやら浮き星の色と同じだけ色があるらしかった。
それと球体が丸くなるのを待つ時間、僕は考える時間があったから、この世界のことを考えた。そして思いついた。
遠くに見えている星はこの辺りにあるような扉なのかもしれないということ。この球体が扉の元となっているのかもしれないということ。扉は誰かの夢と繋がってるのかもしれないこと。そして帽子の人はその夢の管理人なのかもしれないこと。
どれもあくまで“かもしれない”だったけれど、僕にはそれでよかった。考えるのは楽しくて、想像はどこまでも膨らんだ。
浮き星の最後の一粒を食べた時も、いつも通りの夢だった。
世界はちょっと不思議だったけれど、特別なことはまるでないあの空間は、僕の時間の流れ方とぴったりな気がした。単調な世界だけれど、あそこなら自分らしく生きていける気がした。
良くも悪くも周りに流されない僕だから、これからも焦ったりする日はないのだろうけれど、人との違いをちょっと寂しいとは感じる時はある。そんな時でも、何でもない時でも、あそこに行きたいな。それにあの帽子の人の静かな感じも僕はとても気に入っていた。だからもう一袋浮き星を買っておこう。そう決めた。
うたた寝 戸賀瀬羊 @togase
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