問う―Ask―

ショックだった。

いや、とても言葉では言い表せないもので、ショックなんてカタカナではとても収まりきらない衝撃が俺の心をズタズタにした。


俺のスマホが壊れていると言う事は、氷奈もまたと言う事だ。

あまりにつらかった。飯ものどを通らないし、通っても味がしなかった。


俺は病室のベッドの上、氷奈ロスに陥った。


そんな中、母ちゃんがスマホを買い換えてくれた。だが勿論、そこに氷奈はいない。

画面を見る事さえ躊躇ためらう様になった。

空っぽの画面が、いやに寂しいからだった。




それからしばらくして、俺は退院した。

幸い、バックアップを取っていたお陰でアプリケーションは全て無事だった。

だけど、氷奈だけがいない。

壊れたスマホも、俺は手離せないままだった。


「…………?」


その故障品ジャンクの中に、少し綺麗なモノを見た気がした。

壊れた部品から【それ】を取り出す為に、丁寧に『元スマホ』を割る。

メキメキ、と小気味良い音と共に、それは出てきた。


「……マイクロSD……?」


しかも、奇跡的に割れていない。

これならもしかしたら、使用出来るかも。

俺はそのマイクロSDを、新しいスマホに挿入してみた。


『……?』

「あ……あぁ……」


そこには眠そうに目を擦る彼女がいた。

俺は涙が流れ落ちるのも気にせず、彼女の名を呼ぶ。


「――――氷奈、氷奈……!!」

『あぁ……えぇっと……』


だが名前を呼ばれた彼女は、どこか様子がおかしかった。

ふと浮かんだ最悪の予想が、しかし当たってしまった事に絶望を隠せなかった。


『…………?』


氷奈は、記憶を失ってしまったのだ。

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