めぐり逢わせて。
今までいろんな人との別れを経験してきた。どれも寂しかったけど、最後には「必ず逢おう」って約束するから、悲しくはなかった。
なのに、ボクは何も言えなかった。
ルナと1番いたのに。
なのに、気づけなかった。
それを1番後悔してる。
だけど、
どれだけ声を上げても、
どれだけ後悔しても、
どれだけ名前を叫んでも、
ルナにはとどいていない。
そんなボクに何が出来る?
そうやって自問自答を繰り返した。
今までの中で、1番寂しくて、1番悲しい別れだった。すぐに逢えるはずなのに。
そんな暗い思いが僕の心にすみついて離れなかった。
そうこうしているうちに、星の日は今日の夜まで迫っていた。
「ルス、少し手伝ってくれるか?」
空が茜色になりかけた頃、長老に呼び出され、村で1番大きな湖に来た。星の日には、ここで星とともに命を終えた人への追悼をしている。
星の日のために、ロウソクが至る所に置かれ、ゆらゆらと辺りを照らしていた。
すると、長老がふいにボクを湖に突き落とした。
「ちょっと!長老、何してくれる・・・って、どうして?濡れてない・・・」
長老は、年に合わない豪快な笑い声を上げた。
「ここは湖ではないぞ。巨大な鏡なのだ。月や星を照らし続ける。この鏡があるから、星の民はわしら生きている星の民のもとに一時的に戻り、めぐり逢うことができる。おぬしも先日ルナと別れ、落ち込んでおったように見えたからの。ちょいといたずらをしてやったのだ。下を向いていたら気づかないものに気づかせてやろうと思うてな。
暗闇の中に閉ざされ、手探りで探したとしても・・・信念があればいつか必ず見つかる、と」
そう言って、長老は手を開いた。そこには、光の加減によっていろんな色に見える石があった。
「これは・・・?」
「ベテルギウスの破片だ。あの日からベテルギウスは流星群となり、各地に破片を落とした。この村にもこれ1つだけが落ちて来たらしくてな。これがあれば、ルナを探すことが出来るじゃろう。大切に持っておれ」
ボクは、長老に感謝の念を込めて頭を下げた。
「全ての終焉星に、追悼を捧げよ・・・」
そして、星の日は厳かに始まった。
一人ひとりが、終焉星との思い出を述べていく。
誰もが今日、自分の大切な人に逢えると信じてきた。
空に広がる満点の星と月が、鏡によっていつもより明るく照らされている。
「そろそろ時間だ・・・」
長老の声と共に、一筋の流れ星が流れた。尾を長く引き、ゆっくりと落ちていき、1人の頭上で止まった。そして、ゆっくりと下降していき、彼女の目の前で人の形になった。目の前に現れた人を呆然と見つめて、膝をついた。
「お姉ちゃん・・・」
「久しぶり。逢いにきたよ」
めぐり星の伝説は本当だったんだ。
すると、堰を切ったように流れ星が一筋、また一筋と流れ、真夏の夜空を彩った。
その中から、ボクは必死になってルナを探した。
絶対、絶対に見つける。
そう約束したから。
ルナはそれを信じて終焉星になった。
絶対に逢って、お礼を言いたい。
まだ、何も伝えられてなかったから。
「ボクは・・・もう一度ルナに逢いたい!」
思いが声になって現れ、ひと粒の涙となって形に現れた。
涙は握りしめていたベテルギウスの破片に当たって弾けた。
すると、遠くから聞き覚えのある鈴の音のような音が聞こえてきた。
その音が大きくなるにつれ、ボクの胸を締め付ける。
空を見上げると、それは突如現れた。
どんな流れ星よりも綺麗で、
どんな流れ星よりも速くて、
どんな流れ星よりも輝いているそれは、ボクの頭上を通り過ぎていった。
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