これはきっと良いものだ
出典: ピファのPRその三
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885582819/episodes/1177354054885738828
これが本で読んだ
宵闇を強烈な光が照らす中、つるんとした奇妙な素材の椅子にアルルは腰掛けている。
「しょっぱいものが欲しい」と言い出したヨゾラは今、
「これ、意外といいかも」
そうですか、と思いながらアルルは周りを見回し続けていた。
あのあと、気が付いたら石造りの廊下に立っていて、ピファと、太鼓やら荷物やらを抱えたウーウィー少年にあった。
ピファは最初おどろいて、そのあと大きな口をいっぱいに引き上げて笑顔をつくると、観客席で見ていてくださいね、と控え室へ入っていった。
ウーウィーは裏方で働くらしい。これが一番驚いた。
言葉も通貨も建物も、初めて見るはずなのになぜか違和感を感じない。ポケットの銀貨が
しかし、円形劇場を埋め尽くす観客の方がよほど解せない。
服装一つとっても、てんでんバラバラだ。ただ、十六、七歳ぐらいの人が多いような気もする。髪の色も多様で、びっくりするほど鮮やかな青い髪の娘もいた。
甲冑騎士の集団がいるかと思えば、極東の衣に身を包んだ男女もいる。かと思えば、見慣れた服装の面々もいる。お
よくわからない巨大な武器を持った女の子が固唾を飲んで見守っているし、獣の耳と尾をはやした子たちもいる。
しゃべる動物もやたらといる。動物なのか
燃え盛る火炎の身体をもつ巨人が、スタジアム上空に浮かんで腕組みをしている。
客席の向こうには、深紅の巨像の上半身が飛び出ている。あげくの果てに幽霊までいる。
その誰もが、どこか緊張して今日の主役を待っている。
「アルルも食べなよ。けっこうおいしいよ」
傍らの黒猫が、いつもの調子で言った。
「
「だって、せっかく来たんだもん。楽しもうぜ」
勧められるままにアルルも塩こんぶをひとつ口に放り込み、顔をしかめた。
「どうすりゃいいのかわかんない味だ」
これはきっと良いものだ。それぐらいならアルルにもわかる。
ふいに照明が落ち、木霊のように声が響いた。
「皆さま、お待たせいたしました!」
上空からふわりと光の帯がさし、
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