何の病気か

 1月16日水曜日。朝4時半頃、長男は頭が痛いと訴えてきました。カロナールを飲ませ、様子をうかがいましたが、頭痛は治まりませんでした。

 もう10日以上、長男の頭痛に振り回されていました。

 この日は休む決心をして、早々に連絡をし、総合病院へ連れて行きました。


「片頭痛かな」

 診断は変わりませんでした。

「あの薬を飲むと、良くなるんだよね」

「はい」

 長男は死んだような顔をしていました。顔は真っ青で血の気がなく、力が入らず、ぼうっと焦点定まらぬ感じで、ただ頭痛の痛みをどうしたらいいのかと、そればかり考えていたようでした。

「予防薬、あるんだけど。飲んでみる? でも、人によって効くか効かないか、試してみないとわからない。自分に合った薬を探していく感じ。2週間くらい試してみて、合ってるようならそれを続ける、ダメなら違うのにって感じで、いろいろ試してみないと、本当にどれが自分に合っているのかわからない」

 結局のところ、片頭痛という病気は目に見えない、本人だけが症状を感じるという病気のため、お医者さん自身も『そうじゃないか』と憶測して診察しているという、異様な状態でした。

「まず、飲んでみて」

「はい」

「……大丈夫?」

「はい」

 長男は一本調子で返事をするだけです。これにはお医者さんも困ってしまうわけで、

「何か、悩みとか、困っていることとか、あると頭痛という症状になって出てくることもあるんだけど」

「悩み……? 別に。ママさんはなんかあると思う?」

「私に訊くな」

 と、長男はまるで他人事のようでした。


 長男の、この原因不明の頭痛は、それからしばらく続きました。

 私の当時の日記には、以下のように記されていました。(一部固有名詞は変えています)


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 1月17日木曜日

 朝6:30ころ頭痛訴え頓服

 7時頃三女が頭をけとばしたことで、痛みが増す

 9:30症状おちつき登校

 学校に薬持っていくこと発作起きたら保健室で休ませること、ムリならtelくれることをかくにん

 2つつづけてのんだことで副作用あり

 ねむ気、腹痛、倦怠感、めまいあり

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 1月18日金曜日

 頭痛6:00頓服

 また6時半ころ三女と次男に足で頭に衝撃

 仕事おそくなるとtelする

 9時半ころ具合戻り学校へ

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 朝、頭痛が多く、頓服薬を飲めば、昼過ぎには元に戻っていることが多かったようです。

 学校では具合が悪くても、なるべく教室で過ごしていたと聞きました。本人はどうしても普通の生活がしたかったようですが、ふらふらして、ムリしているのがわかる状態だったそうです。

 それでも、本人の意思を尊重して学校へとなるべく通わせるようにしました。

 次女に続けて、長男まで。一体何が原因なのかわからないまま、時間だけがどんどん過ぎていきました。


 19日土曜日。最後の受験講座の日。

 次女は朝から頑張って起き、最初から最後まで講座に参加することができました。

 長男が具合悪い中、この週次女は毎日学校へ行き、歩いて帰ってくることができたのも喜ばしいことでした。


 受験まであと少し。

 どうにかあと一踏ん張りです。


 しかし、そんなときに限って、とんでもないところから刺客はやってくるもの。

 手帳を見ますと、長女がインフルエンザだったと。同じクラスの子から移されたらしく、高い熱を出してしまったのです。

 19日土曜日から長女を個室に閉じ込め、なるべく次女やその他の家族と接しないようにさせました。

 ご飯は運び、トイレ以外は部屋の外に出ないよう徹底。途中で夫がかわいそうだと一緒に過ごそうとしていましたが、「何考えてんの」と引き剥がしました。

 受験。

 もし次女にインフルが移ったりしたら。

 本番、高熱で行けない、なんてことになったら。

 これまで何のために頑張ってきたのかわからなくなったら大変です。

 長女も察してくれて、ほぼ家族と顔を合わせぬまま、一週間、耐えてくれました。お陰でインフルは拡散しませんでしたが、ヒヤヒヤした日々を過ごしました。

 結局、長女は学級閉鎖。

 そんなバタバタした中で、ついに受験を迎えます。


 2019年1月22日火曜日。次女は朝から、しっかりと起きていました。

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