綱渡り
1月9日水曜日、次女は前日フルで学校に行った疲れからか、全く起きられず、学校を休みました。
実力テストではどうにか身体が持ちましたが、その反動がすぐ来るようではとても思いやられます。受験もすぐそこに迫っていましたから、親としては気が気ではありませんでした。
もう一つ、気が気ではなかったのは長男のことです。
この日も頭痛が全く治りません。朝起きた瞬間にもう痛いという具合で、これは少し様子がおかしいのではないかと、傍目からもわかるくらいの苦しみ方でした。曰く、頭の両側がズキズキする、少し持ち上げただけでも痛い、頭が痛すぎて、おなかが空いているのに何も食べられないとのこと。
雪が降りしきる1月、長女を7時台の電車に乗せるために夫は先に出てしまい、小1の三女は「今日もお兄ちゃん具合悪いの」と不安そうな顔をしながら支度して、寝不足の幼稚園児・次男は着替えこそ長女がしてくれたもののまだ夢の中、動く気配のない次女と、苦しんでうなり声を上げ、一人ではベッドから起き上がることもできず、どうにかおんぶして一階に連れてきた長男が残されます。三女には「今日も副隊長に休みだって伝えて」と言ってどうにか時間で出発させ、次男を必死に起こしてご飯を食べさせながら、果たしてこの後どうするべきかを一人で悶々と考えるのです。
毎日遅番とはいえ、ギリギリになってから「出勤できません」と電話をするのはよろしくないと、そういうことを前日に言われていました。できる限り8時半前に連絡しなければシフトが組めないと。全くその通りですが、状況が状況なだけにパニック寸前です。
次女の件は、「体調がよくなったら自分で歩いて行く」と中学校に伝え、長男の件は、「様子がおかしいから小児科に連れて行きます」と小学校に伝えました。長引く頭痛に、長男の担任は、
「大きな病院で診てもらった方が」
と言ってくださいました。全くその通りだと思いましたし、私もこの日はそうするつもりでした。
職場に休みの連絡を入れ、次男を幼稚園に送ってすぐ、長男の身支度をして小児科へ向かいました。
一人では歩ける様子ではなく、負ぶって車まで運びました。車内でもぐったりとして、まともな状態ではないのがすぐにわかりました。飲み物を渡すも、一人で飲むこともできません。
何か、重大な病気なのかもしれない。
何度も入院したことを思い出します。
しかし、小児科での診察はあっさりしたものでした。
「昨日の血液検査の結果も出たんだけど、特に異常ないんだよね。風邪というわけでもなさそうだし。う~ん」
しかし、頭痛はもう三日以上続いていたのです。
ぐったりする長男を横目に、どうにかしなければと思ってきたのに。
「あの……、紹介状を書いてもらえませんか」
「紹介状?」
「もっと大きな病院で、細かく検査をしてもらった方がいいのかなと」
「う~ん、いいけど……」
所見で何も異常がなかっただけに、先生はあまり気が進まなかったようでしたが、無理矢理紹介状を書いてもらい、そのまま総合病院へと向かいました。
「片頭痛かなぁ」
総合病院では、症状を聞く限り、そのくらいしか思い当たらないと首をかしげられました。
「片頭痛だと、検査には引っかからないけど、頭痛症状だけが現れることがある。というか、片頭痛は大抵そういうもの。はっきりとはわからないけど、片頭痛にしか効かない薬もある。試してみる?」
午後が近くなり、少しだけ具合を持ち直した長男も、いい加減この苦しみから解放してもらいたいと思ったのか、素直にうなずいていました。
「でも、もし万が一、もっと重要な病気が隠れていたら大変だから、MRIも予約しておこう」
念のため、総合病院でも血液検査をしました。午後に結果がわかるというので、いったん家に戻り、昼過ぎに私だけ結果を聞きに行きました。異常はありませんでした。
「やっぱりそうなるよねぇ」
先生は、結果を見て首をかしげました。
「ご飯は食べられた?」
「はい、朝食べられなかったので、おなかがすいたらしくて、普通に食べていました」
「そうか。あれ……? 何だろうなぁ……」
ここでもまた、首をかしげていました。
翌日、次女は相変わらず具合が持ち直さず、学校を休みました。
長男は、元気よく登校しました。
頭痛はこの日、特にありませんでした。
さらに翌日、11日金曜日は次女の診察で休みを取りました。午前中の診察がはみ出して昼過ぎまでかかってしまい、大慌てで中学校へと駆け込みました。その後長男を小学校まで迎えに行ってから、総合病院へ。再診の予約をしていたのです。
「体調どう?」
先生が尋ねると、
「うぅ~ん、まぁ、普通?」
長男は素っ気なく答えました。特に頭痛もなく、片頭痛の発作薬も使うことなく二日が過ぎていました。
「次回まで様子を見よう。もし、それまでにまた具合が悪くなったら来て」
発作薬は2回分、貰っていました。
単価の高い薬は、如何にその薬を処方されることが稀で、如何に大変な症状かを物語っていました。
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