隣町の小児科
7月7日土曜日、職場の飲み会に誘われました。ホテルのビアホールで暑気払いということで、美味しいものを沢山いただいてきました。
久々に会う人も多く、休業中のことを色々聞かれました。そして、次女の具合のことをわかってもらおうと、私も沢山伝えました。
職場の雰囲気はどうか、不安でなりませんでしたが、一見すると何ともないように思えました。
仲の良かった同僚や先輩、パートや渉外担当の皆さんに囲まれ、ワイワイと最後まで過ごさせていただきました。
パートのDさんは、特に次女のことを心配してくれていて、私が休憩室で号泣していたときも、励ましてくれた一人です。
「天崎さんが休みを取って、次女ちゃんも相当安心したと思うのよ」
独特の柔らかい物言いで、それだけでもとても安心する方です。
「だって、自分が本当に辛いときにお母さんがいてくれるって、これ以上嬉しいことはないと思うわ。良い選択をしたのよ。仕事のことなんか気にしなくって良いから、しっかり休んで、しっかり向き合ってあげて」
「ありがとうございます。本人はどう思ってるかちょっと分からないですけど、そう言って貰えると嬉しいです」
「なぁに言ってんのよ! 感謝してるに決まってるじゃない! こんなに親身に考えて、仕事まで休んで世話をしてくれるお母さんなんて、他にいないわよ!」
あまりにも嬉しい言葉に、自然とボロボロ涙が出てしまいます。
「きっと良くなるわよ。だって、こんなにも一生懸命尽くしてくれるんだもの。3ヶ月と言わず、もっとじっくり、治るまで一緒にいてあげた方がいいと思うわ。一番良いときに休んだのよ。今寄り添ってあげないで、いつ寄り添うの? ね、大丈夫だから。きっと良くなるから、頑張ってね。応援してるわ」
渉外担当のSさんは、次女が未だ小さかった頃のことを知っている方でした。10年ほど前は、まだ小学校に上がる前だった子どもたちを連れて職場の飲み会に参加していたのですが、Sさんは、よく子どもたちにお菓子を買ってきてくれたり、一緒に遊んでくれたりしていました。
「具合悪いのって、次女? あの子かぁ……」
次女は小さい頃、とてもお喋りでした。当時から色白で、可愛い可愛いと、飲み会に連れて行くと評判でした。
「大変だな……。あんなに元気だったのに」
病気のことを伝えれば伝えるほど、理解しにくいことこの上なく、Sさんも半分以上分かっていないようなかんじです。
「生きていれば色々あるよな、本当に」
五体満足で産んだとしても、そこから先は何が起きるか分からない。子育ての難しさを改めて噛みしめました。
翌週はまた、次女の具合が悪くなりました。
月曜、夕方の登校、火曜、給食のみ、そして水曜日はとうとう学校を休みます。
「お腹が痛い……。学校よりも、お医者さん連れてって……」
頭痛と腹痛、微熱は毎日続いていて、頓服も毎日飲んでいます。それでも具合が悪い。
「行っても整腸剤止まりかも知れないよ。それに、かかりつけの小児科は水曜日の午後休みだし、行くとしたら隣町の別の小児科になるけど」
「それでもいいから連れてって……」
懇願するほどだし、本当に具合が悪いんだろうと、下の子たちが時々通っている隣町の小児科へと向かいました。
とても癖の強い先生だけれど、ズバズバと症状についてハッキリとした物言いをする先生です。好き嫌いが分かれる人物なので、大丈夫かなと思いながら行くと……。
「多分ね、この子、腸への血管が細いんだよ」
突然、今まで言われたことのないことを言われました。
「時々いるんだよ。腸へ行く血管が細い子。最近暑いでしょ? 暑いと身体の熱を放出しようと手足に血がいって、内臓に十分血が行き渡らなくなって、お腹が痛くなる。逆に寒いと、身体を温めようと、血が内臓に集まって、手足が冷える。だから、冬は冷え性になりやすいんだ。他の子みたいに、急激な運動を今の時期にすると、本当に大変。無理が出来ない体質。だから、体育なんて見学でも良いから。無理しちゃダメ。特に、こういう季節の変わり目なんかは苦手だよね。逆に暑くなってしまえば、ある程度体調は安定してくると思うよ。ただ、また秋になって涼しくなってくると、体調崩すかも知れないから気をつけて」
聞いたことのない説明にあっけにとられましたが、納得しました。
「そうか、だから私、具合悪くなり易いんだ……!」
次女は感激し、かかりつけ医を変えても良いとまで言いました。
起立性調節障害で具合が悪いだけではなく、具合の悪くなり易い体質なのかも知れないと言われたことで、自分がどう頑張っても無理なものは無理なんだとハッキリわかり、気持ちが楽になったようです。
思いがけぬ収穫でした。
その週は結局、木曜日給食以降下校時間まで中学校に居たほかは、金曜日も夕方の登校のみと、ちょっと寂しい結果に終わりました。
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