毎日給食を

 給食を食べるという目的が出来た次女は、そこからほぼ毎日給食前には滑り込んで学校に行けるようになっていきました。

 給食前と言っても、中学校では昼休みの13時半前後なのがちょっと辛いところですが、それでも以前よりはずっと回復したように思いました。

 ただ、休みが続いたりちょっと気を抜いたりすると、直ぐに元に戻りそうになります。


 6月19日火曜日に診察がありました。確か、物凄く調子が悪かった日です。一人で次女を車に乗せ、必死に病院へ向かったわけですが、いつもは車内で摂る朝食も、口を付けられないくらいでした。歩かせるのはとても無理だと思っていたとき、

「車椅子使おうか」

 ふと、その存在を思い出しました。

 普段は全く使うことのない車椅子ですが、次女がとても自分で支えて歩けるような状態ではなかったため、県立病院に着くと、身障者用のスペースに車を停め、車椅子を借りに行きました。車椅子なんて殆ど使ったことがありません。入り口に並んでいた畳まれた車椅子、触ってみたものの開き方が分からず四苦八苦していると、その辺のおじいさんに奇異な目で見られました。

 恥ずかしながらどうにか使える状態になった車椅子を、急いで駐車場の次女のところまで持っていきます。

 すると今度は、車から降ろすのが大変で、角度がおかしいとか、こういう角度に車椅子を置いた方が良いとか、バタバタしながらも、どうにか車椅子に次女を乗せました。

 県立病院の入り口スロープをゆっくりと上がり、受付の手前のあたりになると、次女は、

「降ろして。一人で歩く」

 と言い出しました。

 そんなに酷い状態でもないのに車椅子が恥ずかしいらしいのです。

「大丈夫か」

 尋ねると、どうにか一人で立ち上がりました。

 フラフラと歩き、受付を済ませ、待合で待ちました。その頃にはもう、車椅子は必要な状態ではなくなっていました。

 具合が悪いのは一時的。ある程度の時間が経てば大丈夫なのです。

 自分で歩く意思があるならば、あまり甘やかさず歩かせた方が良いのだと再認識しました。

 学校給食が始まったことに関して、県立病院の先生は驚かれたのと同時に、頑張ってるねと褒めてくださいました。

「どう? お母さん休んで今までと何か違う?」

「う~ん、少しは、早く起きられるようになってきたかな」

 ただ、やはり立ちくらみなどの症状があることを伝えますと、

「でも、そんなに極端な血圧の低下があるわけじゃないんだよなぁ。歩いてきて、自分の血圧がどれくらいになっているか、待合に機械があるから計ってみたらどうだろう」

 先生がおっしゃるので、診察のあと、二人で血圧を測ってみました。


次女:最高血圧126mmHg/最低血圧56mmHg/脈拍数76拍/分

私 :最高血圧110mmHg/最低血圧65mmHg/脈拍数66拍/分


「あれ? そんなに酷くないね。落ち着いてきたからかなぁ」

 極端に血圧が低いわけでも、脈拍が早いわけでもないようです。

「今度、来たら直ぐに計ればいいんじゃないの?」

 次女に言われ、来院直後、未だ息が整わないうちに血圧を測るのが、その後習慣になっていきました。


 給食時間から学校に行く日、給食だけ食べて力尽きる日、様々でしたが、思い切って給食を再開させたのは良いことだったと思います。次女も少しずつタイムテーブルの中に給食があるという認識が出来たようでした。

 ただ、午前中、必死に起こしている間は、何もかもが嫌になってしまうらしく、

「何で給食のためだけに行くの」

「どうせ給食食べ終わっても学校は帰らせてくれない」

「半分以上残すから意味ない」

「別にそのメニュー好きじゃない」

 等々、ネガティブ発言が相次ぎ、その度に、

「何言ってんの、バランスよく食べれるじゃん」

「好きなのだけ食べて残しても良いよ」

「とにかく行こう、今日は行こう」

 などと、必死に前向きな言葉をかけ続けます。

 本当は勉強もして貰いたいところですが、ここは我慢です。本人がどうにか自分の意思で学校に行けるよう、必死で声をかけ続けました。

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