二人で歩いて

 6月の第一週の目標は、歩いて登下校すること。

 時間帯はさておき、どうにかして歩かせたいと思っていました。

 起立性調節障害の場合、頭痛や腹痛に襲われることが多く、常に横になりたがるため、体力が徐々に低下していってしまいます。体調不良の運動不足で、症状が更に進んでしまうこともあるようです。

 できる限り動けるときには動くようにしなければなりません。

 休日の買い物には、意味なく誘ってスーパーの中を歩かせますが、平日は基本買い物には行かないため、学校に行かない日は殆ど歩くことなく終わってしまいます。自分の意思で散歩に出かけることはほぼないので、誰かが無理やり何らかの理由を付けて歩かせる必要がありました。

 ただ、あんまりにも具合が悪すぎるのに歩かせるわけにもいきません。

 本人が、これくらいの距離なら歩けそうだと思う距離なら歩かせることが出来るのですが、例えばキロ単位になると、流石に途中で疲れて動けなくなる可能性も出てきます。それこそ介護休業初日に、長女とともに歩いて行ったのに途中で電話を寄越したような感じで、どうにもならないくらい具合が悪いのであれば、車で送っていった方が良い、となるわけです。


 6月6日、7日は、起床後、私の昼ご飯のタイミングで朝ご飯を食べた次女。そこから、頭が痛い、腹が痛いと言うので、着替えにも時間がかかり、学校へ行ったのは15時頃でした。

 中学校に次女を連れて行ったところで、今度は車から降りて昇降口に行くまで時間がかかります。車は昇降口の真ん前に停めるのですが、そこからスタスタと歩いて昇降口に行くのは稀で、大抵は車から降りるときの立ちくらみで数分、そこから階段を上がって昇降口に入るのに数分、靴を履くのに数分と、ゆっくりゆっくり動いていきます。

 日にもよりますが、最初の頃は私が2階の職員室まで連れて行っていました。出発前に電話していることもあり、先生の方で降りてきて、昇降口で次女を先生に引き渡す方法へと、徐々に変わっていきます。

 学校には携帯電話持ち込み禁止の代わりに、公衆電話が備え付けてありましたので、

「終わったら電話して」

 テレホンカードを持たせ、本人から電話させるようにしました。

 帰宅して家事などをこなし、電話を貰うと、また学校へと迎えに行きます。

 大体16時から16時半頃が下校時間です。

 次女を迎えに行った後は、学童に三女、幼稚園に次男を迎えに行きました。

 長男が17時前に帰宅。その後、天候にも寄りましたが、

「電車の時間まで長すぎるから迎えに来て」

 と言う長女を高校まで迎えに行くときもありました。


 8日金曜日、この日は比較的天気が穏やかで、次女も早めに目覚めたのだったと思います。早めと言っても昼前ですが、そこからご飯を食べさせて、着替えさせ、

「今日は歩いて行くか」

 ということになりました。

 最初はだいぶ嫌がられましたが、

「散歩だ、散歩」

 と、無理やり引っ張っていきました。

 天候が穏やかとは書きましたが、気温は高めでした。

 本当は14時頃には出たかったのに、気が付くと15時半。それでも出発出来ず、家を出たのは15時50分でした。

 私は首にタオルを引っかけ、帽子を目深に被って歩きました。

 水筒と筆記用具、少しのノートやファイルくらいしか入っていないスクールバッグを持ち、次女と一緒に喋りながらの登校です。

 学校までの道は何通りかあり、どの道を普段通っているのか聞きながら歩いて行きます。

 中1の時に友だちと待ち合わせしていたにもかかわらず、遅いと言われて長女と、長女の友だちと三人で歩いて登校したこと、どの道が学校に近いか、どんな話をしながら姉たちと歩いていたのかなど、色々と話してくれました。

 誰かと話しながらだと、苦しい、辛い、という気持ちが分散されるようでした。

 途中途中で休みながら、ゆっくりと歩いて行きます。

 家から学校まで、早ければ20分超で着くところですが、20分経っても学校は見えてきません。結局、到着するのに40分以上かかりました。

 学校へ着くと16時半を過ぎていました。

「お! 今日は歩いてきたか!」

 担任の先生もびっくりしていました。

 扇風機しかない教室で少し話をして、プリント類を貰って帰りました。

 また、同じ道を歩いて帰ります。帰り道は、行きほど時間はかかりませんでしたが、グッタリとくたびれました。

「歩けば歩けるじゃん! 凄い! 来週からは給食を食べよう!」

 少しずつ出来ることを増やしていくことで、自信に繋がれば良いなと、そればかり願っていました。

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