反動

 6月5日火曜日、診察の日です。

 日曜日、運動会で負ぶわれたり引きずられたりして動きまくった結果、極度の筋肉痛と倦怠感に襲われ、何日か具合の優れない日が続いていました。

 診察予約が10時から。9時半には家を出ないと間に合いません。

 全く動く気配の無い次女をどう起こしたら良いのか、大きな声を出したり、揺さぶったりしましたが、殆ど効果はありません。そこで、県立病院の先生に聞いた方法を試すことにしました。

 スマホの懐中電灯機能を使い、強烈な光をまぶたに当てるというものです。距離は10~30センチほどで良いそうです。入院病棟で行っている治療法と同じような、目もくらむ明るさになり、脳の覚醒を早めることが出来るというのです。

 言われたとおりに光を当てると、声をかけたときよりもわかりやすく反応しました。

 これはいいと思って、顔の真ん前で光を浴びせ続けます。

 しかし、眩しすぎてとても我慢出来なかったのか、無意識に顔を逸らしたり、タオルケットの中に潜ったりしてしまいます。

 それでは意味がないと、タオルケットを剥いで、顔の角度に合わせてスマホを動かし、光を浴びせ続けました。

 そのうちに、

「もう起きてる!」

 と次女が怒り出すので、今度は声かけをしたり、頭の向きを変えられるようになったら薬を飲ませたりするのです。

 一見簡単なように見えるこの起こし方ですが、スマホを掲げ続けるのはかなりしんどく、声がけもポジティブに、大きな声で続けなければならないので、思った以上に体力と気力を使います。また、起こしている間何も出来ないというのも難点です。だんだん慣れてきてからは、大音量でゲームしながら光を当てるというずぼらなことをやっていましたが、ちょっと気を抜くと光が次女に当たらなくなるので、注意が必要でした。

 朝起きたら直ぐに出られるよう、幼稚園に次男を送ったあと、コンビニで次女の朝ご飯代わりのパンと飲み物を買い込んでおき、車も玄関からなるべく歩かずに乗れるよう、寄せておきました。

 どうにか起きたとして、そこから身体を動かすのがまた、一苦労でした。

 全身力が入らない人間の上半身を先ず起こし、そのまま背負って立ち上がりたいところですが、なにせ全く力が入らないので、おんぶしてと手を伸ばすこともありません。布団を丸めて次女の後ろに置き、横にならないように工夫してから、腕を持ったままおんぶの格好をします。自分の背中に次女の体重がかかったら、立ち上がるだけなのですが、これがまた大変でした。

 ベッドの上に私が腰掛けると、次女が持ち上がりません。

 ベッドの下に私が腰掛けると、重すぎて膝に力が入りません。

 どうすれば良いのかと一人で格闘した結果、ベッドの下で次女を背中に乗せ、両手を床について四つん這いの格好になってから、物に捕まって立ち上がるという、とてもしんどい動きをする羽目になります。

 そうして負ぶってトイレまで連れて行き、用を足し終わると、今度は隣の洗面所へ。しかし、トイレから立ったのはいいものの、ほんの数メートルの移動が出来ず、壁により掛かってみたり、倒れ込んでみたり。脇の下に腕を入れて立ち上がらせ、洗面台まで連れて行くと、今度は一人で立てない。洗面台の前に膝立ちして、腕をだらんと洗面台に差し出すことしか出来ないので、手を洗ってやりました。

 また次女を背負って、今度は玄関へ。段差がありますし、靴を履くために一旦どうしても立ち止まります。すると、また次女がそこで床に倒れてしまい、これをまた一人で持ち上げようとするのですが、全く動く気配すら無く、ベッドの上で行ったのと同じことをもう一度繰り返す羽目になりました。

 玄関のたたきにしゃがみ、次女を背中に乗せて立ち上がろうとしますが、ベッドとは違い段差もないし、思ったほど掴める物がない上、膝がプルプルして力が入りません。こうなるともう、笑うしかなくなるのでした。

 死ぬような思いで立ち上がり、次女を助手席に放り込んで出発。回復したのを見計らって、車内で朝ご飯を食べて貰います。

 県立病院に行く頃にはどうにか立てるようにはなっていますが、歩くのには補助が必要で、駐車場から病院までの100メートルほどの距離に、何分もかかりました。


 学校側からは、診察後、給食を食べられないかと聞かれましたが、具合が悪く、この日は結局15時過ぎてから車で登校させたようです。


 ただ、このまま放って置くわけにも行かないという強い気持ちで、次週からの給食再開をお願いしました。

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