平成29年度という呪縛

 仕事柄、ライフプランを設計することがあります。

 ライフプランとはすなわち、生活設計。ザックリ言うと、将来起こるであろう家族のイベントや家庭の収支を総合し、早めに準備をしておきましょうというものです。

 我が家は7人家族、子どもは5人です。夫婦共働きで、その他の収入は特にありません。一般的な家庭に比べると、平均か、やや少ない年収で暮らしています。どう考えても、子どもの学費が一番のネック。当然学資保険は積んでいるものの、本来であればそれにプラスして毎月数万円ずつ積み立てしなければ、恐らく将来子供たちが自分の道を選ぶ上で、必ずと言って良いほど学費の問題に直面するだろうということは、誰に言われなくてもわかっていました。

 そこで、子どもの数が4人に増えそうだとわかった頃から、子どもが平成何年のとき、どこに通っているのか、保険の満期金、掛け金はどのようになっているのか、月々の固定支出、住宅ローンの返済はいつまで何円ほど必要なのかというものを、エクセルファイルで作成していました。いわば、手作りのライフプランシートです。

 これによると、平成26年度から平成38年度にかけて、ほぼ毎年のように誰かが卒業し、誰かが入学します。酷いときは二人以上それが重なります。

 子どものうち、男二人は早生まれです。そうなると、実際の年齢差と学年差にズレが生じてきますから、エクセルを年度に合わせることで、頭の中でもきちんと整理して、いつ誰がどの施設に通っているかが見えてくるわけです。


 さて、丁度このエッセイの舞台となっている平成29年度はどうだったかというと。


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長女…高校1年(29年度入学)(28年度末中学卒業)

次女…中学2年

長男…小学5年

三女…幼稚園年長(卒園)(30年度小学校入学)

次男…保育園(卒園)(30年度幼稚園入園)


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 という具合です。

 幼稚園は2年保育のみ。午後2時以降は預かり保育があり、保育園同様7時まで預かっていただいています。


 ここまでで、アレ? と思われた方もいらっしゃるかも知れません。

 そうです。子ども5人が全員、違う場所に通っていたのです。

 送り迎え、それぞれの施設での行事、面談や習い事のイベント等考えると、実にわけのわからない状態になります。

 お陰で、スケジュール帳はギッシリ。このエッセイの執筆にも役立つほどにハチャメチャでした。

 更に、子供たちは容赦なく具合を悪くします。やれ風邪がうつっただの、熱を出しただの、怪我をした、学校の検診で引っかかった……。キリがありません。

 その上、春からの転勤で通勤時間は増え、子供たちをそれぞれの施設から回収して自宅に帰り、持ち物を整理させてご飯の支度をして食べ始めるのが20時から20時半。入浴だの明日の準備だのしていると、あっという間に夜中です。

 そしてまた朝になれば朝になったで、高校生はお弁当を持たせねばならず、それまで面倒なときは私はカップ麺でいいやと思っていたのがダメになり、7時前に駅に向けて出発する長女に持たせるために弁当を高速で作り……。夫と三女を送り出した後、未だ寝間着の次男を揺さぶり起こしながら着替えさせて自分の支度をしつつ、ご飯を掻っ込んで5分程度でメイクを終わらせ、保育園に次男を預けた後、渋滞の待ち構える通勤路へと嵐のように向かっていく。という具合でした。


 次女に向き合う時間というのは、物凄く限られていました。

 朝は寝ています。声はかけますが、それ以上できません。

 帰宅後は、具合が良ければ晩ご飯の手伝いや、保育園児幼稚園児の持ち物の片付けや次の日の準備をお願いし、洗濯物を畳んで貰ったりはしていたように思います。しかし、それを私は、台所でご飯を作りながら見ているだけ。少し話したりはしますが、ゆっくりと腰を据えて話す時間は全くありません。

 これに加え、夏には家庭菜園の水まきや草むしり、冬には雪かきという作業がついて回ります。

「よく仕事に毎日来てるじゃないの」

 そう声をかけられることがよくありました。

 要するに、キャパシティを遙かに超えていたのです。

 次女は時折、具合が悪いと訴えてきました。整腸剤や胃腸薬をその都度処方して貰いました。

 学校側の配慮で受けることになったカウンセリングは、ゴールデンウィーク明けに行われることになりました。

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