身体が怠い

 風邪かな、程度に思っていました。

 身体が怠い、お腹が痛い、頭が痛い、フラフラする。

 お腹の調子が悪くなることはよくあったので、胃腸炎かな、程度に。


 2017年1月6日。

 中一の三学期始業式。

 具合が悪いと訴える次女に、「今日が始業式だし、先ず学校に行ってみたら」と、深く考えずに話しました。

 その頃私は、有給の残り日数と戦っていました。2016年の秋に長男が虫垂炎の手術で入院、その後も具合が悪く何日か休んだため、残り日数とこれから休まなければならない学校行事、保育園、幼稚園行事とにらめっこする日々でした。

 出来るなら、上の子たちには多少具合悪くてもどうにか乗り切って欲しいというのが本音でしたし、それは当然、子供たちもわかっていたはずでした。

 だからいつものように、

「大丈夫、乗り切れる」

 そういう認識でいたのは間違いありません。

 最後まで具合が悪いと訴える次女を、長女とその友達がどうにか家から連れ出してくれたのを確認したあと、私は保育園に次男を送り、会社に出勤しました。

 制服に着替えて出勤簿に判子を押そうとしたとき、

「天崎さん、中学校から電話」

 私は目を丸くして、

「え?」

 と声を上げます。

「頑張って登校したんですけど、やっぱり気持ち悪いから今日は帰って休みたいそうです」

 中学校の先生からの電話に慌てました。

 今さっき送り出した、あれ、やっぱりダメだったか。

 私は事情を説明し、そのまま有給を取らせていただくことに。残り日数は気になりますが、こういう電話が来たときは、大抵母親である私が動きます。そのまま中学校まで迎えに行き、一旦家に戻って保険証を持ってから小児科へ。

「風邪、かな? お正月に食べ過ぎてお腹壊したかな?」

 その日の診察は、そのようなものでした。

 風邪か、胃腸炎。

 明日から三連休だし、ゆっくり休んで週明けには学校に。

 整腸剤や風邪薬を貰って、あとは自宅で様子見。新学期初日なのに、散々なスタートだねと。


 多分、思いつく限りは、それが顕著に症状が現れた最初ではないかと思います。

 その後もお腹のおかしいの、頭が痛いのが何日か続いていました。

 相変わらず朝には弱く、長女に引っ張られるように学校に行く。帰る頃には調子が戻っていて、朝だけ具合悪そうにしている。

 特に頭痛が続くのはどうなんだろうと、少し首を傾げました。

 というのも、長男の虫垂炎が発覚する少し前にもかなり重い頭痛の症状があり、腹痛には気付かず総合病院で初めて虫垂炎だと気付いて貰った経緯があったのです。

 もしかしたら重大な病気の前兆ではないかという思いがどこかにありました。


 実は当時、私が勤務していた営業店は成績がふるわず、大変なことになっていました。

 28年度目標を達成するために、営業店が一丸となって頑張らなければならない。そのためには、土日出勤もやむなしという悲惨な状況です。普段は休みの土日に店舗を開き、相談会を行うことで新規客開拓、普段会えないお客様にも商品の提案をしようと動いていた時期でした。

 ただでさえ子育てで余裕がない中、仕事は仕事でしなければならないうえ、中三の長女には高校受験が迫っていました。

 加えて、夫は帰宅後、卒業祝賀会の実行委員会や小学校のPTAの仕事もあり、一体何をしているのかさっぱりわからない状態です。


 こんな中、次女の腹痛が壮大なフラグになっていることに、私たちは全く気付くことが出来ませんでした。

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