花火の夜の誓い


「…ねぇ、○○君…もし…もし私が先に死んだら…あなたが死んだときに迎えに行ってあげるね」

「……○○ちゃん何言ってるの?僕が君を迎えに行くんだよ。僕のお嫁さんになってくださいって………ふふっ、なんで僕達こんな話してるんだろうね」

「…きっと花火大会だからだよ。花火に向かって誓いたくなったの…これが最後かもしれないから…」

「○○ちゃんのバカ…そんな寂しいこといわないで…君は僕より生きるんだよ…いいや、それ余命より長く生きるんだよ…」

「…ふふっ、○○君好きよ」



ヒュ〜 バンバン



現在 

 私達の病気は違うけど、二人ともいつ死んでもおかしくない難病の一種だ。私たちには未来はないことは分かっていた。でも、毎日将来のことについて話すのが好きだった。一緒に話していることが好きだった。


 

 ある秋の日、彼はアメリカの最新の医療技術病気が治るかもしれないしれないということで、アメリカに行ってしまった。

 私はただ彼が帰ってくるまで狭い病室の中で待っていることしかできなかった。

 春が来て、桜が満開になる頃、彼は帰ってきた。最初はおどおどしていたが、話しているうちに昔の明るくて優しい彼に戻っていた。

「ねぇ、○○ちゃん…僕の病気治ったよ。約束、守れなくてごめんね。」

「うんうん、私が守る。あなたがおじいさんになったときに迎えに行く、何年かかろうと…待っているから、長生きしてね」

「…ありがとう…君の分も生きるよ」

「ふふっ、約束、ちゃんと守ってね」

「うん」

「指切りしよ」


指切りげんまん 嘘ついたら針千本の〜ます…


「約束だよ!」

「うん、また来るね」

そう言って彼は笑顔で帰って行った。


 

 それから数日後の話だ。母が喧騒をたてて病室に入ってきた。そして、私はその言葉にショックを受けた。


 

 彼の葬式にはたくさんの友達や家族が集まっていた。

(あぁ…○○君こんなに友達いたんだ…私より可愛い子もあんなにいっぱいいる…もし、いきてたらあの子たちと…)

 

 

 葬式が終わった後、私の周りに彼の友達や彼のお母さんが集まってきた。

「○○ちゃん…あの子と毎日喋ってくれてありがとう」

「あいつ…いつも君のこと、"彼女"だって自慢してたよ」

「落ち込まないで、彼はきっとあなたのこといつも見てるわ」

「そんな悲しい顔したら…彼がかわいそうよ」

「元気出せ」

「頑張って!」

 ……


 

 


 病室に帰った私は泣いた。

「何で!私の分も生きるって約束したじゃん!…何で死んでんの⁉私が先に死なないといけないのに、なんで先に行くのよ…○○君のバカ!」

そう言う相手もいないのに叫び続けた。


 深夜になった。私は他の病室の人に迷惑になるから黙っていたが、涙が止まらなくて眠れずにいた。

「hello!」

「…誰?」

「私はあなたに死の宣告をしに来た神様だよ!」

「…彼じゃないんだ…また約束破るんだ…」

「うふふ、あなたのところに来た死神が私で悪かったね!ところで、貴方に一つ質問があるの」

「今、答える気分じゃないけど、どうぞ」

「YES.貴女は彼に二回も裏切られましたが、彼のことがまだ好きですか?」

「…悔しいけど…まだ好きです。」

「なら良かった!明日を楽しみにしていてね!じゃ…おっと!もう一つ明日答えを聞かないといけない大切な質問があったんだった!いけないいけない!」

「…何ですか?さっさと帰ってくれます」

「Sorry!Sorry!では、ゴホン、"貴女はこの世界が好きですか?"では、明日答えを聞かせてね!バイバイ!」

そう言うと、彼女は夜の暗闇に消えてしまった。


 


 あの死神が行った次の日の朝が来た。いつもと変わらない、いつも通りの時間が流れていく。私は、死に対しての恐怖心はない。いつかは死ぬのはわかっていた。でも、最後に行きたい場所があった。だから、母に無理を言って、外出届を出してもらって、母と、父、祖母、弟とそこに出かけた。

 そこは、海沿いに広がるきれいな菜の花畑だ。以前、彼が教えてくれていってみたかった場所。

「うわ〜、綺麗ね」

「うん、綺麗だね」

「ここって、姉ちゃんの彼氏の好きな場所だったんでしょ」

「ちょ…ちょっと辞めてよ!恥ずかしい」

「ヒューヒュー」

「こらこら、○○ちゃんからかっちゃあかんよ」

「それにしても、○○が無理言うなんて珍しかったね。これが最後みたい」

「…」

「ちょっと…父ちゃん何言ってんだよ!姉ちゃんはまだ生きるんだよ…ウッ…ウェーン」

「ヒック…ウッ…ウェーン」

みんなで泣いた。最後の家族でのお出かけ…楽しかったな



    その夜、私は死んだ。


  

 

 目を覚ますと、あの元気な死神が目の前にいた。

「おっはー元気?否、死んだから元気か!そ·れ·よ·り♡早く行こ!」

「えっ…どっどこに!」

「行けばわかるよ!あっ!これ着けて」

「えっ!これって…」


 彼女に引っ張られて連れてかれた場所には、彼がいた。ずっと会いたかった。結婚したかった人…

 彼が私に近づいてくる。胸がバクバク鳴る

「…○○ちゃんごめんね…約束破った僕が言えるセリフじゃないんだけど…その…僕と結婚…」

「…うん、良いよ!結婚しよ○○君!」

「えっ…いいの!?」

「うん、勿論!」

 

 私達の結婚式は、知らない死神達と神様が祝ってくれた。死んでから結婚式っておかしいよね!


結婚式後、私は集まってくれた死神と話していた。そして、彼はあの死神と話していた。

「よっ…○○、結婚おめでとう」

「姉さん!ありがとう…姉さんがいなかったら叶わない夢だったよ」

「見直したかい?…お前をおいて自分の命を捨てた姉を…許してくれるかい?」

「勿論許すよ!僕の姉さん!ところで、僕達を幸せにしたから、死神の業からは開放されたんだよね。僕達とともにこない?」

「…悪い!私にはまだ、死神として迎えにいかないといけない人がいるから…一緒にはいけないよ!」

「あぁ…じゃ、僕達はそろそろ行くよ!さよなら姉さん」

「さよなら私の弟よ」



 そして私達は、登っていく、天へと延びる。転生するための階段を…

            

                〈END〉

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