第5回目【試し読み】暗黒ハローワーク!

「遊び人です」



「は?」


 十条先輩は、口を開けたまま固まった。


 会場にいた聴衆が、ざわざわと騒ぎ出す。


「おい……聞いたか?」


「遊び人だってよ……」


「あれってネタ枠だと思ったのに……本当に選択する奴がいたなんて」


「ってか本当に選べたんだ、遊び人」


「つかウケ狙い? 自分の人生でギャグやるとか、相当だな」


「単に遊びたいだけっしょ」


「でも、レベルを上げれば上級職になる道が開けるとか……」


「都市伝説(笑)」


「仮に事実でも、遊び人仲間に入れるパーティとかないし」


 おい!


 お前ら、勝手なこと噂してんじゃねえ!


 ああっ! 十条先輩がゴミを見るような目で俺を見ている!


「ち、違うんです! ほら、時代劇とかでよくあるじゃないですか! お殿様が遊び人のフリをして、悪者を退治したり! 若い頃はワルだったけど、いずれ偉い人になるとか!いずれ大物になるために、今は遊び人をやっておく必用があるんです!」


 俺は冷や汗を流しながら、必死に弁明した。


 伝われ! 俺の心!!


 うぅっ! 十条先輩の目が、腐ったモンスターの死体を見るような目になってる!!


「そう。あなたは大義のために、敢えて遊びに全力で努力している……というわけなのね?」


 おおっ! 本当に伝わった!


「いやあ、分かって頂けて何よりです。先輩が頭の固い、意地の悪い人でなくて良かった。ここだけの話、俺に力を貸すのは先輩にとって大正解ですよ? いずれ俺は出世するから、そのときには先輩も優遇してあげますよ」


 ん? 先輩のこめかみに血管が浮かび上がったような?


「ごめんなさい。頭が固くて意地が悪くて」


「へ?」


 十条先輩が氷のような笑顔で微笑み、出口を指さした。


「お帰り下さい」

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