第4話 人影

「サキ・・・・サキ・・サキ!」


教室から飛び出した私はサキの名前を呪文のように口ずさみながら

サキが向かった方向へと走っていく


さっき見えていた人影らしきものはもう見えない

サキの姿も見えない・・・

でも、私は走り続ける


ハァハァハァ・・・

体力には少し自信のある私だが

連続でいろいろな事があり、疲れが溜まっていたのか

5分程走ったぐらいで、すぐに息が切れてしまった


「けど、早く・・・サキを見つけてあげないと!!!」


サキはきっと私を待っているはず

そう自分に鼓舞しながら再び動き出す


そして10分程、一歩、また一歩と少しづつ進んでいると

進行方向に見覚えのある人影の集団が現れてきた


「あれは!!?さっきの人影!」


私は危険を感じ、とっさに近くの岩陰に隠れ人影の様子をうかがう事にした

岩陰に隠れながら、恐る恐る人影の方をのぞき込む


「人・・・じゃない!?」


人だと思っていたその集団は人ではなかった・・・

いや、生物学的には人なのか?どうなのだろう?

背丈は子供のような者が多く、身長は大きくて140cm

人が着用するような服を着ていて、頭も手足も人間と同じような形

ただ、奇妙なのは肌の色と顔だ

肌は全身緑色

私の知る限り、そういう肌の色の人種は見た事も聞いたこともない

そして、顔はもっと特徴的で

目は人よりもやや大きく鋭い釣り目

鼻は高く、三角形の様にとんがっている

口は人と同じぐらいの大きさだが左右に長く鋭い牙を持つものが多い


私はこの生物を知っている

小学生の頃、父親がゲームをしているのを横で見ていた時に出てきたモンスター

たしか名前はゴブリン

そう、ゴブリンだ

きっと、委員長が言っていた緑色の化け物もこのゴブリン達だったのだろう

でもなんで、その人でもないファンタジー世界のゴブリンが目の前にいるのだろうか?

私の頭は突然の事に耐えられなくなり、処理が追い付かなくなっている

いわゆるパニック状態だ

ただ、ある光景を見て

そのパニック状態からスイッチが切り替わる


「サキ・・・」


ゴブリン達の中央

やつらは何を運んでるのか知らないが、いくつか荷台を引いていた

その中の一つに倒れたサキが積まれていた・・・


「許さない・・・よくもサキを・・・

 絶対に!ゆるさない!!!!」


さっきまでパニック状態だった、私の頭は一気に空っぽになり

代わりにサキへの思いと、ゴブリン達への怒りでいっぱいになった

そんな私は相手の戦力もわからず無謀にも身一つで突撃を始めるのであった

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