第47話 ガイルVS二等騎士
「ではこれより。504班と王族警備部隊員たちの模擬戦を始める!!」
ペディックが闘技場の中央でそう叫んだ。
「じゃあ、行ってくるぜお前ら!!」
ガイル・ドルムントはルームメイトたちの方を見てそう言った。
「む、無理だけはしないでくださいね」
とヘンリー。
「……」
アルクは無言だった。
そして、リックは。
「相手は2等騎士だ。気負わずに頑張れよ」
「ははは、そいつはちげえますぜリックの兄貴」
「?」
首をかしげるリック。
ガイルは言う。
「俺は天下無敵の兄貴に鍛えてもらってんですよ。なら、『頑張れ』なんつー弱い言葉よりも言ってほしい言葉がありますぜ」
そう言って不敵に笑うガイル。
「……ああ、なるほど」
リックはガイルの背中を軽く叩いて言う。
「『勝ってこい』ガイル!! お前は強い」
「オッス!!!!」
ガイルは気合を一つ入れると、グルグルと腕を回しながら闘技場の中央に歩いていった。
□□□
「じゃあ行ってくるわね」
4人の王族警備部隊の一人、二等騎士マリーアはそう言って闘技場中央に歩いていく。
「なあ、あんまり虐めてやらねえようにな。手加減してやれよ」
ガンスが背後からそう言ってきた。
「はいはい」
マリーアは軽く手を振ってそう答える。
ガンスほどではないが、マリーアも今回の模擬戦は幾分格下相手と思っている。というより、普通に考えて現役の二等騎士である自分と、入学して数か月の新人などではまともな勝負にならないだろう。
まあ、大怪我はさせないくらいには加減をしよう。
「両者構えて!!」
ペディック教官の声と共に、マリーアとガイルは剣を構える。
「始めっ!!」
「だらあああああああああああああ」
開幕早々、ガイルは上段に思いきり振りかぶってマリーアに真っすぐ突進した。
(ふーん。見た目通りの脳筋パワータイプね。それなら)
マリーアはニヤリと笑う。
「あたしのお得意様よ。強化魔法『衝圧分散』!!」
マリーアは得意魔法を使った。
上段から振り下ろされたガイルの剣をマリーアが受け止める。
ガシッッッ、という金属同士がぶつかる音が……
……しなかった。
「なっ、どうなってやがる?」
眉を顰めるガイル。
確かにガイルは相当な力で剣を打ち込んだはずである。そして、相手の剣はそれを受け止めた。
なのにどうしたことか、金属同士がぶつかる音もしなかったし、何より剣を持つガイルの手に全く手ごたえが返って来ないのである。
「身体強化を使って真っ向からの切り下ろし。なかなかの威力じゃない。教えてあげるわ新入隊員くん。『衝圧分散』は5秒間、自分が持っている武器と自分の体に受けた力を分散する性質を付与する強化魔法よ」
マリーアはガイルの半分もないであろう細い腕で、真正面から打ち込みを受け止めつつ言う。
「まあ、効果時間の5秒の間は走るための地面からの反発も吸収しちゃって動きが遅くなるから、基本は攻撃を躱せない時の緊急防御手段に使われる魔法だけど」
「しゃらくせえ!!」
ガイルの再びの打ち込み。しかし、一回目と同じく受け止められる。
驚いたのはその後である。
マリーアはガイルの剣を受け止めた後、すぐさま体を素早く右にそらしながらガイルを切りつけたのだ。
「ぐっ!!」
訓練用の剣は刃が研がれていないとは言え、それなりの重量を持った金属である。
遠心力の利いた一撃を受けて、脇腹を押さえながら少し後退するガイル。
「おいおい先輩。その魔法は使ってから5秒間まともに動けなかったんじゃなかったのかよ」
「アタシはこれ得意なのよ。魔法の効果時間中に強制的に術を解除する高等技術『切り上げ』。アタシはこの術に限り一瞬でオンオフをコントロールできるわ」
つまり、高い物理防御性能を誇りながらも「発動中の5秒間まともに動けなくなる」というデメリットから、緊急防御手段としてのみ使われる『衝圧分散』を好き放題使えるというわけである。
二等騎士マリーアはこの技術による高い対物理防御力によって、王族警備部隊に選ばれたのである。
「だからこそのお得意さまってことね。さあ、どうする新人君?」
その言葉を聞いたガイルは。
「ふふふ」
ニヤリと笑った。
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