妖姫、秘策を出す
261-①
「何なんだヨミ、その『とっておきの策』ってのは……?」
影光の問いに対し、ヨミはあるものを取り出した。
「それは……チャーシューメン・豚骨!?」
「吸命剣・妖月よっ!!」
ヨミが取り出したのはフリードから返却された吸命剣・妖月だった。
刺した相手の生命力を吸い取り、吸い取った生命の力を増幅して、地獄のような苦痛と共に使い手に与える魔剣……
それを見た影光はニヤリと笑った。
「ははーん? なるほど、この剣でアイツをブッ刺して奪われた力を取り戻して来いってんだな………………いや、無理だろ!? そもそもどうやってあの謎バリアを突破しろってんだ!?」
影光が指差した先ではフリード達が白の影魔獣に対して猛攻を加えていたが、白の影魔獣を覆う障壁は突破出来ていなかった。
「違うわよバカ」
「それじゃあ一体──」
「アンタそれで……私達を刺しなさい」
思いもよらないヨミの言葉に影光は唖然とした。
「お前……何言ってんだ!?」
影光の抗議を無視して、ヨミはガロウ達に質問した。
「ワンコオヤジ、岩男、ガリ鬼、アンタ達、オサナの癒しの札、何枚持ってる!?」
「《応援めっせーじ付き》とやらが一枚と普通のが三枚だ小娘」
「グォム……オレモ……オナジ……」
「僕は《応援めっせーじ付き》が一枚と通常のが四枚です」
「……影光がアンタ達を刺したら、すぐにありったけの札を貼るのよ? ヘマしたら本当に命を吸い尽くされて死ぬからね、良いわね?」
互いに頷く四天王を、影光は慌てて止めた。
「ば、馬鹿野郎ッッッ!! お前らを刺すなんて出来るわけ……ぐはっ!?」
影光はガロウにぶん殴られた。
「影光、俺達はお前の野望に命をかけると覚悟を決めた。それなのに、当の本人がそんなザマでどうする!! お前も、覚悟を決めろ……俺達の覚悟を無下にするな!!」
起きあがった影光は目を閉じ、深く息を吐いた。
「…………ヨミ、妖月を俺に貸してくれ」
「ほら……受け取りなさい」
妖月を受け取った影光はガロウの前に立った。
「行くぞ……ガロウ!!」
「ああ、やれ」
ガロウの右前腕に妖月が突き立てられた。
「グ……ゥゥゥッ!!」
「大丈夫か、ガロウ!?」
「こんなもの、どうという事はない。それより……絶対に奴を仕留めろ……!!」
そう言い残すと、ガロウはドサリと倒れてしまった。衰弱しているが息はある。影光はガロウが持っていた癒しの札を全て貼り付けると、今度はレムのすけの前に移動した。
「カゲミツ……オレノカラダ……トテモカタイ……サッキ……ヤラレタトコロ……サセ!!」
「くっ……すまん、レムのすけ!!」
影光は、白の影魔獣の触手によって貫かれたレムのすけの脇腹に妖月を突き立てた。
「グガァ!? グ……ォォォォ……!!」
「レムのすけ、大丈夫か!?」
「ダイ……ジョウブ……オレ……ツヨイ!! カゲ……ミツ……ガンバレ!!」
ドスンと倒れたレムのすけの傷口に、影光はレムのすけが持っていた癒しの札を全て貼り付けた。
「影光さん、次は僕の番です」
「キサイ……」
「僕はガロウさんやレムのすけさんみたいに、刺された時の痛みに耐えて意識を保っていられる自信がないので、先に言っておきます。勝てますよ、影光さんなら……僕の計算に狂いはありません」
「ああ、俺達自慢の知将枠がそう言うんなら安心だ」
「お願いします!!」
「ああ……」
影光がキサイの右前腕に妖月を突き立てると、キサイは十秒ほど歯を食いしばって痛みに耐えた後、倒れた。
「最後は私ね。アンタ、乙女の
「誤解を招くような言い方すんなし!?」
「……もう少ししたら、物凄い激痛に襲われると思うけど、気をしっかり保つのよ? 『激痛で気を失ってた間に全部終わっちゃってました』なんてシャレにもならないからね」
キサイに癒しの札を貼り終えた影光は、右手に握り締めた妖月に視線を落とした。
「フリードの奴はよくこんなヤバい物を……」
「クソヤロー(弟)の場合は妖月で吸い取った生命力は右手の影魔獣が全部食らっていたみたいだし? その時の激痛も影魔獣が引き受けていたんでしょうね、でも影魔獣は元々痛みを感じないから……」
「ちぇっ、いいなあ」
「さ、さっさとやんなさい」
「すまん……行くぞ、ヨミ!!」
右前腕に妖月を突き立てられ、倒れ込んだヨミに、影光は残った札を全て貼り付けた。
直後──
「ぐ……ああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」
凄まじい激痛が影光に襲いかかった!!
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