天照武刃団、駆け付ける


 260-①


 絶体絶命の影光達の下に、フリード率いる天照武刃団が駆けつけた。


「大丈夫か、アニキの影!?」

「お前達……何故ここに?」

「猛虎族の女の子と三人組の竜人が、『ここは自分達が食い止めるから、お前達は先に行け!!』って俺達を進ませてくれた」

「そうか、あいつら……」

「ここからは俺達、天照武刃団の出番だぜ!! あんた達は一旦下がって傷の手当てを!!」


 フリードの提案に影光は頷いた。


「……すまん、頼んだ!! 気を付けろよ!!」

「任せろ!!」


 影光達と四天王は一旦その場から退避し、少し離れた位置にある城の残骸の陰に身を隠した。

 それを見届けたフリードは白の影魔獣を睨みつけた。


「よし!! 行くぞクレナ!! うおおおおおっ!!」

「うんっ!! はぁぁぁぁぁっ!!」


 フリードはブラックキングナックルを振り上げ、クレナは火神穿影槍を腰溜めに構えて突進したが……


「うおっ!?」

「きゃっ!?」


 二人は見えない壁にぶつかったかのように、白の影魔獣の手前で弾き返されてしまった。

 吹っ飛ばされたフリードはすぐさま体勢を整えたものの、クレナは派手に転倒してしまった。


 白の影魔獣はその隙を見逃さず、触手のように変化させた右腕を伸ばしてクレナを刺し貫こうとしたが、間一髪、アルジェが間に入り、地神剣盾の盾部分で攻撃を防いだ。


「クーちゃんには……おらが指一本触れさせねぇ!!」

「ありがとう、アリー」

「ここは私に任せろ!!」


 今度はミナハが水神驚天動地の切っ先を目標に向けた。

 白の影魔獣との距離はおよそ3m、切っ先から一条の水が白の影魔獣目掛けて鋭く放出される。

 たが、岩をも穿つ超高圧の水の刃は、白の影魔獣に到達する直前に空中で四方に飛び散ってしまった。


「くっ……見えない障壁があるのか!?」

「み、ミナハさんはそのまま攻撃を続けて下さい!! わ、私が死角を調べます!!」


 キクチナが雷導針を風神弩で次々と放つ。

 放たれた雷導針は四本、いずれも複雑な軌道を描き、白の影魔獣の左右と背後、そして真上の四方向から襲いかかったが、四本とも白の影魔獣に到達する前に空中で停止してしまった。

 正確には『目標に向かって飛び続けてはいるが、謎の力に阻まれて、これ以上先に進めない』といった状態だ。


「そんな、全方向に障壁があるって言うの!?」

「くっ、神々の力が宿る武器を持ってしても突破出来ないとは……!!」

「な、難敵です……」

「これは……まずいんでねぇか……?」


 気圧されるクレナ達をフリードが叱咤する。


「怯むんじゃねぇ!! 俺達は今までどんな壁も困難もブチ破ってきた……だからコイツの障壁もブチ破って叩きのめす!! そんで、とっととアニキを探して救い出すんだ!!」

「うん、フー君の言う通りだよ……副隊長も凄く心配してるし!!」

「ああ、そうだな……姫様も隊長殿を待っている!!」

「わ、私達ならやれます!!」

「んだな、やってやんべ!!」


 白の影魔獣が両手の五指を鋭利な触手へと変化させて襲いかかるが、五人は攻撃を掻い潜りながら、果敢に前に出る。

 互いに死角をカバーし合いながら、城の影魔獣を覆う障壁を破るべく、天照武刃団は見えない壁に攻撃を加え続ける。


 その様子を残骸の陰から見ていた影光は感嘆した。


「ヘッ……やるじゃねぇか、あいつら」

「ハァ……ハァ……アホか!!」


 ヨミが、感嘆している影光にツッコミを入れた。


「感心してる場合じゃないわよ、あの白い影魔獣……奴だけは絶対に私達の手でブチ殺すのよ!!」

「ヨミお前……足の引っ張り合いはするなとあれほど──」

「よく聞きなさい、誰が暗黒樹を仕留めたかによって、今後訪れるであろう魔族と人間との話し合いの中での力関係が大きく変わってくるわ。だから……アンタやマナが望む天下を引き寄せる為に、何が何でも奴だけはアンタが仕留めなさい!!」


 ヨミの言葉にガロウ、キサイ、レムのすけも頷く。


「くっ、だが……俺は奴に生命力を吸われて体に力が入らねぇ。お前らだって傷は浅くないだろ……今出て行ったところで、奴を仕留めるどころかアイツらの邪魔にしか……」


 それを聞いたヨミは妖しく微笑んだ。



「……私に、とっておきの策があるわ」


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