凶影、姿を現す
259-①
荒々しく、叩き付けるように振り下ろされた一撃は、見事に暗黒樹の核を捕らえた。
接触面から激しく火花を散らしながら、ネキリ・ナ・デギリの刃が徐々に核に食い込んでゆく。
影光は両腕に力を込め、体重をかけて暗黒樹の核を切断しにかかった。
「この……くたばれぇぇぇぇぇっ……ぐうっ!?」
「か、影光!?」
「カゲミツ!!」
「影光さん!?」
「影光!!」
暗黒樹の核が新たに生やした太い触手が……影光の腹部を深々と貫いた。
愕然とする四天王に影光は笑いかけた。
「……オイオイ、お前ら忘れてんじゃねーか? 影魔獣の肉体を持つこの俺に……こんなチンケな攻撃が……効くかあああああああああっ!!」
影光は力を振り絞り、腹に突き刺さった触手ごと、ネキリ・ナ・デギリを地面まで斬り下げた!!
次の瞬間、悲鳴にも似た甲高い音を立て、暗黒樹の核が爆裂し、影光と四天王は爆風によって吹っ飛ばされた。
巻き上げられた土煙が核の姿を覆い隠す。
「くっ、影光!! 暗黒樹の核はどうなった!? 仕留めたのか!?」
「おいバカやめろガロウ!? フラグを立てんじゃ──」
“ぞくり”
影光の背筋を悪寒が走り抜けた。
“ぞくり”
バカな……確かに手応えはあった。それなのに……核の気配をまだ感じる。いや、それどころか、先程より気配が強くなっている。
危険を感じた影光は立ち上がってネキリ・ナ・デギリを構えようとしたが……ガクリと膝を着いてしまった。
〔どうした、我が相棒よ!?〕
「何だ!? 力が……入らねぇ……!?」
影光は焦った。まさか、さっき腹を触手で貫かれた時に、生命力を持って行かれたのか……!?
“ぞくり……ぞくり”
土煙の向こうからゆっくりと気配が近付いてくる。そして……それは影光達の前に姿を現した。
「白い……影魔獣……!?」
それは『雪のように』とか『雲のように』という言葉では到底表す事の出来ない、まるでそこだけ人の形に空間が切り取られたと錯覚してしまうほどの純白……いや、
白い影魔獣は影光達のいる方向に右手を向けた。
「……!!」
五本の指がそれぞれ一本ずつ、影光達に向かって伸びた。
影光は全身に力が入らないながらも、咄嗟に地面を転がった。直後、白の影魔獣の人差し指が影光のいた場所を通過した。
「野郎っ!! 皆、無事か……レムのすけ!?」
ガロウ、キサイ、ヨミの三人は咄嗟に身をよじって攻撃を回避していたが、素早い動きが不得意なレムのすけは攻撃を回避する事が出来ず、脇腹に影魔獣の指が突き立っていた。
「グ……グオオオオオッ!!」
レムのすけは刺さった触手を引き抜くと、自慢の怪力で引き千切ったが、白の影魔獣はすぐさま千切られた指を再生させた。
「大丈夫かレムのすけ!!」
「グゥ……ダイ……ジョウブ……シンパイ……スルナ」
表面が硬い岩石に覆われたレムのすけの体をああも容易く貫通するとは……!!
焦る影光の視線の先では、伸ばした指を一旦戻した白の影魔獣が、再び影光達に右手を向けた。
白の影魔獣の五指が影光達を刺し殺すべく、鋭く伸びる。
ダメだ……回避出来ない!!
疲労の蓄積と戦闘で負ったダメージによって満足に動けない影光達は攻撃を回避出来ない事を悟った……だが!!
「ブラックキングナックル!!」
「火神穿影槍!!」
「水神驚天動地!!」
「風神弩!!」
「地神剣盾!!」
影光達の前に飛び込んで来た五つの影が、影光達に迫る指を叩き落とした。
「お前達は……!!」
駆けつけた五人は、高らかに名乗った。
「悪を滅する黒き竜!! フリード=ティンダルス!!」
「平和を守る赤き鷲!! クレナ=レディーグル!!」
「正義を守る青き鮫!! ミナハ=ブルシャーク!!」
「未来を守る黄色の豹!! キクチナ=イェロパンサ!!」
「……ええっ!? お、おらもやらねばなんねぇのか!? えっと、その……む、無敵の赤ちゃんオオカミ!! アルジェ=シルヴァルフ!!」
「「「「「天照武刃団……参上ッッッ!!」」」」」
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