天驚魔刃団、ブチかます


 258ー①


 辺り一面、瓦礫がれきの山と化したソウザン城の敷地を影光は駆けた。


「オラァ!! どけどけーーーっ!!」


 立ち塞がる敵を片っ端から斬り伏せながら、ひたすらに足を動かす。


 周囲に視線をると、あちらこちらで魔王軍の兵と王国軍の兵が互いに助け合いながら、暗黒樹の核に取り込ませないように影魔獣や影魔獣の入った『実』を破壊している。ナジミの姿は見当たらない。


 再び視線を正面に戻した。異様な気配はどんどん強さを増している……ナジミの事も気掛かりだが、一刻も早く暗黒樹の核を破壊しなければ……とんでもない事になる。


 影魔獣としての勘……いや、確信が影光を突き動かす。


 そして影光は、核のある場所まで辿り着いたのだが……


「グヌゥ……」

「グ……グォ……」

「くっ……これは……計算外です」

「うぅ……この私が……」

「ガロウ!! レムのすけ!! キサイ!! ヨミ!!」


 そこには、倒れた無数の兵士達と、全身に傷を負い、肩で息をする天驚魔刃団・四天王の姿があった。


 ガロウ達が対峙しているひしゃげた球体は不気味な光を放ちながら、その表面に無数に生えた光の触手をうごめかせている。


「大丈夫かお前ら!?」

「……フン、当然だ!!」

「グォッ!! オレ……ハ……マダマダ……タタカエル!!」

「影光さんが来てくれれば、勝てる確率はかなり上がります!!」

「あんなの私一人でも余裕だけど……特別に手伝わせてあげるわ、感謝なさい!!」

「来るぞ影光!!」


 無数の触手が影光達に襲いかかる。


 ネキリ・ナ・デギリを振るい、迫り来る触手を斬り払いながら前進を試みたが、数が多過ぎて接近出来ない、手傷を追っているガロウ達も、攻撃をさばくので精一杯だ。


「ちっ、一旦離脱しろ!!」」


 影光達は核と距離を取り、巨大な瓦礫の裏側に集結した。


「ダメだ、触手の数が多過ぎる……!! 援軍を呼ぶか、影光?」

「いえガロウさん、無駄に犠牲を増やすよりは、これ以上核を再生させない為に周辺の影魔獣を排除してもらった方が効率的です」


 キサイとガロウのやりとりを聞いていた影光が手を挙げた。


「俺に作戦がある、俺達5人の力を合わせた攻撃だ!!」


 影光は四天王に作戦を伝え、五人は行動を開始した。


 まずは、影光達が隠れた瓦礫の裏側から多数の鬼一族の戦士が飛び出した。キサイの幻術により生み出された幻影である。

 暗黒樹の核が突如として現れた幻影の鬼達目掛けて四方八方に触手を伸ばす。


「グオオオオオーーーーッッッ!!」


 そして、それにより核を守る触手の密度が下がった機を逃さず、レムのすけが両手の風月を盾にしながら突進する。


 暗黒樹の核は手の空いている触手を集中してレムのすけを止めようとしたが、キサイの放った囮の迎撃にかなりの数の触手を分散させてしまったせいで、完全には突進を止め切れない。


「イマダ!!」

「グルァァァッッッ!!」

「任せなさい!!」


 レムのすけの巨体の背後に隠れていたガロウとヨミが左右に飛び出し、触手を排除しながら前進する。


「影光!!」

「行きなさい!!」

「応ッッッ!!」


 キサイが防御を薄くし、レムのすけが押し退け、そしてガロウとヨミが斬り開いた道を、レムのすけの背後から飛び出した影光は駆け抜け、核の眼前まで接近した。


 高々と振り上げられたネキリ・ナ・デギリの刀身を妖しい光が包み込む。 


〔行くぞ我が相棒よ!! ハイパーエクストリーム……〕

「最強マキシマムデストロイスラァァァァァッシュ!!」


 渾身の一撃が、暗黒樹の核に振り下ろされた!!


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