残党、現る
241ー①
「お前……唐観武光だな?」
「ち、違います!! あっしは
「嘘を吐くなッッッ!!」
「はい!! すいませんッッッ!!」
即答の世界記録保持者になれる程のタイムで武光は嘘を吐き、即バレのワールドチャンピオンになれる程のタイムを叩き出して武光の嘘はバレた。
武光は右手に握ったイットー・リョーダンをバレないように少しだけ動かし、刀身を鏡代わりにして、背後に立つ相手の顔を確認した。
武光は相手の顔に見覚えがあった。自分の背後に立つ男女は、影光率いる天驚魔刃団や、教皇ヴアン=アナザワルドとその手下共と三つ巴の乱闘をしていた場所で、顔面をボコボコにされてぶっ倒れていた男と、背中に斬り傷を負って倒れていた女だ。
乱戦の最中、ナジミが癒しの力を使って傷を治療し、その場から退避させていたのを視界の端で捉えている。
「お前らは……ボロ雑巾1号・2号!!」
「だ、誰がボロ雑巾1号・2号だ!! 我こそは……暗黒教団六幹部が一人、《聖勇者》のエイグ=インタック!!」
「同じく、暗黒教団六幹部が一人、《聖賢者》のヒノア=ラタイナ!!」
どちらも暗黒教団のロングコートを着用していたので教団の関係者だろうとは思っていたのだが……まさか幹部だったとは。
武光は背後のエイグとヒノアに声をかけた。
「おい、お前ら。しょうもない事しとらんで手ぇ貸せ。あの黒い
「黙れ!! 暗黒教団の聖勇者たる私に指図をするな!!」
武光は、背後から自分の右肩に乗せられているエイグの剣にチラリと視線をやると、小さく息を吐いた。
「暗黒教団はもう閉店や閉店!! ……シルエッタ、お前からもコイツらに何とか言うたったらどうや?」
「え……なっ!? しまった!!」
武光は顎で右斜め前を示し、それに釣られてエイグが武光の示した方を向いた瞬間、武光は素早く身体を反時計回りに反転させエイグの背後を取った。
「わはははは!! 俺の小芝居にまんまと騙されよったな!! これぞ悪役殺法……《あっち向いてホイ》や、大人しく──」
“ごっ”
武光はエイグの背後をとったものの、今度はヒノアによって、背後から後頭部に杖を押し当てられてしまった。
「エイグさんを離しなさい……!!」
「あっ、あんな所にシルエッタが──」
「二度も同じ手に乗るかっ!! エイグさんを離しなさい!!」
だが、ゲス悪役モードの武光は一歩も引かなかった。
「あぁん!? お前こそ俺から離れろや、さもないと……コイツの金○を握り潰す!! ククク……どうや、想像するだけで地獄の苦しみやろがい!?」
武光は口の端を吊り上げて凶悪な笑みを浮かべたが……
「私は女なので分かりません!!」
「あっ、そっスね……」
「良いからエイグさんを離しなさい!! 頭を吹き飛ばしますよ!?」
あかん、手詰まりやん……と、武光が慌てまくっていたその時!!
「きゃっ!?」
背後からヒノアの悲鳴が聞こえた。武光が慌てて振り向くと、ヒノアが暗黒樹の根に捕まっている。
「ひいいいいっ!!」
ヒノアは悲鳴を上げた。
武光がエイグを押しのけ、剣を振りかざしながら突撃してくる。逃げようにも、暗黒樹の根が腰にキツく巻きついて動けない。
「うおおおおおっ!!」
「ひぃぃぃっ!!」
斬り殺される!! そう思ったヒノアはキツく目を閉じたが、次の瞬間に感じたのは、痛みではなく体が軽くなる感覚だった。
「……?」
ヒノアが恐る恐る目を開けると……そこには、先程まで自分を捕らえていた暗黒樹の根を叩っ斬った武光の姿があった。
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