聖勇者、狂乱する
242-①
「大丈夫かいなオイ!?」
武光はヒノアを助け起こした。
「うう……どうして私を助けたの?」
「何でって……おもっくそ捕まっとったやん自分」
呆れたように笑う武光をヒノアは
「私は暗黒教団の幹部なのよ!?」
「おう、奇遇やな。俺は
「え……あっハイ…………いや、そうじゃなくて!!」
思いもよらない返しに、ヒノアはツッコんだ。
「貴方と私は敵同士なのよ!?」
「うるさいなー、目の前で人が襲われとったら普通助けるやろが」
「何が狙いなの!? 言いなさい!!」
「おまっ!? ごちゃごちゃごちゃごちゃと……面倒臭い奴っちゃなぁ!?」
「何の理由も無しに敵を助けるハズが無いわ!!」
「あーハイハイ。ほんなら助けた理由は『お○ぱい大きいから』でええか?」
「んなっ!?」
ヒノアは思わず胸元を両腕で隠した。
「ななな何と下品な!?」
「そんなもん、
「ぐぬぬ……」
「さぁどいたどいた!! 俺は……
ヒノアはたじろいだ。目の前の男は、ヘラヘラしているように見えて、目がまるで笑っていない、邪魔をするなら容赦はしない……そういう目だ。
無意識の内にヒノアは
「そうはさせんぞ、貴様!! 暗黒教団の聖勇者として貴様を斬る!!」
武光の前に聖勇者エイグが立ちはだかった。
「おいおい……お前ら俺が助けるまで
武光の言葉にエイグは肩を震わせた。
「……嫌だ」
「は?」
「嫌だぁぁぁぁぁっ!!」
エイグは、漆黒の刀身を持つ剣を振りかざして武光に突進した。
「ちっ!!」
武光は、脳天目掛けて振り下ろされたエイグの剣を半身になって躱すと同時に、柄頭でエイグの額をぶん殴った。しかし……
「ぐっ……ぐぉあああああっ!!」
エイグは大きく頭をのけぞらせたが、獣のような咆哮を上げ、すぐさま反撃してきた。
武光は、相手の戦意を喪失させる為に、エイグの剣の刀身をイットー・リョーダンで “すん!!” と斬り飛ばしたが、影光が使っていた
武光は焦った。恐らく剣の腕は自分の方が少し上だろう……だが、相手には『絶対にお前を殺す!!』という気迫があった。
強い気迫というものは時として実力差を覆す。今まで幾多の厳しい戦いを気迫で乗り越えてきた武光はそれを知っている。
こういう場合の選択肢は主に3つだ。
一つは圧倒的な実力差で
もう一つはこちらも気迫で押し返す……だが、これは相手と同じく『絶対に殺す!!』という覚悟が必要になる。しかしながら、武光の『無闇に人は殺さない!!』という決意は『殺す覚悟』の何倍も強く、『殺す覚悟』を許さない。
そうなると、後は最後の選択肢しかない。それは……相手の気力を削ぐ事だ。
「動くなこの野郎!!」
「きゃあっ!?」
武光はエイグの横薙ぎを後方に跳んで回避すると、そのままヒノア目掛けて突進した。
悪役歴の長い男である。ヒノアの背後に回り、首筋に剣を突きつけて盾にするまでの外道ムーブには、一瞬の
ヒノアを盾にした武光が、悪役感満載の笑みを浮かべ、荒々しく声を張り上げる。
「おうおうおう!! 聖勇者さんよぉ、お仲間の命が惜しかったら武器を捨てな!! さもないと……コイツのお○ぱいを揉みしだく!!」
「はぁっ!? 死ね、このケダモノ!! エイグさん助け──」
「そうだ……死ね!! 唐観武光ぅぅぅ!!」
「おまっ!? 嘘やろ!?」
エイグが、剣を腰溜めに構え、人質もお構い無しに突っ込んできた。
「危ない!!」
武光は、串刺しにされそうになったヒノアを横に押し退け、自身も攻撃を回避しようとしたが、左の上腕をエイグの剣が
「ぐうっ!?」
傷は浅い……が、左腕に力が入らない。無理に力を入れようとすると、痺れるような感覚と共に、傷口から血が
「死ねっ!! 死ねぇぇぇぇぇ!!」
あかん……マジでヤバイ!! 焦る武光だったが……
「光術……退魔光弾!!」
突如飛来した光球がエイグを吹っ飛ばした。
「大丈夫ですか、武光殿!!」
「ヴァっさん!?」
リヴァルが 現れた!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます