斬られ役(影)、決断を迫られる
234-①
「ウオオオオッ!! 行くぜ相棒!!」
〔うむ!!〕
「超赤熱ッッッ……」
〔ファイヤーヒート斬り!!〕
城外に飛び出した影光は迫り来る影魔獣の群れを、炎を纏った魔王剣で片っ端から斬り倒して前進していた。
「影光ーーーっ!! イノシシ捕まえたわよーーー!!」
「は、離しなさい!! と言うか、誰がイノシシだ!!」
影魔獣との戦いを繰り広げる影光とネキリ・ナ・デギリの頭上を、一足先にソウザン城へと向かったヨミが飛び去った。アナザワルド王国第三王女、ミト=アナザワルドを抱き抱えながら。
「よし……!! 後は……!!」
どこだ……どこにいる!!
影光は必死でナジミの姿を探した、そして……
「見つけた!!」
影光の視線の先では、転倒しているナジミと、ナジミを守る為に、城の外壁を突き破って飛び出してくる無数の木の根をイットー・リョーダンで斬り払い続ける武光、そして超武刃団の姿があった。
「くそっ!! 次から次へと……しまった!?」
武光の斬撃を掻い潜った一本の木の根が、ナジミに背後から巻き付こうとしていた。
「させるかぁーーーっっっ!!」
すんでの所で、影光はナジミに迫っていた木の根を逆袈裟に斬り飛ばした。
「あ、貴方は……武光様の……!!」
「大丈夫か!?」
「は……はい、ありがとうございます」
影光はナジミを助け起こすと、魔王城の方に視線をやった。
「ナジミ!! 俺と一緒に来い!! 魔王城でここから離脱する!!」
「分身……!! お前か、ミトを
「ま、待て!!」
仲間達に指示を出そうとした武光を、影光が制止したその時だった。
「ホン・ソウザンの住人達よ!!」
魔王城の方から拡声装置によって、大きな声が響き渡った。それは先程ヨミによって魔王城へ連れ去られてしまったミトの声だった。
「私はアナザワルド王国第三王女、ミト=アナザワルドです。今から言う事をよく聞くのです!! 外周区の住人は、今すぐ最寄りの城門から街の外に出て、出来るだけ遠くに避難しなさい!! 城門から遠い中央区の住人は今すぐ魔王城内に退避するのです!! 安心しなさい、ミト=アナザワルドの名において、貴方達には指一本触れさせません!!」
放送を聞いた影光は親指で背後にそびえる魔王城を指差した。
「聞いたろ!? この街の住人達を出来る限り収容して魔王城でここから離脱する!!」
「お前、街の人達を誘導する為にミトを……?」
「ああ、アイツは姫様で敬愛されてるし、人を導く力を持っているからな。出来ればナジミも一緒に連れて行ってやりたい所だったんだが……」
それを聞いたナジミは武光の背後にササッと隠れた。影光は地味に傷付きつつも話を続けた。
「こっちも怪我人続出で、人間を抱えて飛べるほど体力が有り余ってる奴がヨミしかいなかったんでな。それに……お前を先に魔王城に連れて行っちまったら城から抜け出そうとして大暴れするのは目に見えてるし……だろ、ナジミ?」
「う……」
影光に笑いかけられたナジミは恥ずかしそうに俯いた。
「それに、ミトは民を救う為ならどんな要求でも呑むだろう、お前らも大事な仲間が魔王城に連れて行かれたとなれば、黙っていても魔王城へと向かう……違うか?」
「チッ……姑息な真似を」
「まぁ、元になった人間がセコイから仕方ないな。安心しろ、ミトは俺にとっても可愛い妹分だ、身の安全は保証する。だから……お前らも住民の誘導を手伝え!!」
影光と真っ直ぐに視線を交わしていた武光は、ため息を吐いた。
「はぁ…………しゃーない、超武刃団!! 住民の誘導を手伝ったれ!!」
「分かったよアニキ!! 皆、行くぞ!!」
武光の指示によって超武刃団の面々は、住民を暗黒樹の脅威から守り、魔王城へ誘導するべく、街中に散って行った。
「さて……俺達も行くぞ、ナジミ!! あと……ついでに本体!!」
「ついでって言うなや!? って……うおおおっ!?」
地面から飛び出した黒い木の根が武光の胴に巻き付いた。
「くっ!?」
武光は慌ててイットー・リョーダンを振り下ろそうとしたが、今度は城の外壁を突き破って伸びて来た根が武光の右手に絡みついた。
「ぐうっ!?」
「武光様!!」
城の方に引きずられてゆく武光を追いかけようとしたナジミにも、無数の根が迫る。
「危ねぇっ!!」
影光がナジミの前に割って入り、ネキリ・ナ・デギリを振るってナジミに迫る無数の根を斬り落としたが、木の根は次から次へと飛び出して来る。このままでは自分達も危ない。
「チッ、キリがねぇ……!!」
焦る影光に対し、武光とナジミは同時に叫んだ!!
「ナジミを守れ!!」
「武光様を助けて!!」
「頼んだぞ……分身!!」
「お願いです……お願いですから!!」
「…………………………くっ!!」
決断を迫られた影光は、一瞬の逡巡の後、ナジミを担ぐと魔王城に向けて全力で走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます