斬られ役(影)、救出に向かう
223-①
敵の接近を知らせる鐘の音を聞き、影光が遠眼鏡で窓の外を見ると、城の方から暗黒教団の信徒と思われる集団がワラワラと出てきた。
だがどうも様子がおかしい……あれは、こちらに攻撃を仕掛ける為に城から打って出てきたという感じではない。
「……逃げ出してるのか?」
信徒達に続いて城の使用人やメイドなど明らかに戦闘員ではない連中までもが次々と城を飛び出して来るのを見て、影光の疑念が確信に変わったその時だった。
「む……あれはっ!?」
城から飛び出してきた一団の中に……
「ナジミ……無事だったか!! ミトや先生達も……!!」
影光は安堵の溜め息を吐いたが……
「ん!? 何だありゃ!?」
城の壁を突き破って巨大な木の根が飛び出し、周囲の人間を次々と捕らえては城内に引きずり込んでゆく。
「くっ、こうしちゃいられねぇ!! お前ら……どけ!!」
「待て、何をするつもりだ!? 影光!!」
ガロウは、部屋から出て行こうとする影光の肩を掴んで押し留めた。
「魔王城の城門を開けて……逃げて来る奴らを収容する!!」
それを聞いた四天王は気色ばんだ。
「影光、何を言い出すんだこのバカが!!」
「ゴガァ……バカナ……コトハ……ヤメロ……!!」
「そうですよ影光さん、何を馬鹿な事を……」
「大馬鹿よ大馬鹿、知ってたけど!!」
「う、うるせーーーーーっ!! お、お前らなーーーーーっ!! 大阪人は『アホ』って言われるのはいいけど、『バカ』って言われるのは意外と傷付くんだからなーーーーーっ!?」
「「「「知るか……この大バカヤローーー!!」」」」
ギャースカボコスコと子供のケンカのような取っ組み合いを始めた影光と四天王達をよそに、マナは沈思黙考し、そして言った。
「…………師匠の言う通りにしましょう」
意外な言葉に四天王達はマナの方を見た。
「オイ、魔王の娘!! お前まで何を言い出すんだ!?」
ガロウの質問に対して、マナは冷静に答えた。
「ガロウ将軍、ここでこの街の人間を救っておけば、来たるべき人間達との交渉において有利に働くかもしれません、それに……いざとなればこちらの要求を飲ませる為の人質にする事も出来ましょう」
「ぬぅ……そう言う事なら」
「しかし、人間達がこの城に大人しく収容されてくれるでしょうか?」
キサイの当然の疑問に影光が答えた。
「そこは俺に考えがある……ヨミ!!」
「えー? 嫌よ、面倒臭い」
「まだ何も言ってねえだろ!?」
「私には読心能力があるんだからアンタのやろうとしてる事くらい分かるっての……ちょっ、コラ!! 頭の中で『シ○イニング』を流すな!! ハァ……わ、分かったわよ、やれば良いんでしょ!! やれば!!」
「流石はヨミ!! よっ、絶世の美女!! 立てばク○ンガ、座ればヘ○ラ、歩く姿はビ○ランテ!!」
「ゲテモノばっかじゃねーか!?」
影光の脳内に浮かんだ巨大な魔獣(?)のイメージを見たヨミは思わずツッコんだ後、足早に部屋を出て行った。
「よし、それじゃあキサイは住人達の収容準備!! ガロウとレムのすけはまだ戦える奴を連れて、城外に打って出て敵を足止めしろ、フォルトゥナとヨミ様を愛でる会は引き続き城の守りを固めろ、良いな?」
「うん、分かったよ団長!!」
「「「承知!!」」」
「よし、全員行け!! 俺もすぐ行く!!」
指示を受けた仲間達が部屋を出て行った後、影光はマナに笑いかけた。
「魔王の娘ってのも厄介だな、何をするにもそれっぽい理由付けをしなきゃならん」
「はい、本当は『危険にさらされている罪なき人々を放っておけない』ってだけなんですけどね?」
「マナ、申し訳ないが、シルエッタは牢屋で厳重に閉じ込めさせてもらう、良いな?」
「はい……」
影光は、衛兵を呼びシルエッタを連行させた。
「さて……行くぜ、ネキリ・ナ・デギリ!!」
〔良かろう、我が相棒よ!!〕
影光は駆け出した……最愛の女性を救う為に!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます