斬られ役(影)、暗黒樹から逃げる
235-①
「離して!! 離して下さい!!」
「喋るな、舌ぁ噛むぞ!!」
ナジミを肩に担ぎながら影光は必死で駆けていた。
背後から無数の根が迫っている、足を止めるわけにはいかない。そこら中で悲鳴が聞こえる。街の人々が次々と暗黒樹の根に捕まり、取り込まれているのだ。
「ハァ……ハァ……うおっ!!」
前方の石畳を突き破り、鎌首をもたげる大蛇の如く、暗黒樹の根が飛び出した。
「くそっ!!」
影光は咄嗟に進行方向を変えようとしたが、その先の石畳からも根が飛び出し、二人の行く手を遮った。
「ゲッ!?」
〔マズいぞ我が相棒よ、どうやら囲まれたようだ……〕
「くっ……マジか」
影光達は次々と地面を突き破って現れる暗黒樹の根に包囲されてしまった。
〔我が相棒よ……その肩の女を捨てろ〕
「そうです、私を下ろして下さい!! 武光様を助けないと……!!」
「うるせーぞお前ら!! 却下!!」
ネキリ・ナ・デギリの提案とナジミの要求を、影光は即座に拒否した。
〔何故だ!! その足手まといさえいなければ、この程度の敵など容易く蹴散らせるであろう!?〕
「
「ちょっと!? 貧乳とは言ってないでしょう!? 貧乳とは!?」
〔ぬぅ……我が相棒よ、どうあっても、その女を守ると……?〕
ネキリ・ナ・デギリの問いかけに、影光は力強く答えた。
「誰よりも!! 何よりも!! いつまでも!! どこまでも!!」
相棒の答えに、魔王剣は苦笑せざるを得なかった。
〔全く……面倒な男と《たっぐ》とやらを組んだものだ〕
「ヘッ……褒めてくれるな、照れるじゃねーか」
強がる影光だったが、内心焦りまくりだった。
正面の暗黒樹の根が影光達に迫る。
(避けきれない!!)影光がそう思ったその時……
“ドスッ!!”
突如として飛来した一筋の矢……いや、それは『矢』というにはあまりに太く、長く、もはや細身の手槍とすら言える一矢が、暗黒樹の根を地面に縫い付けた。
「こ……これはっっっ!?」
「今の内だ、急げ!!」
影光は走りながら、声の主を探し、そして見つけた。前方、三階建ての民家の屋上で巨大な弓を構えた堂々たる武人を。
「こっちだ、影光殿!!」
「あれは……カクさん!?」
リュウカクが 現れた!!
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