両雄、激突する(前編)
60-①
こっそりその場から逃げ出そうとしていた武光達の前に、影光が立ちはだかった。
「どこに行こうってんだ、本体!!」
「おおお……お構いなく!! 何か立て込んでるみたいやし……って、シルエッタがおらへーーーん!?」
少し目を離した隙に、シルエッタは忽然と姿を消していた。おそらく、操影刀の心臓部であろう謎の宝玉がギッシリ詰まっていた壺も消えている。
「あ……あのやろーーーーー!!」
「今はあんなウ◯コ聖女はどうでも良い……そうだろ?」
「み、見逃してくれへん? ……あかん?」
「はぁ……お前、それでも俺の本体かよ……ま、逃げたきゃ逃げろよ。但し……吸命剣は置いていけ!!」
ビビりまくりの武光を見て、呆れて溜め息を
「…………それは出来ん!!」
影光の目を真っ直ぐ見据え、武光は影光の要求をつっぱねた!!
「この剣は……吸命剣は、フリードをの命を救う為に必要なんや……渡すわけにはいかんっっっ!!」
武光の返答に対し、影光はニヤリと笑った。
「そうか……だが、俺にも仲間との約束がある。どうあっても返さないと言うのなら……殺してでも奪い返すッッッ!!」
〔仕方ない、やろう……武光〕
「くっ……」
イットー・リョーダンに
「影光ーーー!! 表の雑魚共は皆殺しにしたわよー!!」
ヨミを先頭に、影光がぶち破った壁の穴を通って、天驚魔刃団の面々が現れた。
ヨミの姿を見た武光は、ヨミに話しかけた。
「おう、ヨミ!! ちょうどええところに!!」
「ゲッ、武光……!?」
「すまんヨミ、悪いんやけど、お前の吸命剣しばらく貸してくれ!!」
ヨミは 武光の思考を 読んだ。
「……はぁぁぁぁぁ!? 何で私が縁もゆかりもない人間の命を救うのに手を貸さなきゃなんないのよ!!」
「そんな事言うなや、俺とお前の仲やろが!?」
「武光様……それ、どういう意味ですかっ!?」
ナジミにギロリと睨みつけられて武光は萎縮した。
「と、とにかく頼むって!!」
「絶対やだ!! 死ねバーカ!!」
「そう言うなって!? ほら……エルフの里での俺との日々を思い出せって!!」
武光にそう言われたヨミは、静かに目を閉じ、三年前……エルフの隠れ里、《カライ・ミツナ》で武光と共に過ごした日々に思いを
「………………………………………………………………オエエエエエエエエエ!!」
「大変だ影光、ヨミがめちゃくちゃ吐いてるぞ!?」
「しかも、物凄く
「ゴァムド……ヨ……ミ!?」
慌てる天驚魔刃団だったが、ヨミはなんとか立ち直った。
「はぁ……はぁ……この……クソがぁぁぁぁぁ!! アンタにだけは絶対渡さない!!」
「……だとよ本体。これが最後の警告だ。妖月を返せ!!」
「……断るッッッ!!」
武光の返答に、影光は小さく息を吐いた。
「そうか……なら仕方ねぇ。表に出な、本体!!」
「上等や、分身!!」
武光と影光は、それぞれの仲間達を引き連れて、工房の外に出た。
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