斬られ役(影)、回り込む


 59-①


 シルエッタを追い詰めたかに見えた武光達だったが、そこに突如として影魔獣・影光が乱入した。


「実験体……14号!!」


 シルエッタは影光を激しく睨みつけた。


「あん? うん子じゃねーか、こんな所で何してんだ?」

「それはこちらの台詞です。私の影魔獣軍団はどうしたのです!?」


 シルエッタの問いを、影光は鼻で笑った。


「あんなクソ雑魚共が俺達、天驚魔刃団を止められるとでも?」

「ざ、雑魚ですって……アレは……見た目こそただの剣影兵ですが、実験体13号を複製したものなのですよ、並みの剣影兵よりはるかに強力──」


 シルエッタの言葉を遮るかのように、影光はガックリと肩を落とし、どデカい溜め息を吐いた。


「はぁ〜〜〜ダメだな……まるでダメだ」

「な、何ですって……?」

「名前だけじゃなくて、性格もウ◯コ、その上……考える事までウ◯コとはな……お前、ウ◯コまみれじゃねーか!!」


 ウ◯コ呼ばわりされたシルエッタは影光に憎悪のこもった視線を向けた。


「え……影魔獣の分際で……このシルエッタ=シャードを侮辱する事は許しませんよ!!」

「ケッ、何が『実験体13号を複製した』だ……お前は二重にヘマやらかしてんだよ!!」

「ヘマですって……」


 意味が分からないと言わんばかりの表情で困惑するシルエッタに、影光はドヤ顔で語る。


「教えてやるよ……『量産型はオリジナルより弱い』コレ、ガ◯ダムじゃ常識な!! あと、『再生怪人は初登場時より大幅に弱体化する』コレ、特撮じゃ定番な!! そんな二重に弱体化した影魔獣なんぞで……この俺を止められるものかよ」

「な、何を訳の分からない事を……!!」

「ま……お前はもういいや。とっとと失せろ……邪魔だ」

「な、何を勝手な……」


 ……邪魔だ。影光はもう一度、そう呟くと、シルエッタに手をかざした。すると次の瞬間、シルエッタは胸を押さえて苦しみだした。


「く……ううっ!?」

「今はお前に用は無い。そして、本体さん達よ……お前らはどこに行こうってんだ? あぁん!?」


 影光はこっそり逃げ出そうとしていた武光達を見咎みとがめた。


「ちっ、バレたか……野郎共、ずらかれーーーっ!!」

「おっと、そうは行くか!!」


 武光達は 逃げ出した!

 しかし 回り込まれてしまった!


 武光の行く手に立ちはだかった影光は、影醒刃の切っ先を武光に向けた。



「逃しはしない。ヨミの妖月……返してもらうおうかッッッ!!」

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