第12話 駅ビルと服、時々おうどん
エリカと彼女は電車を乗り継ぎ、県内の駅ビルに到着した。
彼女らの周りは何も無い為、学生諸君は電車賃を払ってまでわざわざ此方(こちら)まで足を運ぶのが一般的なのだ。
土曜日であるからか、客層が若く、大勢の人々が散布している。
「うわぁー人たくさん!」
彼女は可愛らしいポシェットをぶら下げて走り回ってはしゃぐ。
年相応のその姿にエリカも
「凄い人だね!...あ、まてー!」
と、彼女を追いかける。
道行く人がゾロゾロと通る駅ビルの目の前で二人ははぐれないように手を繋ぐ。
「エリカちゃん!服見に行こ!」
彼女は笑顔でエリカの手を引く。
彼女のはしゃぐ姿を見てエリカは笑いながら、
「うん!」
と彼女の方に駆け寄って、一緒に中に入って行った。
流石県内一デカい駅ビル、何でも揃ってる。
「ねぇ!この服可愛いよ!」
彼女ははしゃぎながら、子供服をエリカに合わせる。
「似合う?」
「うーん...ちょっと違うかなぁ...」
彼女はそういいながら他の服も選ぶ。
エリカは駅ビルには来た事が数回しかない。
彼女の両親の仕事が忙しいのが原因で、いつも家に居るか彼女の家に遊びに行く、この二択だったからだ。
「うーん、こっちの方が似合うかなー?」
「うーん。エリカちゃんは...これどう?」
彼女が手に取ったのは、黒を基調としたゴスロリ風の、ワンピース。
「いやいや、これは流石に...」
そういいつつ、エリカは取り敢えず着てみることにした。
彼女から受け取ったエリカは早速、試着室に籠(こも)る。
「どーう?着たー?」
「う、うん...」
エリカは試着室のカーテンを開ける。
「おぉ...結構可愛いよ!」
「そ、そうかな?変じゃない?」
「うん!」
「ありがとう。そうだ、これ着てみたら?絶対ふぅちゃんの方が似合うって」
「えぇ?!...ま、まぁエリカちゃんが言うなら...」
エリカは周りに店員さんや客がちらほら居るのを確認し、彼女を試着室の中に引っ張り込んで、カーテンを閉めて脱ぎ始めた。
彼女は急に引っ張られて戸惑い、周り聞こえる大きな声は出せない為コソコソとエリカに話す。
「え?どうして中に?狭いよ?」
「だってこのワンピース、袖ないから」
脱ぎ終わり、来る時に着ていた私服に着替え終わったエリカは、その服を彼女に着せてみる。
「だ、大丈夫だよ!自分で着替えられるから...」
「遠慮しないでー。ほらほら!」
「キャッ!」
彼女は、エリカに服を脱がされそうになったが、特に抵抗はせずに身をまかせた。
そして着替え終えた彼女を見て
「おお、可愛らしい。お人形さんみたい!」
と褒める。
「え?そうかな?でもこれ...」
袖が無いから外出には向かないと残念そうに自分の腕を見ていた。
「付け袖だってあるし、部屋着でもいいじゃん。買ってあげる!ちょっとまってて!」
「え?悪いよ...ねぇ!」
エリカは白い付け袖を店員に聞いて、どちらも彼女へのプレゼントという事で購入した。
「えぇ...あ、早く着替えないと...」
彼女は私服を手に取って、手際よく服を着る。
彼女が私服に着替え終わった時、エリカが綺麗に赤い包み紙で梱包された、先程の服を持ってきて彼女に渡した。
「仲良くしてくれてありがとう!ってことで。遠くに行ってもたまに着て!本当に似合うから!」
「えへへ、ありがとう...大切にするね」
彼女は受け取ったプレゼントを両手で抱えてぎゅっと胸に押し付けた。
ご機嫌な彼女共に、お昼にする事にした。
「お昼どうする?」
「うどん屋さん合ったよね。それにしようか?」
彼女は下の階を見て、そう答えた。
「あ、手打ちうどんのお店ね!彼処(あそこ)、絶対美味しそうだもんね」
「うん!早く行こう!」
彼女はエリカの手を引き、二人はエスカレーターに乗る。
うどん屋 いちぢく
「いらっしゃいませー!何名様ですか?」
「二人です」
エリカは店員に二本指を立てる。
「ではあちらの席にご案内しますねー」
「ふぅちゃん!いこ!」
「う...うん」
対人恐怖症が入った彼女は、店員の声に怯え、エリカの後ろにずっとくっついて離れなかった。
前の事件がフラッシュバックし、動悸が始まったようで心臓に手を当てて、冷や汗をかいていた。
エリカは頭を撫でながら彼女の手を引く。
「大丈夫大丈夫。怖くないよー。さ、座ろう?」
「エリカちゃん...ありがと...」
エリカは彼女を優しく先導してあげる。
彼女も信頼してる唯一の幼馴染の言うことに従順な態度を取る。
エリカは、犬みたいだなー...可愛い...と内心思いながら、彼女の行動を見張りながら微笑む。
彼女は相変わらずビクビクと震えているが、少し座った事で楽になったようだ。
「お冷になりますー」
冷たいお水が入ったコップがテーブルに置かれる。
エリカは
「飲もうか...少し楽になるんじゃない?」
と彼女にコップを近づけ、彼女はエリカに飲ましてもらっていた。
幸い、角部屋だった為、このようなカップル行為を周りにさらけ出すことは無かった。
んくんくと、可愛らしく飲み、コップは自然と彼女の手に渡る。
そして彼女は震えと動悸が治まった。
「お水美味しい?」
「うん、美味しい」
「そうかそうか!」
彼女はお水を飲み干して、彼女はコップをテーブルに置き、メニューから本日のお昼を選んでエリカに代わりに頼んでもらった。
「お待たせしましたー」
数分後、出来たてのうどんがやってきた。
ツルツルシコシコ、太くて立派な麺、ダシが強く効いてる拘(こだわ)りの
あるスープ、とても絶品だった。
「ご馳走様でしたー」
「ご馳走様でしたー」
二人はお金を払い、店を出た。
「これから...色々あるかと思うけどさ...これからも頑張ってね。私も頑張るから!」
歩きながらエリカは彼女を奨励する。
彼女は微笑みながら
「エリカちゃん、ありがとう」
といった。
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