第11話 エリカと風夏の甘々な朝食タイム
エリカは夢を見た。
二人の馴れ初め...
家族合同バーベキュー...
海水浴...
水族館に動物園...
沢山の思い出が詰まった夢を見た。
学校とは違う彼女の一面が沢山見えた。
「...んぅ...」
彼女は目覚め、隣を見る。
健やかに眠るエリカの姿を確認し、
「...」
頬にキスをして
「朝だよーエリカちゃんー」
耳元で囁(ささや)く。
エリカは
「...うんん...」
と唸(うな)り、目を擦りながら体を起こす。
「...おはよ...今何時?」
「おはよぉエリカちゃん。今は...」
彼女は可愛らしい掛け時計を見て時間を確認する。
「...7時かな」
「7時かぁ...うん...」
そう言ってエリカは彼女に抱きついて、二度寝に誘う。
「二度寝しよぉー、ふぅちゃぁん」
「ふふ...駄目だよエリカちゃん。朝弱いのは相変わらずね」
彼女は、自分自身に抱きついてくる愛おしいエリカの背中を優しく叩き、苦笑する。
エリカは
「仕方ない...」
と、悲しそうな顔をする。
「折角の土曜日なんだから。ほらこの服可愛いでしょ?」
彼女は自分のタンスに入っていたファンシーな服を一着手に取り、彼女に渡した。
「これ、今日来なよ」
「え?あ、ありがとう...」
エリカはこのような服を買って貰ったことが無かった為、勿論着ることもなかった。
ベッドから立ち上がってワンピースを脱ぎ、そのワンピースは彼女が嬉しそうに受け取った。温もりを感じるとかなんとか。
彼女は渡されたファンシーな服を着てみた。
「ど、どう?」
「いいねいいねぇ!」
彼女は匂いを嗅いでいたワンピースをベッドに滑り込ませ、彼女の服装に感嘆する。
その行為はエリカの着替え終えた瞬間に、俊敏(しゅんびん)に行っていた為、エリカは特に気づくことは無かった。
「エリカちゃん、そういうの似合う!」
「そ、そうかな?」
エリカは褒められた事が単純に嬉しく思い、クルクルと一回転する。
彼女の自室の等身大の鏡に自分を映していた。
微笑みながら後ろ姿を確認したり、肩に掛かりそうなミドルショートヘアのエリカの綺麗な銀髪をふわっと持ち上げて見せた。
そのエリカの可愛らしい仕草がまた、彼女の心をときめかされた様で
「エリカちゃーん!」
と抱きついてきた。
「あはは、よしよし」
エリカは彼女の頭を撫でながら今日の予定を聞く。
「今日はどうするの?」
「うーん。朝からお母さん居ないし、駅ビルにでも行く?」
「ショッピングか!いいね!」
「じゃーきまり!」
彼女はそう言って自分も着替え始めた。
「ねぇ...もう腕...切っちゃダメだよ?」
着替え中にパジャマの上着を脱ぐ彼女。中はブラウスを着ていた為、彼女の手首の自傷行為の傷が嫌でも目に焼き付く。
彼女は、エリカの指摘に若干戸惑うも、
「う、うん...。そうだ...ね」
と、顔を伏せてしまう。
エリカは慌てて
「責めてるわけじゃないからね?綺麗な肌なのに勿体ないから」
とフォローを入れた。
「あはは...ありがと」
彼女は此方(こちら)をちらっと見て、今日着る服を選び始める。
一着選んで自分の体に合わせてみる。
「この服、どうかな?」
「可愛いよ。似合う!」
「ほんと?ありがとー。これにしよっと」
そう言って彼女はピンクを基調としたパーカーを着た。
リビング
二人はリビングに降りる。
テーブルには、目玉焼き、サラダ、たこさんウィンナーが乗ってある皿が二皿、そして食パンとイチゴジャムとバター、和風ドレッシング、牛乳が入ったマグカップが置いてあった。
置き手紙があり、
二人で仲良く食べてね。
と端的(たんてき)に書かれていた。
「あ、お母さんがご飯用意してくれてるよ!」
彼女は、はしゃぎながらエリカを手で引っ張り、席に座ろうと促(うなが)す。
エリカは苦笑しながら一緒に席に着いた。
「美味しそうだね」
「うん!」
彼女らは、食事に向かい
「頂きます」
と手を合わせた。
こんがり焼けたパンに、バターないしジャムを塗りたくるエリカ。
彼女はサラダにドレッシングを掛けて頬張る。
サクッと口の中で奏でる音、そしてエリカはパサパサになった口内に牛乳を流し込む。
「くぅーー!」
冷たい牛乳が喉を通り自分の体の一部になっている事を感じて、思わず声が出てしまう。
フォークでサラダを刺して口に放り込み、咀嚼(そしゃく)してシャクシャクと奏でる音に彼女は恍惚(こうこつ)とした表情で食べる。
サラダの中に入っていたプチトマトの酸味がうまくマッチしていて爽やかな気持ちだった。
二人は目玉焼きを食べようとお互い醤油とソースを手に取った。
「ん?醤油かけるの?」
「え?ソース?」
上から彼女、エリカ。
「え?そんなのかけてったっけ?いつも醤油じゃなかった?」
「エリカちゃん、分かってないね。目玉焼きといったらソースよ。まろやかなコクと甘味が目玉焼きの美味しさを引き立つ事を遂に見つけたの!」
「えぇ?!本気で言ってるの?気でも狂った?」
「エリカちゃんこそ!」
「黄身は甘いから醤油の酸味がとても引き立つの!」
二人は朝から自分たちの好みについて論争し始める。
「醤油って塩辛いでしょ!合わない!」
「それはかけすぎなだけなんじゃないの!」
「そんなことないよ!」
「じゃあ私の食べてみてよ」
「じゃあ私のも食べなよ」
お互いの目玉焼きの切れ端をつつきあう。
エリカはソースのかかった目玉焼きを、彼女は醤油のかかった目玉焼きを。
口に入れた瞬間エリカと彼女は、難しい顔をしていた。
「やっぱりソースは合わないよ!」
「塩辛い!」
「味覚おかしいんじゃないの!」
「そっちこそおかしい!」
お互い、批判しながら目玉焼きをつつく。
ウィンナーを口に放り込み、
「ふふ...」
「あはは...」
零れた。
「なんで落としてるの...」
エリカは彼女の落としたウィンナーを見ながら肩を震わせ笑いを隠せない。
彼女もまた笑いを堪えていた。
「ふふ...わかんにゃい...」
そういって彼女はウィンナーを拾おうと席を立とうとするも、思いっきり転げ落ちた。
「お...いたぁ!」
そのドジっぷりにエリカはとうとう爆発した。
「アッハッハッハッハッ!ひーー!」
甲高い笑い声が部屋中に響き渡る。
「なんで笑うのさ!」
彼女はぶつけたおでこを右手で抑え、立ち上がりエリカをじっと見つめる。
そしてしゃがみウィンナーを拾い、立ち上がろうとしたが
「うぎゃぁ!!」
なんと不幸の連続だろうか...彼女はテーブルの端に頭を強くぶつけてしまい、たこさんウィンナーと共に崩れ落ちた。
その様子を見てエリカは過呼吸を起こしてお腹を抑えた。
「...!!...!!!...!!...!!!ックッ!ハァハァ!」
彼女は怒り、たこさんウィンナーをまたも拾い、上に気をつけて立ち上がった。そしてそのウィンナーを過呼吸を起こして開ききっている、エリカの口に放り込んだ。
「...!おぇ!バッチィ!」
ウィンナーは床に落ちていて小さいゴミがついていた。
すぐに吐き出し、洗い場にちょこんと置いた。
「なんてことを!」
「私を笑った罰よ!」
「だってあれはわざとやってるとしか...ふふふ...」
エリカは思い出してしまい、あの事がツボに入ったようで涙を零しながら笑い始める。その様子を見て不服だった彼女は、エリカの弁慶の泣き所を蹴り入れた。
「ふん!」
「ぎゃっ!」
エリカは変な声を出して崩れた。
彼女はエリカにゆっくると近づく。
「ごめんって!もう笑わないから!」
反省したエリカは彼女に懇願する。
「...仕方ないな」
そう言って席に座り黙々とご飯を食べ始める彼女を見て、安堵(あんど)したエリカは、そそくさと席に座り込んで食べ始めた。
彼女はパンにイチゴジャムを塗って食べ、牛乳を飲み、また齧(かじ)る。
その姿はまるでモルモットの様で、保護欲をそそられたエリカはティッシュをイチゴジャムが、ついた彼女の口元に近づけて拭く。
「ん...ありがと...」
素っ気ない返事が返ってきた。
「まだ怒ってるの?」
「別にぃ。怒ってないしぃ」
付き合いの長いエリカはこれは拗ねているなと確信する。
彼女が拗ねる時は必ず言葉の最後を伸ばしてくる癖があるのだった。
彼女が拗ねた時は長くなる。
「ホント?」
「ほんとだしぃ」
「えー」
エリカはそれ以降黙々と食べ続け、彼女は横を気にしながら、まるで競い合うかの様に食べ続ける。
彼女はエリカに何か言いたげだったが、エリカは黙々と食べ続けている為、何も言えず、拗ねた態度を一貫しようと意地を張る。
数十分後...
「ねぇ...エ、エリカちゃん?」
彼女の心が折れたようだ。
彼女は自分が無視されてしまうと、もう興味が無い、用済みと思われてしまうと、段々と焦り始める。
彼女は意地を張ろうと気にしないように拗ね続けるが、彼女は限界が来ると焦りのピークを迎え、構ってもらおうと寄り添ってくる。
「...」
「エリカちゃーん!ごめんって!」
「...」
最後まで徹底するエリカ。
「お願いだから元に戻ってー」
「...仕方ないなー」
「エリカちゃぁん!」
彼女はとても心が優しく、そして虚弱だ。
まるで兎のような女の子...。
「もう!可愛いいんだから!」
エリカは彼女を抱き寄せる。
「んー!!」
彼女の顔がエリカの胸に埋もれる。
「ぷはぁ!。なんで小学生なのにそんな大きいのよぉ。羨ましい...」
「肩が痛くなるから要らないんだけど...」
「嫌味よ!」
「あはは。好きに揉んでいいのよ?」
エリカは悩殺ポーズ(棒読み)をする。
「じゃあ遠慮なく!!」
彼女は、エリカの胸を揉みしだく。
「イヤン!...あっ...」
エリカは彼女の激しい乱暴な手つきに思わず声を零した。
「ここがええんかー!」
「あーれーお代官様ー(棒読み)」
彼女とそんなこんなで朝食タイムが終わった。
「さて、用意もできたし出掛けますか!」
「うん!」
エリカは軽装に荷物を持って彼女の手を引き、二人は明るい光が差す玄関から一本飛び出した。
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