第4話 異世界書房の仲間たち①
「さて、いろいろ本日ですね隊長!!」
柏崎中学の学食にて、彼女と夏子は二人とも作戦会議をしつつラーメンを頬張っていた。夏子の大きな声で、食事を摂っていた周りの生徒らが我々のグループの方に目線を集めた。
「声!声!...恥ずかしいよぉ...」
彼女は周りに頭を小さく下げ、小さな声で夏子に話しかける。
「ねぇ、本当に行くの?」
「ん?うん」
ラーメンを啜りながら頷く夏子。
「もし、もしだよ?夏子ちゃんが入れなかったら...」
「んー...ごっきゅ...プハァー。あー選ばれし者とか不思議な力がなんちゃらってやつ?大丈夫。他の人に見えなくたって一緒にいるからさ。エリカちゃんだけ入って私が入れなかったら出てくるまで待ってあげるしもしそのまま消えちゃったら...どうしようね」
ラーメンを飲み干し、手紙を再確認する夏子。
「まぁこの手紙主は敵意はないわけじゃん?なら大丈夫よ」
割と深刻なのにお気楽だなぁっと傍観しつつも
「ラーメン冷めるよ」
と指摘され、時計を確認しながら急いで啜った。彼女は元々少食で体も小さかったので残してしまったが夏子が嬉しそうに全部食べてくれた。
教室内
「よし、午後はテスト対策でテス勉!頑張るぞー」
一人でえいえいおーと叫んで手を挙げるその奇行に、またもや周りの目を集める事になった。彼女は仲間と思われたくない一心で目を背ける。
「どうしたのさ」
「恥ずかしくないの?」
「気持ちを顕著に出すのはおかしいかい?」
「おかしいよ」
といいつつもヒーロー基質で誰にでも優しくできるような人格なんだなぁと一人で感心してしまう。
ただ、行動に表すのは世間体の風当たりが宜しくないと思うけど...と彼女は内心思う。
「兎に角テス勉頑張ろうね」
「うん」
教師が来て席座るよう急かす。
「やっとおわったぁー!!」
席に着いたまま手を広げて開放感に溢れる友人を見て彼女は頬が緩む。
「夏子ちゃん頑張ったね」
「んー頭撫でてー」
「よしよし」
夏子がエリカの太ももに頭をおいて、彼女もそれに応じ、頭を撫でてあげた。
夏子は幸せそうに眠りそうになった為、直ぐに起こしてあげた。
「だ、だめよ寝ちゃ」
「んーあーー」
「ほら、行こう?」
「うん...ふぁぁあん...フン!」
夏子は長い長い授業という魔物に監禁されていた為、恐ろしく眠たがっていた。だが気持ちを切り替えまいと自分の頬をバッチーンを叩き何とか起きた。
「よし、起きた」
「うわぁびっくりしたぁ!」
「いこか」
さっきまで眠たがってた夏子は彼女の手を引く。
「わかったわかった」
彼女は苦笑いしながら一緒について行った。
本屋跡前
「!!光がついてるよ!!」
夏子が大はしゃぎで中には入ろうとせずに外から覗こうとスポットを探してる。中を覗くと人間が数人居たようでここで夏子は冒険心を擽られ早く行こうと彼女に促す。
「早く入ろう!」
「凄いテンションね。行こうか」
二人の少女は離れないよう、ぎゅっと手を繋ぎ、二人でドアを開けた。
「あ、いらっしゃいませ」
以前来た時に一番最初に会った店員だ。若い童顔で爽やかな青年。
「あ、先日はありがとうございました」
彼女は彼にペコリとお辞儀する。
「いえいえ。お客様の期待にそぐわない形でお返ししたのは此方の不備です。大変申し訳御座いませんでした」
彼も又彼女にお辞儀をする。
「此方のお客様は初めての方ですね。いらっしゃいませ。どうぞごゆっくりしていってください!」
彼は夏子に笑顔で迎えた。イケメン好きの夏子はハートを奪われたのかいつも騒がしい夏子でも静かに黙り込んで彼を見つめていた。
「?なにかついてますか?」
彼の一言に現実に引き戻された夏子。
「は!...すいません放心しちゃってて。お名前はなんと言うんですか?」
夏子に小さい声で
「なんで従業員さんに名前聞くのよ...変じゃないの」
と言われまさにその通りで顔をトマトの様に真っ赤に染めた。
「も、申し訳ありません。夏子ったら変な事聞いて...」
と言われたが彼は...
「あ、いえ後ほどご紹介に預かるご予定でしたので大丈夫ですよ。異世界書房へようこそいらっしゃいました。私はスウェルと申します」
と名乗り、スウェルは頭を下げた。
「お気付きかとは思いますが異世界の人間です」
「やっぱり!異世界って一体なんですか?」
夏子は現世ではきかない異世界についての興味をしめす。
「うーんこの世界とはかけ離れた、ここが古典的な世界なら異世界は未来的な世界って所ですかね...。この世界は空を飛ぶ交通機関が無いようですし...」
スウェルは本屋の窓から空を眺めた。夕暮れの曇り空、スウェルは
「空気が美味しいですね」
と空気を吸う。
「まぁここは田舎ですからね。都会、あっちの方だと工場が沢山あるから空気は美味しくないですよ」
彼女は西の方へ指を指す。
「なるほど...場所によってなんですね。我々はいい所を選べて良かったです」
「まぁ確かにこの当たりは綺麗ですね。川とか滝がありますし天然水が飲めますし!!」
「天然水が飲めるんですか?」
「はい、すぐそこの山を登れば...」
夏子は左手側の山を指して昔登山していた事を告げるとスウェルに褒められていたのがきっかけなのか、かなり照れていた。
彼女は正直みていて気持ち悪かったと思っていた。
「長話も過ぎましたね。他の従業員を呼びますね」
そういってスウェルは奥にいる男性二人に呼びかけ、それに応じて参上した。
一人は長身でいわゆるスポ根満載のお兄さん、片方は...
「女の子?」
彼女がそういって近づいてみたら
「ち、違います...男です」
声は男だった。
「あ!ごめんなさい!」
「いえ、よく間違えられますし大丈夫ですよ」
その子が笑ってみせたその表情に、彼女はキュンと胸をときめいた。
かなり可愛いのだ。特にぬいぐるみを抱いている所とか、仕草は女の子っぽい。所謂男の娘と言うやつだろうか?
「俺はニカっていいます!力仕事なら任してください!!」
ニカは白い歯を見せながら自分の三頭筋を隆起させて見せた。
かなり大きな筋肉だったので
「触ってもいいですか?」
と夏子が聞いたら
「どうぞどうぞ!」
とニカは三頭筋を差し出した。
「うわぁ!すっごい!!!エリカちゃんも触ってみなさいよ!」
「えぇ...じゃあ...」
彼女はニカの三頭筋の硬さに驚いた。
「男の人の筋肉ってこんなに硬いんだ...」
彼女は筋肉については特に興味は無かったものの、ニカの筋肉には驚きを隠せなかった。でもやっぱり異性の体を触っている事には変わりない為、抵抗はまだあったが...
「触ってくれてありがとうございます!俺の筋肉も喜んでいますよ!」
ニカはそういいながら自分の筋肉をさすっていた。
さっきの男の娘が此方に寄ってきて
「私はイシュティルと申します。今後ともよろしくお願いします」
ぬいぐるみを抱きながらお辞儀をするイシュティル。
「あ、此方こそよろしくお願いします!」
彼女もお辞儀を返す。
「よろしくお願いしまーす!でも可愛いですよねイシュティルさん」
「はは...人には言えない秘密がありましてまぁその魔法のせいでこんな見た目なんですよ」
「ま、魔法?」
夏子は魔法というワードに食いついた。
「はい。あ、この世界には魔法が無いんでしたね。簡単に言うと、火、水、自然、闇、光の5色の妖精が力を貸してくれることによってその色によって魔法が発動するんです。火なら炎を出したし、水なら水を出せます。光で行う魔法は治癒魔法、闇で行う魔法は呪殺魔法ですね。主に状態異常を起こさせる魔法がその2つです」
「うーーん...なるほど...」
イシュティルの詳しい説明に知恵熱を出すも何とかついていく夏子。
イシュティルとニカは笑い、
「大丈夫です。ゆっくり教えますから。私は力仕事は難しいですが、魔法に特化しています。薬を作ったりもできますし、自然に影響している問題や人体に影響している問題は対処できます。よろしくお願いします」
イシュティルは夏子と彼女にお辞儀をし、また二人はお辞儀をする。
「皆さんのご紹介は終わりましたか?」
奥から羽織袴で此方に近づいてくるメガネの青年がやってくる。
「以前は申し訳ございませんでした。またのご来店を心よりお喜び申し上げます。其方の女性は初めての来店ですね。初めまして、私は店長のテイです。どうぞよろしくお願い致します」
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