第6話 汚い言葉
「死ねばいいのに」僕はまだ遊んでいる子供たちを見ながら、つぶやいた。「なぜ、こんなに息苦しいのか、教えてくれよ。そんなに自分のやりたいことを見つけなければいけないのか。仕事を止めれば、こんな気持ちなんか無くなるのか。」「もっと自由でありたい、いろんな事を感じていたい、居場所が無いんだ。」堰を切ったように僕は続ける。
「子供の頃からずっと探してきた。自分の居場所を。努力してきた。でもなんだこれは。何もないじゃないか。」自分と距離を保つ為、深呼吸をする。「自分の本心は何処に有るのか分からなくなってきた。何の為に自分は生きるのだろう。すべて仕事の様に感じる。人と話すことも、ご飯を食べることも、寝るときも、誰かと距離を置いたり、本を読んだり、自分と話すことさえ」僕は歯を食い縛る。彼女は空を見上げている。夕陽が見え綺麗だなと思った。星も少し見え始める時間だ。子供たちは帰る準備を始めている。「こんな気持ち、もやもやをずっと抱えている。高校生の頃には虚無感、空虚感に繋がってしまっていた。今の僕もそれを解決出来ないままでいる。解決する必要はないかも知れないが、少し自分の生活に支障をきたす時があって怖いのさ。」
「僕、実は引きこもっていた時期があって、その時の気持ちや虚無感を未だに抱えているんだ。心休まる時がなく、常に不安で後悔ばかりなんだ。なぜ引きこもっていたのかさえ分からない。やりたいことさえ見つければ前に進めると思いこんでいる。でも、それは存在しないし、仕事にできるかも分からない。趣味でもいいかも知れないが。そんな気持ちを抱えながら僕は前に進む事が大切だと思って、ここまで来たのに。働いて、お金を貰っても嬉しくない、生き延びる為だけにお金を貰っているだけだ。安心がない。地に足がついていない気がする。だから何を積み重ねて行けばいいのか。努力すれば良いのか分からない。他人に対しても申し訳なくなってきた。また、あの虚無感が生活に支障をきたしてしまう。自分は仕事をしたくないだけだと断言したいが、仕事も止めることができない、ただゆっくりする時間が欲しい、でもそれさえも許されない。」やはり自分の事を言葉にすると、苦しくなる。だから、自分のこころなんて見つめたくもなかった。でも、彼女には苦しくても話すべきだと思った。
「私を無理やり居場所にしようとしている?」彼女は遠く空を見つめたまま、僕に問いかける。「そうかも知れない。分からないが。」僕は彼女の目線の先を見る。星が綺麗だ。子供たちの声が遠くから聞こえる。「じゃあね~、また明日」公園から出ていく子供達。公園は静けさを取り戻し、妙に彼女の存在を意識させた。
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