第4話 僕の目に映るもの
仕事の帰り道、いつも通り自販機でコーヒーを買って、公園に向かう。彼女がまた先にベンチに座っているのが見えた。近くまで歩き、「お疲れさま」と言って彼女の分のコーヒーを渡す。彼女は少しはっとした表情を見せて僕だと分かると「ありがとう」と言って缶コーヒーを受け取る。そして僕は彼女の隣にゆっくりと腰を下ろし、缶コーヒーを開けて飲んだ。彼女も続けて缶コーヒーを飲む。
「僕の話を聞いてくれないか」と彼女に問いかける。「いいよ」とだけ彼女は言い、少しだけ座り直す動作をする。僕は何を話そうかと自分の心を見つめた。「気持ちや感情を言葉にする必要があると思う」彼女は僕の様子を見て、言った。「自分に対してではなく、人や何かに対して」と彼女は僕の目を見据えた。僕は少し戸惑って目を逸らす。「人や何かに対して」どういう事だろうか。地面に目線をやると彼女は僕の肩を軽く二回叩いた。僕は、はっとする。「私の目をみて」緊張しながらも彼女の目を見る。「あなたを見ていると人に対しても自分に対しても物凄く臆病、いや恐れているように見える。でも、怖いままでもいいと思う。そのまま私に話して」彼女は一字一句言葉をなぞるようにゆっくりと伝わるように話した。彼女は僕の様子をみて、続ける。「弱いままでもいいと思う、言い訳でも。弱さはそのままで価値のあることだと思う。」僕の目に映る彼女の目は確かに僕に対して向けられている事に気づき、おそるおそる、自分の気持ちを言葉にするために僕はゆっくりと口を開いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます