第2話 彼女との出会い

 仕事帰り、自販機でコーヒーを買って公園に向かう。公園に近づき、中を少しのぞくと彼女が先にベンチに座っていた。僕は少し早歩きをして公園に入りベンチに向かう。「待った?」と彼女に聞くと自分も先ほど来たばかりと答えた。彼女のとなりに座り、コーヒーを一口飲み込み、ほっと一息ついた。お互い黙ったまま、子供たちがまだ明るいからと理由で遊んでいる姿をぼーっと眺めている。「こういう時間嫌いじゃない」と僕に言ったのかどうか分らないニュアンスで彼女は声に出した。僕はそうだなと心の中で思ったまま、コーヒーを飲む。


 自分の気持ちや感情を言葉にしなくてもいいかなと僕は今感じている。そのことに今少し自由を感じていた。そして彼女もそう感じているのだろうか。それとも言葉に詰まっているのだろうか。そんなことはどうでもいいかなと考えている。そんな時間を彼女と共有している事に心地よさを感じているひとときだった。話題を作らなくてもいい、嫌われてもいい、そんな気持ちを感じたのは初めてで、不思議な感覚だった。


 風がふく。心地よい風だ。彼女は「風が気持ちいいね」と少し僕に問いかける感じで言ってきたので、「そうだね」と答えた。


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