第7.1話「まねーじゃーにっき」

「ダメよ!」

 プリンセスさんが、ジェーンさんのステップを見て、そう叫んだ。

「ジェーン、そこのステップはこうよ!」

 プリンセスさんはそう言って、ジェーンさんの横に立つとボックスステップをし始めた。

「いち、に、さん、よん、いち、に、さん、よん! これが基本のステップ!」

 プリンセスさんはボックスステップの前のパートから、もう一度踊り始めた。

 ジェーンさんはボックスステップの少し前に戻り、プリンセスさんの踊りを見ながら手足を同様に動かした。

 ……でも、それは私の見解で、プリンセスさんが見た場合、少し違うらしくて。

「もー。仕方ないわね……。」

 プリンセスさんは微笑を浮かべるとジェーンさんの手を取って、ジェーンさんのアシストをし始めた。

 そんな光景を見ながら、興奮を覚えている私は、フレンズ界のアイドル、PPPペパプのディレクター、マーゲイです。

 ……ああ……ぐふふ……尊と……ブフッ!

「マーゲイが鼻血出したー。」

 フルルさんが言った。

 しかしこんなことは日常茶飯事。

 誰も驚く様子を見せない。

「いつもの事だろ。踏まないように気をつけるんだ。」

 ペパプのリーダー、コウテイさんでさえこんな反応です。

 もっとも、一番リーダーらしいのはプリンセスさんなんですが、どちらにしても反応は変わりないです。


 ……ペパプのツアー企画が決まってから皆さん、とても練習を頑張っていて、私があまり干渉することもなくなりました。

 PPPのメンバーには。

 今はマネージャーとして、PPPのいちファンとして、一般のファン達と共に、PPPの移動手段を模索中です。

 ……と思って、図書館で調べてみた所、どうやらペンギンは水も泳げるらしく、残る問題は鳥と、泳げるフレンズを除いたフレンズたちの移動手段を考えるだけとなりました。

 それで最初に思い付いたのはいかだで移動する、という手段。

 しかし、いかだでは面積が足りなくて全員が乗れない上、樹木が大量に必要で、とてもキョウシュウエリア内のファン全員を運ぶことができません。

 なのでこの方法は諦めました。

 次に考えたのは橋を作ってそれで移動する、という手段。

 ですがそれも、ナカグニエリアまでの距離がとてつもない長さである事が分かり、断念することになりました。

 そして私は、一つの結論を導き出しました。

 それは……自分の能力だけでは、この問題の解決は無理だと言うこと。

 そう。

 思い付いた、最後の方法。

 それは、PPPのファンの飛べるフレンズ達に移動の助けを求めること。

 泳げるフレンズたちは、大体が潜って移動するので外しました。

 あとはツアーの日まで、PPPの皆さん達は移動の準備をしつつダンスの練習を続けるのみとなりました。


「う……うーん……。」

 ですが、ツアーの場所への移動……その僅か2日前のこと。

「う……っ。」

 プリンセスさんが自室で、そんな声を上げて倒れました。

 丁度その時、偶然にもフルルさんが、プリンセスさんの部屋を訪ねました。

「ぷりんせす~。早く始め……ぷりんせす?」

 フルルさんは言うと、プリンセスさんの異変に気付きました。

 フルルさんはPPPの他のメンバーと共に、その身体を抱き上げて私の部屋まで担いで来ました。


「熱が38.7度も……。」

 私は体温計に表示された数字を眺めながら言いました。

 そう……プリンセスさんは、風邪をひいてしまったのです。

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