第4.1話「いんく」(おまけ)
「……さてと。今日も良い顔が見れたな。」
タイリクオオカミが、自身の所持するスケッチブックを広げて言った。
そして、そんなスケッチブックの中には、かばん、サーバル、アライグマ、フェネック、アフリカオオコノハズク、ワシミミズク、そしてカッパとツキノワグマの顔が、それぞれ描かれている。
寝静まったバスの中。
タイリクオオカミは5人全員が確かに眠っているということを確認すると、バス内のベンチ――アメリカビーバーとオグロプレーリードッグが協力して作った物だ――を机代わりに、インクを置いて、原稿を描き始めた。
タイリクオオカミは集中しながら、原稿に向かい続けた。
そして数十分が経ち、タイリクオオカミは顔を上げた。
タイリクオオカミは背筋を伸ばすと、再び自分の描いた原稿を見つめて考えた。
今日はもう、この辺で辞めておこう。
タイリクオオカミはそう思うと、ラストスパートをかけはじめた。
そして、あともう一本曲線を描けば終わり――そんな所まで進んだ、その時だった。
「オオカミさーん。なにしてるのー?」
後ろから突然現れたフレンズがタイリクオオカミにそう声掛けた。
「う、うわあっ!」
フレンズの声掛けに驚いたタイリクオオカミは、そんな声を上げて尻餅をついた。
タイリクオオカミは冷静になってそのフレンズの姿を確認した。
彼女はフェネックだった。
「ま、まだ寝てなかったのか……。(そういえばいなかったような)」
タイリクオオカミは言った。
「いやあー。さっき暗闇の中で独りぼっちのフレンズを見付けてねー。それで話を聞いたら家がここの近くだったから、送ってあげてたのさー。」
「家に送る途中、そのフレンズには何かしたんじゃないよな……?」
タイリクオオカミはフェネックの言葉を聞いて、そう問いかけた。
「い、いやー。何もしてないってばー。」
フェネックは答えた。
そして続けて、タイリクオオカミに問いかけた。
「……で、オオカミさんはなにしてたのー?」
タイリクオオカミは答えた。
「ああ。漫画を描いていたんだ。今、丁度描き終わ――。」
タイリクオオカミが原稿に顔を向けると、それはインクがこぼれ、真っ黒になっていた。
フェネックはその光景を見ると呟いた。
「あちゃー。」
そして彼女……フェネックは、何か思い出した様に顔を上げると、「あっ。」と呟いて言った。
「ちょっとさっきのフレンズに返しそびれた物があったから、返してくるねー。」
彼女はタイリクオオカミから逃げるように走り去って言った。
タイリクオオカミは真っ黒になった原稿を見ながら頭を抱えた。
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