第4話「かせん」

 バッシャーーーーン!

 そんな音を立てて、バスはガクンと傾いて、前方を川へ落として停車した。

 大量の水しぶきが河川から飛んで空を舞い、一部はバスの中に、それ以外は元の場所へ向かって落ちていく。

「アワワ、アワワ、アワワワワワワ……」

 ラッキービーストが混乱し、そんな声を上げた。

「ど、どど、どうしたんですか!? 一体何が!?」




 オープニング

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 水しぶきが空を舞った。

 バスの中に、そんな空を舞い、散った水が少しずつ入り込んでくる。

「どどどどど、どうしたんですか!? 一体何が!?」

 つい先ほどの衝撃と、徐々にバスへ侵入してくる水のかさが上がる度に、バスの中は徐々に混乱で埋め尽くされ、ついにはかばんがそんな声を上げた。

 ラッキービーストはそんなかばんの問いかけに気付くと、アワワ、アワワワワなどという声を止めて、その問いかけに答えた。

「ハシガジメンカラセリアガッテコナカッタカラ、バスノシャタイゴト、カワノナカニハイッテシマッタンダ。」

「え、でも、自動で地面がせりあがって来るはずじゃ……!」

 かばんは呟くように言った。

「ドウヤラシステムエラーガオキテイタヨウダネ。オカゲデジメンガセリアガレナカッタンダ。」

 ラッキービーストは答えた。

 そんなラッキービーストの答えに、かばんは言った。

「それじゃあ、そのシステムエラーを修復すれば……。」

 だがその言葉を遮るようにラッキービーストは言った。

「ソレハデキナインダ。」

「え……?」

 かばんは疑念の声を上げた。

「システムエラーノシュウフクニハ、シュウリヨウプログラムガヒツヨウナンダ。ボクハシュウリヨウプログラムガソナワッテイナイコタイダカラ、シュウリスルコトハフカノウナンダ。」

 ラッキービーストは答えた。

 そして続けた。

「ソレニ、シュウリヨウプログラムヲインストールスルニシテモ、スデニゴコクエリアノデータシュトクトココマデノキロクニ、カナリノヨウリョウヲショウヒシテルカラネ。インストールモムズカシイヨ。」

「はあ……。」

 かばんはラッキービーストの言葉を聞くと、疑念と困惑が入り混じるそんな声を漏らした。

 あまりにも言葉が難しすぎて、言っていることはかばんにはあまり理解出来なかった。

 だが、恐らくラッキービーストが言った言葉は、「無理だ」だという理解の仕方で誤りはないだろう。

「じゃ……、じゃあ……。何か他に手は……。……そうだ。力持ちのフレンズさんに、向こうまでこのバスごと運んでもらうとか……。」

 かばんは言った。

「それなら私、出来るよ!」

 サーバルが大きな声で言い、手を挙げた。

「そ、それじゃあサーバルちゃんが……。」

 かばんはサーバルの言葉に、このバスを運ぶよう言いたかった。

「ムリダトオモウヨ。」

 ――が、そんなラッキービーストの言葉に、その言葉は遮られた。

「え? なんで?」

 サーバルが言った。

 すると、そんなサーバルの問いに答えるように、ラッキービーストは言った。

「サーバルノジャンプリョクデハ、ココカラムコウギシマデノキョリヲジャンプスルコトハ、ケイサンジョウフカノウナンダ。」

 少しだけ間を空けて、ラッキービーストは続けた。

「ダイイチニ、モシモサーバルノジャンプリョクデムコウギシヘワタレタトシテモ、アンゼンニワタルコトハデキナイヨ。」

「そうですか……。」

 かばんは俯いて言った。

 そして考えた。

 何か他に、川をバスごと渡る手段はないかと。

 ――そんな時だった。

 バスの目の前、その水の表面がボコボコと形を変え始めた。

 かばん達はその異変に、その水の中を覗き込んだ。

 すると突然、一人のフレンズが水を纏いながら、水中から勢い良く跳躍し――空に舞った。

「な……何!?」

 サーバルが驚きの表情を浮かべながらそう叫び、そのフレンズを見上げる。

 そのフレンズは逆光に纏われ黒く見え、表情こそはあまり良くは見えなかった。

 だが、なんとなく緑色をしていると、サーバルには分かった。

 そしてそんなフレンズは彼女達が居ることに気付くと、驚き、慌てて空中でもがき始めた。

「危なぁ~いっ!」

 フレンズは言った。

 やがてそのフレンズの飛ぶ力は衰え、ゆっくりとスピードを落とし、かばんへ向かって落ちていった。

 かばんはそのフレンズが自分の立っている場所に落ちる事に気が付き、驚いて悲鳴を上げた。

「う……うわあああああ!」

「どいて~っ!」

 そのフレンズは言った。

 だがそのフレンズがそんな言葉を放った時、かばんとそのフレンズの距離は既に10cmを切っていた。

 そして。





 ――次の瞬間、そのフレンズはかばんの足元数mm手前に着地し――


 ――勢い余って、かばんが避ける間もないまま、そのフレンズはかばんに覆い被さるように、巻き込んで倒れ込んだ。

「わあああああああ!」

 かばんは叫んだ。

 ――その時、かばんの背中……そこにかかっている鞄は砂利だらけの川岸に衝突した。

 鞄のお陰でかばんは怪我こそはしなかったが、もの凄い速さでぶつかる、という、その恐怖で一瞬意識が遠退いた。

 かばんはふと気付くと、自身の身体の上に横たわるフレンズを見つめながら状態を起こし、彼女の肩をポンポンと叩いた。

「だ……、大丈夫ですよ。」

 かばんは言った。

 彼女はゆっくりと目を開けて言った。

「す、すみません!」

「かばんちゃん、大丈夫!?」

 倒れていたかばんを見て駆け寄ったサーバルが、かばんに聞く。

「いえ……。……大丈夫だよ。サーバルちゃん。」

 かばんは二人の言葉にそう答えた。

「良かった~!」

 サーバルは言った。

「鞄が丁度良くクッションになってくれたからね。」

 かばんは呟いた。

「本当に、すみませんでした……。」

 一人のフレンズは言った。

「いえいえ、大丈夫ですって。……あのくらい、サーバルちゃんとあった時にありましたし。」

 かばんは答えた。

「私……カッパって言うんです。……私、魚を追いかけるの好きで……。魚を捕まえる遊びをしていて……。……ぇ夢中になりすぎて……、あんな事に……。」

▼■■■■■▼ 未確認生物

■  ■  ■

■  ■  ■ カッパ

■  ■  ■

 ■■  ■  kappa


 そのフレンズ……カッパはそう言うと、顔を赤らめ始めた。

 それが何故かは……言うまでもないだろうが、先程倒れ込んだ際に、かばんの顔と自分の顔同士の距離がとてつもなく近くなっていたから……という理由である。

 だが、かばんはそれに気付く事は無かった。

 倒れた時の恐怖で、それに気付く余裕が彼女には無かったのだ。

「な、なにかお礼……いやお詫びを……。」

 カッパが言葉を間違えながら言った。

「だからいいですって。」

 かばんはカッパの言葉にそう答えた。

「……いえいえ。……そうだ、泳ぎ方でも教えましょうか。」

 カッパは言った。

「今はいいですよ。……そうだ。このバスを向こう岸まで持って渡れますか?」

 かばんは言った。

「やってみます。」

 カッパはかばんの問いにそう答えると、バスの車体に手を掛けた。

「動かしますね!」

 カッパはそう言うと、後ろへ一歩踏み込んだ。


 ズシーーーーン!


「動きました! その調子です! カッパさん!」

 かばんはそう言うと前方を見た。

「……あれ?」

 だがそこに、このバスを動かしているはずのカッパの姿はなかった。

 その姿が見えないまま、数秒が経過した。

 かばんは運転席からカッパがいるであろう場所を覗き込んだ。


 ――すると。

「ぶは……っ! すみませn……無理です~っ!」

 カッパがそう言って、水面から顔を出した。

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「すみません……。力になれなくて……。」

 カッパが俯き、申し訳なさそうに眉を八の字に傾けながら言った。

 かばんはそんなカッパに、ニコリと笑い掛けながら言った。

「いえ。問題ありません。全然大丈夫ですよ。」

「で、でも……。」

 カッパは呟いた。

 結局あのあと、バスが沈み掛け、カッパはそんなバスに押し潰されそうになった。

 バスはかばん達のお陰で引き上げられたが、そんな彼女達を向こう岸へ渡せなかった事、更にその上に迷惑までかけてしまった事に、カッパは責任感を感じていた。

 するとそんなカッパの考えを逆転させるように、かばんは呟いた。

「本当はここに、橋がせりあがってくるはずなんですから。」


「……橋?」

 カッパは呟いた。

 そんなカッパの呟きに、かばんが答えた。

「はい。」

「それなら、上流の方にもあったと思います!」

 カッパは言った。

「本当ですか!?」

 かばんはカッパの言葉に、目を輝かせながら言った。

「モウヒトツノハシハ、タキチホーニアルヨウダネ。コノカワヲワタルニハ、ソコマデイドウシナイトイケナイヨ。」

 ラッキービーストはそう言うと、バスを旋回させ始めた。

「途中に私の家が在るんで、私、その辺までだったら案内しますよ。」

 カッパは言い、小さめの声で続けて言った。

「……魚を、捕まえながら。」

「……ラッキーさん。」

 かばんは呟いた。

「カノジョノアンナイニシタガッテ、セイキルートデハナイミチヲハシルヨ。」

 ラッキービーストは言った。


 カッパは川へ飛び込み、水面から顔を出した。

「出発してください!」

 彼女は言い、再び水中へ身体を沈めて泳ぎ出した。

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「水、綺麗になってきましたね。」

 かばんが、カッパの泳ぐ川の水を眺めながら言った。

「ジョウリュウニチカヅイテキタカラネ。モウシバラクジョウリュウヘチカヅイテイッタラ、ミズガトウメイニ……スケテカワノナカガミエルヨウニナルヨ。」

 ラッキービーストが、かばんの言葉にそう答えた。

「へえーっ。」

 かばんはラッキービーストの言葉を聞いて、川を眺めながら頷き、そう呟いた。


「……ん?」

 かばんがそのまま川を眺めていると、1人のフレンズが視界に入った。

「ラッキーさん。一旦停めてください。」

 かばんはラッキービーストに言った。

「ワカッタヨ。」

 ラッキービーストは答えると、バスを停車させた。

 カッパはその事に気付くと、泳ぐ事を止めて岸へ上がった。

 かばんはバスを降りた。

「どうしたの?」

 川岸へ上がり、バスへ近付いてきたカッパが、バスを降りたかばんに聞いた。

「いえ……。あのフレンズさんが……。」

 かばんは答え、そのフレンズを指さした。

 カッパは、かばんの指さしたそのフレンズを見た。

 彼女はやや大柄の体のフレンズだった。

 耳は円く、それを含んだ髪は黒く。

 川を見ながら屈み込んで、時々その水面を手で打つ。

 カッパはその行動で飛び散った水を見て呟いた。

「魚だ……!」

「え?」

 かばんはカッパの呟きに、疑念の声を上げた。

「あのフレンズさん、泳ぎもしないで魚を採ってるんですよ!」

 カッパはかばんの疑念の声に、目を輝かせながらそう答えた。

「そうですか……。」

 かばんは頷いた。

「あの、別に急いでませんよね?」

 カッパはかばんに顔を向けてそう聞いた。

「え……。いや……まあ。」

 かばんは呟く様にそう答えた。

 カッパはそんなかばんの答えを聞くと、ニコリと微笑んでそのフレンズへ身体を向け――泳ぎ出した。




 ――そんな時だった。

 その、名も知らないフレンズが見ている水の中、そこで青い影が蠢いた。

 そして、そこから飛び出した。

 それはそのフレンズの図体を遥かに越える大きさの魚。

 いや、良く見るとそれは魚ではなかった。

 その魚に見えた生き物には、鱗や尾びれにあるようなような線がなかった。

 ましてやその体は青く、その上美しく透けていて、たった一色だ。。


 そう……。

 それは大きな、魚型のセルリアンだった。

 だが、セルリアンだとしたら、何故川の水に触れているのに動きが止まらないのだろうか……?

 まあ、そんな疑問はあとだ。

 早くあのセルリアンを倒さなければ……。

 カッパはそう思い、そのセルリアンへ向かって走り出した。




 ――その瞬間。

 そのセルリアンの真下にいたフレンズが、素早く後ろへ遠退くと、そのセルリアンの、魚でいう目がある場所の石へ向かって、拳で強い一撃を与えた。

 するとそのセルリアンは、見る間もなくばらばらに砕け散り、その破片が辺りへ散乱した。

 その光景を走りながら見ていたカッパは、驚き、目を見開いた。

 そのフレンズは地面に着地すると、照りつける日を手で遮りながら言った。

「大物ゲット。」

 カッパが川岸へたどり着いた頃には、その魚型のセルリアンの砕け散った破片は、既に消滅していた。

 かばんはそんな光景を眺めながら、小さな声で呟いた。

「……あっぱー……?」

「かばんちゃん、何か言った?」

 サーバルが聞いた。

「え……? いや、なにも……。」

 かばんは答えた。

 カッパはセルリアンが砕ける前にいた場所を、口を開けたまま眺めながら、その場に立ち止まっていた。

 そして、そんなカッパの存在に気付いた魚型のセルリアンを倒したフレンズは、彼女に近付くと微笑みながら、その顔を見つめて言った。

「おーい。こんな所で何してんのー?」

「え……、あの……。えっと……。」

 カッパは戸惑い、そう小さな声で答えながら、かばん達の居る方向を見た。

 かばんはその視線の意味を理解すると、大きな声でそのフレンズに呼び掛けた。

「あのー! すみませーん!」

「おお、あっちにも居たんだ。」

 かばんの発した言葉により、そのフレンズはかばん達の存在に気付いてそう言った。

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「私の名前、何だか分かる?」

 そのフレンズがかばんに聞いた。

「……え?」

 かばんが疑念の声を漏らした。

 そのフレンズはニコリと笑うと、両腕を広げて言った。

「当ててみて。」

 かばんは彼女の体を見回した。

 先程の影からいえば、ヒグマの様にも見えた。

 だが少し、色が違う気がする。

 かばんは彼女が、ヒグマでは無いことを確認した。

 だが、ヒグマと同じ様な姿をしているため、彼女は恐らくその仲間なのだろう。

 次にかばんは、彼女の頭部を確認した。

 彼女の前髪を見た時、かばんは気付いた。

 そのフレンズの前髪には三日月のような印が象られていた。

 そういえばヒグマには、円……いや、楕円形のような印があったはずだ。

 ヒグマの楕円形の印がだとするならば、彼女は……

「ツキグマさん……ですか?」

 かばんは言った。

 するとそのフレンズは、笑みを強くすると、一息ついて言った。

「……惜しいっ! 私の名前はツキノワグマ。髪にある印の、“月の輪”から名前がつけられている……らしいよ!」

▼■■■■■▼ 食肉目 クマ科 クマ属

■  ■  ■

■  ■  ■ ツキノワグマ

■  ■  ■

 ■■  ■  Asian Black Bear

「そうですか……。」

 かばんは困惑しながら答えた。

「ところで、君たちは?」

 ツキノワグマと名乗ったそのフレンズは、かばん達を見ながら彼女達に聞いた。

 かばんはそんなツキノワグマの言葉に、こう答えた。

「あ、紹介遅れてすみません。ボクはかばんと言います。きょうしゅうえりあから来ました。」

「私はサーバルキャットのサーバルだよ! よろしくね!」

「アライグマのアライさんなのだ!」

「フェネックだよー。」

 ……残り三人の紹介も続いて行われた。

 そして。

「わ、私はカッパと言います!」

 カッパは言った。

「よろしく。」

 ツキノワグマが言うと、カッパは彼女に更に近寄って言った。

「さっきの魚の捕り方……凄かったです! どうか弟子にしてください!」

 ツキノワグマはそんなカッパの言葉に、困惑した表情を浮かべて言った。

「ごめんなさい……。私、一匹狼だから……。」

「そうですか……。」

 カッパは俯きながらそう答えた。

「じゃあ、ツキノワグマさんの家の場所を教えて下さい!」

「え……。まあ、いいですけど……。」

 カッパの言葉に、ツキノワグマはそう答えた。

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 どうぶつえん きりゅういんおねえさん()

「ツキノワグマはー。そうですねー。雑食性でー。そうですねー。基本的には何でも食べましてー。そうですねー。ま、親子以外は基本的には単独生活をしててー。そうですねぇ。ツキノワグマの胆嚢はー熊胆といって薬用にされたりしていてー。そうですねえー。まあ、そういうのに使うからか、結構ツキノワグマの個体が少なくなってるのはーそれのせいかもしれませんねー。」

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 話を聞いてみると、彼女……ツキノワグマの家も、カッパと同じく、この川の、さらに上流の方にあるようだった。

 カッパはかばんと、他6人のフレンズから許可を得ると、ツキノワグマをバスの中に招き入れた。

「おー。すごいねぇ。」

 ツキノワグマがそう言いながら、バスの中を見回す。

「バスって言うんですよ。」

 かばんがツキノワグマにそう言った。

「バスか……。いいな、一つくれ!」

 ツキノワグマは言った。

「ええ……。」

 かばんは困惑した表情を浮かべながらそう答えた。

「ソレナラ、ココカラモウスコシジョウリュウニイッタトコロニアルヨ。」

 その話を聞いていたのか、運転席で運転をしていたラッキービーストが言った。

「バスってまだあったんですか?」

 かばんが言った。

「コノエリアゼンタイデカゾエレバ、アトゴダイハアルヨ。」

 ラッキービーストは答えた。

「そうなんですか! 知りませんでした……。」

 かばんは言った。

「……そういえば、きょうしゅうえりあでも、他にバスってあったんですか?」

 ラッキービーストは答えた。

「キョウシュウエリアデモ、ホントウデアレバ、アトナンダイカアッタハズナンダケド、レイノセルリアンノイッケンガオキテ、パークノショクインタチガエリアカラニゲルタメニ、ホトンドツカッタカラ……。アノイチダイイガイハ、ナカッタハズダヨ。」

「例の……一件?」

 かばんは疑念の表情を浮かべながら、ラッキービーストのその言葉に聞き返した。

 すると、ラッキービーストは声のトーンを普段より少し低くして言った。

「キミガ、エリアジュウノフレンズタチトキョウリョクシテタオシタ、アノセルリアンノコトダヨ。トウジノパークノショクインタチニハトテモタチウチガフカノウデ、アエナクテッタイスルコトニナッタンダ。」

 ……辺りに沈黙が訪れた。

 すると、そんな沈黙の中、一人のフレンズ……ツキノワグマが、まるでその話を気にしないかのように、立ち上がって言った。

「そんなことはともかく、バス、一つ貰って良いですよね!」

「モラッテモイイケド……ツカワナイコトヲオススメスルヨ。」

 ラッキービーストはそう答えた。

 すると、そんなラッキービーストの言葉を聞いて、あることに気付いたかばんがラッキービーストに聞いた。

「そういえば、ラッキーさん、最近普通にフレンズさん達と話してますけど……。」

「コンゴ、カバンノミニナニカ、キケンナコトガオキルカノウセイガタカイカラネ。モシモノトキノタメノヨボウサクダヨ、」

「そ、そう……なんですか……。」

 かばんは頷きながら言った、

「つまり、そのパークの、職員? さんでも太刀打ち出来なかった問題を、たった一晩で解決出来た私達は、と〜ってもすっごーい! ……ってことだね!」

 サーバルが言った。

「トウジハ、パークナイノキャクタチヲヒナンサセルノガセイイッバイダッタカラネ。ソノブンヤリヤスカッタンダトオモウヨ。」

 ラッキービーストは答えた。

 サーバルはその言葉が、「凄くはない」という意味だという事を理解すると、耳をグッタリとさせながらもの悲しそうに言った。

「何だぁ……。」

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 しばらくすると、川のある方向とは反対側にあるバスの窓から、外を眺めていたかばんの目に、あるものが映った。

「あれは――。」

 かばんが呟く。

 そんなかばんが見たもの。


 ……それは、土の層の中に、ポッカリと空いた複数の穴。

 その中には水まで浸かっているものや、地上から数m離れた位置にあるものまで、様々だった。

 そして、かばんがそんな光景を眺めていると、バスに乗っていた、元のメンバー以外の二人のフレンズ……カッパとツキノワグマが、ほぼ同時に声を発した。

「「ここ、私の家です!」」

 そんな声を聞いた二人は、お互いに顔を見合わせた。

「え……ツキノワグマさんも……?」

 カッパがツキノワグマに聞いた。

「そう言うカッパさんも……?」

 ツキノワグマが、カッパの問いに、そう聞き返した。

 二人は顔を見合わせて笑い合った。

 すると、そんな和やかな空気の中、ラッキービーストが更に衝撃的な事を言った。

「ドウヤラコノチカクニ、モウイチダイノバスモアルヨウダネ。」

 カッパとツキノワグマは声を揃えて驚きの声を上げた。

「ええ〜〜〜〜〜っ!?」

 かばんはそんな彼女達を見て、サーバルと共にかばんに付いてきたフレンズ達と、顔を合わせて静かに笑った。

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「いやあ。それにしても衝撃的でしたね〜。」

 かばんが語り掛けるように言った。

「みっつの目的が、一気に達成出来るなんて……。本当にまさかだったよねー!」

 サーバルがかばんの言葉にそう答える。

「そうだねー。」

 かばんはサーバルの答えに頷きながら言った。

 そしてかばんはふと、窓の外を見た。

「きれい……。」

 気付けば辺りは、今まで見たことのないような夕焼けの空に囲まれていた。

 地平線を見れば、落ち行く陽が薄紅うすくれないに染まる空を、徐々に幻想的な紫色へと変えて行く。

 西の空を見ると、既に月が上り始めている事が分かった。

 それすなわち、夜の始まりを意味する事だ。

 だから出来れば、どうか夜までに、どこか泊まる事が出来る場所が、見付かればよいのだが……

 エンディング

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「それにしても私、住んでいる所がツキノワグマさんとこんなに近かったなんて、驚きましたよ〜。」

 カッパがツキノワグマの顔立ちを見つめながら言った。

「私もびっくりしましたよ〜。」

 カッパの言葉に、ツキノワグマがニコリと微笑みながら答えた。

 カッパは少し歩くと、その穴の前で立ち止まって言った。

「「それじゃあ私、家ここなんで……。」」

 カッパは気が付いた。

 また、ツキノワグマと声が重なった事に。

 そして、そんなツキノワグマは、自分の家に当たる穴……、その隣の穴を指さしながらその場に立ち止まっている。

 そんな光景も相まって、カッパはこみ上げる笑いに、耐えるに耐えきれずに、口もとを緩めて笑い出した。

 すると、ツキノワグマはそんなカッパの笑いを真似するかのように、カッパと顔を合わせたまま笑い出した。

 ……その日、かせんちほーに楽しそうな笑い声が長く響いた。



――――――――――――――――

  の          の

    の      の

 の の タイリク予告 の の

    の      の

  の          の

――――――――――――――――


 どうも、タイリクオオカミだ。

 この小説、「けものフレンズ2」もやっと4話まで進んだな。

 さて、次は5話となる訳だが、その前に予習しよう。

 今回予習しておくのは……何だっけ?

 確か……。

 けい……、けい……。

 そう、渓谷だ。

 渓谷とは、山にはさまれた、川のある所の事だ。

 通常の谷には川はないが、渓谷には川があるんだ。

 漢字に、さんずい?が含まれている事からも、その事は分かるだろう……。

 えーと。

 次回、「けいこくちほー」。

 それじゃあ次回もよろしく、な!

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