第5話「けいこくちほー」
バスの中、サーバルの膝の上で、かばんは瞼を開けた。
「うーん……。ボク……眠っちゃってたんだ……。」
辺りは既に明るく、陽が照っていた。
目を擦りながら、かばんがバスの窓を開けて外を見る。
バスは停まっていた。
そうだ。
そういえば、昨晩――
オープニング
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昨晩。
バスの中で。
「アライさん、そろそろ眠くなってきたのだ……。」
アライグマが目元を擦りながら言った。
すると、そんなアライグマにフェネックが手を伸べた。
「今日はもう遅いからねえ。ゆっくり眠ると良いよー。」
……日没からは、既に6時間が経過していた。
アライグマはフェネックの言葉を聞くと、そんな彼女の膝元に頭を乗せた。
「みんなおやすみなさいなのだ。」
アライグマは言うと、一回大きなあくびをして、瞼を閉じた。
かばんはバスの揺れがそんな彼女の眠りを妨げぬように、ラッキービーストに言った。
「ラッキーさん。バスを停めて下さい。」
「ワカッタヨ。」
ラッキービーストがいつもの無機質な、機械的な声でかばんの支持にそう答えた。
ラッキービーストはスピードをゆっくりと落としながら、ある程度収まったところでブレーキを掛けた。
静かに、音を立てぬよう。
……それから数分後。
アライグマが静かで、なおかつ規則的な寝息を立て始めた。
そしてそんな、己の膝の上で横たわるアライグマを見つめながら、フェネックはその頬をゆっくりと撫でた。
「……へねっくやめるのだぁ〜」
アライグマが眉をひそめながらそんな寝言を言い、バスの中にクスクスというささやかな笑い声が響く。
かばんはそんなアライグマを見て目を擦りながら、大きく口を開けて息を吸い込んだ。
それはとても大きなあくびだった。
「ボクも、アライグマさんを見てたら眠くなってきました……。」
かばんは言った。
「かばんちゃん、夜行性じゃないもんね! ゆっくり眠ったらいいよ!」
サーバルが、かばんを横目で見つめながらそう言った。
「サーバルちゃん……。」
かばんが呟く。
「ほ、ほらほら!」
サーバルは両手でかばんの上体をゆっくりと下ろすと、そう言いながら彼女のもみあげ辺りを優しく撫で回した。
……バスの座席の上から、かばんは外を眺めた。
月は、既に天高く上り、夜もかなり更けてきた。
淀んだ視界に、サーバルの優しい手の感触も相まって、徐々にかばんの視界は暗くなり、それらは彼女に深い眠りをもたらした。
「おやすみ、かばんちゃん。」
視界が黒く染まりきる前、サーバルが言った。
かばんはその言葉に答えようと口を動かそうとしたが、全く動かさない内に彼女は眠りに入った。
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「……結局、宿泊場所を見付けるどころか、次のちほーに辿り着く前に、夜になっちゃったんですよね……。」
バスの壁にもたれ、その窓から上体を少しだけ覗かせたかばんがふと、昨晩の事を思いだしながらそう呟いた。
そんなかばんに、運転席でフレンズ達が起きるのを待っていたラッキービーストが声掛けた。
「オハヨウ、カバン。」
かばんはラッキービーストの声掛けに答えた。
「あ、おはようございます。ラッキーさん。」
「キョウハヨクネムレタカナ。」
ラッキービーストがかばんに聞いた。
「はい。……まあ、いくらかは。」
かばんはラッキービーストの問いかけにそう答えると、辺りを見回した。
ふとベンチに目を向けると、その上に頭をうつ伏せにし、正座したまま眠っている、タイリクオオカミの姿が見えた。
……いや、よく見るとタイリクオオカミが頭を付けているのは、ベンチの上ではないようだ。
タイリクオオカミが顔を付けているのは、その厚さと色からするに、真っ黒な原稿用紙だった。
そしてさらにそのそばには、黒い液体の入ったビンが倒れていた。
恐らく、あの真っ黒な原稿用紙は、元々はただの、白い普通の原稿用紙だった。
だが、あのビンの中の黒い液体――恐らく黒のインクだ――が何らかの原因……
例えば、原稿用紙を描いている途中で眠ってしまうなどする。
その時にタイリクオオカミが上体を倒したその衝撃で倒れて溢れてしまい、原稿用紙へと染み入って、真っ黒になってしまったのだろう。
だが、タイリクオオカミがそんなへまをするものなのだろうか。
まあいずれにせよ、あの原稿が完成していなかったとしても……まだ描いていなかったとしても、可哀想なものだ。
かばんがぼんやりと、そんな事を考えていると、未だ気持ち良さそうに寝入っているサーバル達の姿が目に入った。
彼女達とはこれまで、沢山旅をして来た。
そして今日も旅をする……。
そうだ。
旅だ。
かばんはやっと脳を眠りから完全に覚醒させた。
そして今、自分達がどこにいるのかという、疑問を持った。
「ラッキーさん、ここはなにちほーですか?」
かばんはラッキービーストに聞いた。
ラッキービーストはそんなかばんの問いに、相変わらずの無機質な声で答えた。
「マダココハ、カセンチホーダヨ。」
かばんはラッキービーストの答えを聞くと、周りを見渡して再度聞いた。
「次のちほーまで、あとどのくらいかかりますか?」
ラッキービーストは答える。
「タンジュンケイサンデアト、イッテンロクキロクライダヨ。サーバルタチガオキタラシュッパツダヨ。」
かばんはラッキービーストのそんな言葉を聞き、何か思い付いたように天を見上げると、にこやかに微笑みながら言った。
「じゃあ、ラッキーさん。あれの準備、お願いします。」
「ワカッタヨ。」
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「こーけこっこー! みんなー! 起きてー! 朝だよー!」
明け方のジャパリバス周辺に、そんな声が響いた。
この声は、アヒル――昨日の朝、かばんがアヒルとラッキービーストに頼み、録音してもらった物――の声だ。
かばんはその声を、目覚まし時計として辺りへ響かせた。
するとかばんの思惑通り、バスの中に居たフレンズ達は起き始めた、
「うーん……おはよう、かばんちゃん。」
サーバルが片目を擦りながら言った。
「おはよう、サーバルちゃん。」
かばんはサーバルの言葉に、バスに戻るハシゴを降りながらそう答えた。
「ソレジャア、シュッパツスルヨ。」
ラッキービーストは言うと、バスのエンジンを掛けて、タイヤを前転させ始めた。
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……それから数分後。
「モウスコシデツギノチホーニハイルヨ。カセンガワノマドヲミテミテ。」
かばんはそんなラッキービーストの言葉に、河川側の窓から、外を覗いた。
「うわあ……!」
かばんは驚愕し、そう呟いた。
なにせ、今まで川があったと思っていた位置が、どんどん、みるみるうちに低く、遠くなっているからだ。
「すっごーい!」
サーバルがその光景に、そんな言葉を放った。
その景色はこうざんで見た物よりも輝かしく見えた。
なにせ、かばんはトキに掴まりながら飛んで、遊覧飛行のように楽しんだものの、ここまで高度が高いところに来るのも初めてだったからだ。
バスの前方は未だ、上方に傾いている。
「ツギノチホーニハイッタヨ。」
ラッキービーストが言った。
「ここはなにちほーなんですか?」
かばんがラッキービーストにそう問いかけた。
「ココハケイコクチホーダヨ。ムコウニミエル、モウヒトツノガケトコノガケノサカイメノコトヲタニ、サラニソノシタニカワガアルカラ、コノバアイハケイコクデアルコトガオオク、オモニコノチホーニハ、トリノフレンズガスンデイルヨ。」
ラッキービーストはそう答えた。
「へえー。」
かばんはぼんやりとそう呟いた。
目の前の川が、どんどん、どんどん遠くなっていく。
どんどん、どんどん――
「キキィーーーーーーーッ!」
甲高い音を立てて、バスは停車した。
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「キキィーーーーーーーッ!」
そんな甲高い音を立て、バスは停車した。
「うわわ! なになに!?」
サーバルが慌て、そんな声を出す。
「ラッキーさん! どうしたんですか!?」
かばんがラッキービーストにそう聞いた。
「アワワ、アワワワワ……。」
ラッキービーストは慌ててそんな声を出しながら、ただ前方を見つめている。
「ん……?」
かばんはラッキービーストの見つめる場所に目を凝らした。
「フレン……ズ……?」
かばんはそれを見ながら呟いた。
ラッキービーストが見つめる場所……バスの前には、一人のフレンズ――恐らく鳥のフレンズだろう――が立っていた。
「あの――。」
かばんがそのフレンズに話し掛けた。
「あ、あぶないだろっ!」
バスの前に立っていたフレンズが言った。
「す、すみませ……。」
かばんがそう言葉を返すも、そのフレンズはそれを遮るように言った。
「あんたみたいに、図体がめちゃめちゃ大きいフレンズが走っちゃ!」
「……へ?」
かばんはフレンズの言葉に、そんな疑念の声を上げた。
そして思った。
ははあ、これはバスを、フレンズだと思い込んでますね。と。
まあ、そう思い込むのも仕方がない。
かばんはバスの入口に向かった――
「フレンズからフレンズが!?」
そのフレンズは言った。
ああ。――これは――
――面白いことになりそうだ。
かばんは、彼女にしては珍しく、いたずらに微笑んだ。
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「も、申し訳ない! あんな大きなの、あたしあんまり見たことねえから、ついついフレンズかと……。」
そのフレンズが申し訳なさそうにそう言った。
かばんは笑みを浮かべながら申し訳なさそうに頭を下げるフレンズに言った。
「いいんですよ。」
タイリクオオカミが冷静沈着な顔を見せながら、かばんの横に立った。
「良い顔も頂けたしな。」
タイリクオオカミは言うと、笑いを吹き出して続けた。
「特に、バスだと気付いて恥ずかしがっている時の顔を。」
そのフレンズは笑みを浮かべながら言うタイリクオオカミを見つめ、軽く不満の声を漏らすと、次に表情を変えて言った。
「……あたし、ウィリアムソンシルスイゲラのウリスってんです。呼び捨てでもさん付けでもいいんで、好きに呼んで下さい。」
▼■■■■■▼ キツツキ目 キツツキ科 ズクロシルスイキツツキ属
■ ■ ■
■ ■ ■ ウィリアムソンシルスイゲラ
■ ■ ■
■■ ■ williamson's sapsucker
「分かりました。」
かばんが言った。
「じゃあ、ウリスちゃんで!」
サーバルがややテンション高めに微笑みながら、大きな声でそう言った。
そして、そんなサーバルの言葉に、ウィリアムソンシルスイゲラは唖然とした……。
困惑した表情で呟いた。
「ウリス……ちゃん……。」
「ダメだった?」
サーバルがウィリアムソンシルスイゲラに聞いた。
すると彼女は慌てて表情をにこやかに変えて言った。
「いいえ! 全然そんなわけじゃねえんですよ!? だ、だけど……。あたしあまり……ちゃん付けで呼ばれたことねえから慣れなくて……。」
「じゃあ、ウリス。……でいい?」
サーバルは彼女にそう聞いた。
「いや、ちゃんで良いですよ。」
彼女はそう答えた。
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「―――――――――――――――――
せいぶつかがくけんきゅうじょ はどりおにいさん(おかやま)
「えー。ウィリアムソンシルスイゲラはでしね。おんもに団体で移動してで〜。基本的に樹木の汁……蜜を主食にたべてるんでしよ。」
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「ところで……、ウリスさんは何をしてたんですか?」
かばんが聞いた。
そんなかばんの問いに、ウィリアムソンシルスイゲラは彼女から目を背け、手を遊ばせながら答えた。
「えと……。ジャバリまんを持ったボスを探してました……。」
かばんはそのウィリアムソンシルスイゲラの言葉を聞くと、何か思い付いた様に顔を上げた。
そして、彼女は言った。
「それなら……、もっと良いものがありますよ。」
「……へ?」
かばんの言葉に、ウィリアムソンシルスイゲラはぽかんと口を開けたまま、そう呟いた。
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「わあ……すごい……。」
ウィリアムソンシルスイゲラが嗅いだ香り。
それは、何種ものスパイスとスパイス同士で混ざり合い、実に濃厚で、己の心に深い安心感を与えてくれる、そんな香しい匂い。
だが安心感だけではなく、多めの刺激も与えてくれるのがそれ……その料理の特徴だ。
彼女の目の前にあるのは、かばんがキョウシュウエリアで、初めて作った料理……カレー。
インド発祥で、フランスを経由してジャパリパークのある国、“ニッポン”で、国民食とまで言われたこのカレー。
かばんは彼女が草食(?)動物であることも考慮し、卵や肉といった食材は使用せずに、材料にハチミツやリンゴを加え、彼女が食べやすいように作った。
かばんはアフリカオオコノハズクやワシミミズクが食べてしまわないかと警戒したが、生憎彼女達は肉食。
“甘ったるい物は食べないのです。我々は長なので。”
食べようとする気配は全く無く、かばんは少し悲しくもあったが、一安心した。
「ウリスさん。食べても構いませんよ。」
かばんは言った。
「うぇ……? あ、はい!」
ウィリアムソンシルスイゲラは戸惑いながら、そう答えた。
彼女は己の目の前のスプーンを鷲掴みして、それをすくい上げ――口へ運んだ。
彼女はそれをいくらか噛んで、飲み込むと、驚いた様に口を開け、目を見開いて言葉を失った。
「ウリス……さん?」
かばんがそんな彼女の顔を覗き込みながら言った。
彼女はかばんの言葉を聞いて、かばんに目を向けると、頭を振ったのちこう言った。
「うぇ……あっ、美味しかったです……! と……、とっても……!」
かばんはそんな彼女の反応に、ニコリと微笑みながら言った。
「どんどん食べていいですよ。まだまだ沢山ありますから。」
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「ごちそうさまでした!」
ウィリアムソンシルスイゲラが言った。
「おそまつさまでした。」
かばんがウィリアムソンシルスイゲラの言葉にそう答えた。
かばんが鍋の中を覗くと、その中は何も無かったかのように空っぽだった。
よっぽど腹を空かしていたのか、夢中で食べていた為に、彼女の口もとにはカレーがぺっとりと付いていた。
かばんはそれを見て口もとを歪めた。
ウィリアムソンシルスイゲラはそれに気付くと、口もとに付いたカレーを片手で拭うと、おじぎをしながら言った。
「マジで美味しかったです! どうも有難う御座いました!」
「いえいえ、こちらこそ、ありがとうございました。」
かばんはそう答え、ニコリと微笑みながら、首を傾げた。
「え? あたし何か、お礼されるような事しましたっけ?」
ウィリアムソンシルスイゲラが言った。
そんな彼女の言葉に、かばんは答えた。
「美味しそうに食べてくれてたので。口もとにカレーを付けるくらい、夢中に。」
ウィリアムソンシルスイゲラは首を傾げながら顔を赤らめ、疑念の表情を浮かべた。
「さあ、行きましょう! ラッキーさん!」
かばんの言葉に、ラッキービーストは答えた。
「ワカッタヨ。」
ラッキービーストはバスの近くで燃え盛る薪に水を掛けた。
その間にかばんは座席へと乗り込んだ。
ラッキービーストは運転席に乗り込むと、一息ついて言った。
「ソレジャア、シュッパツスルヨ。」
かばんはそんなラッキービーストの言葉に「はい。」と答えると、窓から顔を覗かせ、ウィリアムソンシルスイゲラに手を振った。
「それじゃあ、またー!」
「またねー!」
サーバルがかばんの後に続けて言った。
「ま、またいつかー!」
ウィリアムソンシルスイゲラは答えた。
……バスが発車し始めた。
彼女の姿は徐々に、少しずつ小さくなって行く。
彼女の姿は、点になって、そのうち、いつの間にか消えた。
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……それから小一時間が経って。
「何だか水の音がするねー!」
サーバルが言った。
「緑も多くなって来ましたね。」
かばんはサーバルに続けて言った。
すると、そんな二人の言葉に、ラッキービーストが答えた。
「タキチホーニチカヅイテキテルカラネ。コノママシバラクナニモナケレバ、キョウマデニタキチホーニハツクヨ。」
――。
そんな時。
「キキィーーーーーーーーーッ!!!!!!!」
バスが停まった。
「ま、また〜〜〜!?」
サーバルが叫んだ。
「ど、どうしたんですか!?」
かばんがラッキービーストに聞き、前を見る。
するとそこには、ある障害物があった。
だがそれは先程とは違い、フレンズではなかった。
それは横転した、大きな樹木。
林から飛び出て、バスの進行を邪魔している。
「サーバルちゃん、あれ動かせる?」
かばんがサーバルに聞いた。
「流石に無理だよ! でもまあ、皆でやったなら……。」
サーバルが答え、そこまで言った時。
「バス……!? なんでこんな所に……。」
そんな声が聞こえた。
もちろんその声は、バスに乗っている7人の物でも、今まで会ってきたフレンズ達の物でもない。
かばんがその声を聞き、辺りを見回したが何かある気配もない。
この声は一体どこから聞こえて来るのだろうか?
ふとかばんが再び正面へ目を向けると、倒れている大木が少し揺らいだのが目に入り、それをじっくりと見つめた。
すると大木が削れ行くように消え去り、窓の外の空が歪んだ。
「もう、人類はここには居ないはずなのに……。」
そんな声が聞こえたかと思うと、バスの入り口が歪んで見えた。
「設備も、あの時と何ら変わりないし……。」
またもそんな声が聞こえ、バスの中のフレンズ達が一斉に、入り口に顔を向けた。
すると入り口の歪みがどんどん、かばんへ向かってきて、こんな声が鳴り響いた。
「あなた、もしかしてヒト!?」
その音の発生源はかばんの目の前からだった。
「ふぇ、ふぇええ!?」
かばんは姿の見えない声の持ち主が、居るであろう場所を見つめながら、困惑した表情で言った。
「あ……ごめんなさい。元に戻るのを、忘れていたわ。」
そんな声が聞こえると、そのフレンズの姿が、かばんの目の前にゆっくりとフェードインした。
「あ……あなたは……。」
かばんは呟くように問い掛けた。
「私? 私はエボシカメレオンよ。」
▼■■■■■▼ 有鱗目 カメレオン科 カメレオン属
■ ■ ■
■ ■ ■ エボシカメレオン
■ ■ ■
■■ ■ Veiled chameleon
「エボシ……。」
かばんは呟いた。
「エボシカメレオンハパンサーカメレオントオナジク、ユウリンモクノカメレオンカ、カメレオンアカノカメレオンゾクニゾクシテイルドウブツダヨ。」
ラッキービーストが言った。
「おお、ボス! 久し振りじゃーん!」
エボシカメレオンがラッキービーストに近づき、それを上から覗き込みながら言った。
「お二人、知り合いなんですか!?」
かばんが言った。
「まあ、知り合いっちゃあ知り合いかなあ。」
エボシカメレオンは、かばんの問いにそう答えると、ラッキービーストに目を向けて言った。
「ねえボス! 久し振りにあれ、やってもいいかしら。」
「ダメダヨ。」
ラッキービーストは答えた。
「ありがとー。」
エボシカメレオンはラッキービーストの答えにそう返すと、運転席へと飛び乗った。
「ダメダヨ。……カバン、エボシカメレオン……カノジョヲハヤクココカラホウリダシテクレナイカナ。」
ラッキービーストは言った。
「……え。なんでですか?」
かばんが言った。
「そーだよー。追い出すなんてひどいよー。ねー。ヒトさん?」
エボシカメレオンがかばんの言葉に反応して言い、さらに彼女はかばんの同意を求める為に瞼をパチパチと瞬いた。
「ヒドクナイヨ。カバン、ハヤクカノジョヲバスカラオイダシテ。」
ラッキービーストが言った。
「だ、だからなんで……。」
かばんはラッキービーストに、なぜ彼女を追い出そうとするのか聞こうとした。
だがその瞬間。
「う、うわあああああ!」
バスがハイスピードで走り出した。
辺りに悲鳴が響く。
そしてそれと共に、バス内に積み込まれていた様々な物が崩れ落ち、その床に散乱した。
「な、何!? なんなの!?」
サーバルが焦り、そう叫ぶ。
すると運転席のラッキービーストが、そんなサーバルの叫びに答えるように言った。
「カノジョハモトモト、ジャパリパークカーレースノレーサーダッタンダケド、セルリアンノシュウゲキニヨルレースシセツノゲンショウニヨッテレースガデキナクナリ、ソノタメニタメテシマッタストレスガフンカチョクゼンダッタンダ。」
ラッキービーストが言っている間にも、どんどんスピードは増して、かばんが気付いた頃には既にスピードは限界に達していた。
「やっほーーーーーーー!!!!!」
かばんはそれを表すパラメーターを見るや否や、ショックのあまり気を失いかけた。
だがなんとか我をその場に留め、エボシカメレオンに向けて言った。
「エボシカメレオンさん……。」
恐怖のあまり、中々声が出ない。
「速いでしょー!?」
エボシカメレオンはかばん達の様子を気にも止めず、得意げに、楽しげにそう答えた。
かばんはそんなエボシカメレオンの言葉に、恐怖を押しのけながら言った。
「そうですね……。速いですね……。」
エボシカメレオンの笑顔はより一層強まっていく。
かばんは続けた。
「でも……、お願いですから停めて下さい!」
かばんのその言葉を聞き、エボシカメレオンは顔を不満げに歪めながらもゆっくりとバスを停めた。
「せっかく面白かったのに……。」
エボシカメレオンは呟いた。
「ひ、控えましょうね……。」
かばんはエボシカメレオンの呟きに、そう答えた。
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「さようならー!」
エボシカメレオンがそう言いながら手を振って去っていった。
かばんはそんな彼女に手を振り返しながら言った。
「またー!」
かばんは彼女の姿が見えなくなった事を確認した。
するとバスの中へと向き直り、バスの床の上に散らばる物へ目を向けて、一息をついて言った。
「……さて。始めますか。」
エンディング
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の の
の の
の の タイリク予告 の の
の の
の の
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どうも。
タイリクオオカミだ。
投稿が遅れて、大変すまなかった……。
ツイッターやこれを作る過程を実況する小説でも発していた通り、作者は現在風邪を引いていて作業が遅れている……。
まあ、そんな事よりも。
今回は「たき」について、予習していこう。
滝は、川の段差が高い場合に出来る地形で、中にはとても高度が高い位置に位置する滝もある。
そう、ナイアガラの滝などがその主な代表だな。
さて、次回も少々、遅れをとる可能性があるが、みんなどうか楽しみに待っててくれ。
次回、「たきちほー」。
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