6月4日 月曜日 異世界


 こんばんは。蒼山皆水です。君がこれを読んでいるということは、すでに私はこの世にいないのでしょう……って書き出しを一生に一度は使ってみたいお年頃です。


 さて、今回のテーマは『異世界』です。

 異世界ファンタジー小説。皆さんもご存じかとは思います。異世界に転移、転生して無双したりハーレムを作ったり、空手を信じたりドラゴンを差し押さえたり……。そんな類の小説のことです。


 なろうといえば異世界ファンタジー。カクヨムでも猛威を振るっております。

 現実では落ちこぼれていた主人公が異世界で活躍する爽快感や、異世界に現代の知識を持ち込んで何かを一から作る楽しさが醍醐味です。(あまり異世界は読まないので間違ってたらごめんなさい)


 異世界ものばかりでつまらないだとか、この異世界の科学技術でこういうものが存在するのはおかしいだとか、否定的な意見もよく目にします。

 だったら読まなきゃいいじゃない! 異世界じゃないものだってカクヨムにはあるんだ!


 例えば蒼山皆水さんの作品なんかは異世界に行かない! 現実世界をベースに! すこし不思議な要素を上手く織り交ぜつつ! もどかしい恋愛やロジカルな謎解きを経て! 爽やかで読後感の良いラストを提供している! さあ、読むんだ!

(宣伝上手の蒼山さん)


 話を戻します。

 今回は、異世界ものの流行について考えていこうと思います。

 2010年ごろ? もうちょい後くらい? から、異世界ものは爆発的に流行りました。


 流行った原因は明らかですよね。そう、数年前に一般人でも気軽に異世界に行けるようになったからです‼

 この革命的な出来事によって、リアルな異世界の描写や、作者の体験を反映することのハードルが格段に下がったわけです。


 それまで異世界に行くには、女神と契約して勇者になるかトラックに轢かれるか、いずれにせよある程度の運とリスクが必要でした。


 それが今では、外国に行くくらい簡単に異世界に行けるようになりました。ネットで異世界行きのチケットをポチれば、あら不思議。誰でも異世界に行けちゃう!


 そのうち「ちょっとコンビニ行ってくる」くらいのノリで「ちょっと異世界行ってくる」くらいになることが予想されます。楽しみですね。ふふふふ。


 実は私もこの前、異世界に行ってきました。

 いやぁ、楽しかったです。初心者にオススメの治安の良い世界だったので、これといって危険もなかったです。めちゃくちゃ歓迎されました。


 向こうではちょっとしたニュースになりましたね。

 わかりやすく言うと、テイラー・スウィフト、来日! くらいの規模の大きさでした。超絶美少女蒼山皆水、来異世界⁉ みたいな。


 …………


 ――私がその世界に転移した瞬間、ざわつきが辺りを包んだ。

「なんだ、この美少女は⁉」「伝承の女神様じゃ! 崇めよ!」「私の妻になりませんか? 一生養うことを誓います」


 貴族たちは膝をつき頭を下げ、泣きわめく子どもは涙をピタリと止め、地に落ちた鳥の死骸は息を吹き返し、枯れた花は潤いを取り戻した。


 人ごみをかき分けて、一人の美しい女性(私ほどではない)が私の元へやってきた。腕に何かを抱えている。


「この子を……この子を治してください! お願いします。やっと授かった大切な子どもなんです!」

 女性は泣きながら、何度も頭を下げた。


「お安い御用です」

 私はそう言って、子どもに手をかざした。眩い光が辺りを照らし、人々は言葉を失う。


「これで治りました。その子の未来に、幸あらんことを」

「あっ、ありがとうございます」

 号泣する女性。

 一瞬の間をおいて、その場は歓声に包まれた――。


 …………


 とまあこんな感じで、私の留まることを知らない美しさは世界共通なわけです。

 しかし、どんな世界にも悪人はいるもので、比較的平和なその世界にも魔王がいました。


 魔王は、手下のダークエルフと二人乗り(道路交通法違反)をしたり、ハズレたアイスの棒をポイ捨て(廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反)したり、悪の限りを尽くしていたようです。


 それは、異世界に転移して二日目のことでした。私の秘めたる強さを見抜いた王様が、魔王の討伐を依頼してきたのです。


 …………


 ――私は、王宮の豪奢な一室に呼び出された。

 王様が「頼む! 魔王を倒してくれ!」と私に懇願し「任せてください」と私は答える。

 最初から、こうなることはわかっていた。それがこの世界の運命なのだから。


 私は、隣町の魔王の家に乗り込んだ。

「あら、まーちゃんのお友達? どうぞ上がって」と魔王の母親が言った。


 魔王は「おいそのまーちゃんっていうの止めろっつったろクソババア!」などとわめき散らすが、当の母親は「昔はあんなに可愛かったのに」と余裕の笑み。


 私は「魔王さん! もう悪さは止めてください!」と、可愛い声で叫んだ。

 魔王は頬を赤らめて「ふぁ、ふぁい……」と言った。どうやら私の美しさに、コロッとやられてしまったようだ。


 王様は、魔王を陥落させた私にモンブランを献上した。それはとても美味だったため、お土産にすることにした。

 こうして平和だった世界に、更なる平和が訪れた――。


 …………


 うん。よかった。めでたしめでたし。

 皆さんもぜひ行ってみてください、異世界。楽しいですよ。


 はい、それじゃあ本日はここまで。

 最高に頭の悪い文章にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

 おやすみなさいませ。



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