主人公は奇妙な嗜好を持っていた。それは雨の日には屋上で雨に打たれることだ。雨の日の屋上から見下ろす傘たちの群は、まるで花畑だ。主人公はそれを傘畑と呼んでいた。ある雨の日、傘三本分の距離に一人の女性が、主人公と同じように屋上に佇んでいた。どうやら女性も主人公と同じ嗜好を持っているようだ。
二人は傘畑の傘たちに、花の名前を付けていく。スイトピーだったりひまわりだったり。そんな主人公を女性はロマンチストと呼ぶ。そして、黒い傘は? と問うのだった。
黒い傘。果たして、主人公の答えは?
そして、主人公と女性が傘一本分の距離になった時、見える風景とは?
休日は雨の日の屋上。
そんな奇妙な嗜好が巡り合わせた二人。
雨の日の傘を、「傘畑」と言い換える作者様の感性が光る一作。
そして、黒い傘の捉え方にはっとさせられました。
是非、御一読下さい。